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金融危機の引き金に? 膨張する「CLO」のリスク

金融商品といえば何を想像しますか。株、投資信託、外貨預金、国債、ちょっと専門的にはETFやREIT。では、CLOはどうでしょう、知ってますか?今、日本の金融機関がCLOを大量に持つようになり、総額はなんと12兆円にのぼっています。ただ、このCLO、仕組みがあのリーマンショックの引き金となった金融商品と似ていることもあって、日銀も気にしています。どんな金融商品なんでしょう。

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CLOってなんの略でしょう?

CLOは「Collateralized Loan Obligation」の頭文字をとっています。ちょっと難しい英語ですが、日本語でいうと「ローン担保証券」。

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銀行は会社に融資(ローン)をしますよね。そうした企業向けのローンをたくさん集めてきて1つにまとめた金融商品なんです。主にアメリカでつくられています。

CLOを買うのは、個人というよりは金融機関や年金を運用している機関投資家といった投資のプロたちです。CLOを持っていると、会社から返済されるローンの元本や金利を受け取ることができるという仕組みです。

アメリカの金融関連団体の調査では、世界でつくられたCLOは6150億ドル、日本円にして70兆円にのぼるということです。スウェーデンやポーランドのGDPに匹敵する額ですから、結構、多いですよね。

そのアメリカでつくられた商品を、日本の金融機関が大量に買っている…。

そうなんです。日本の金融機関が持っているCLOの総額はアメリカに次いで2番目に多いんです。

日銀は最近発表した「金融システムレポート」で、このCLOを詳しく調査しています。その最新データを見ると、日本が保有するCLOの総額は12兆7000億円。世界で発行されたCLOの15%に相当する規模なんです。

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とりわけ多いのが全国の農協から集めた資金を運用している「農林中央金庫」。実に8兆円のCLOを持っています。金融業界では保有額の大きさから「CLO界のクジラ」とも呼ばれているそうです。ほかにも大手金融グループの「三菱UFJフィナンシャル・グループ」が2兆6000億円持っています。

どうして日銀が注意を呼びかけるの?CLOを持つのは良くないこと?

あの金融危機のことが頭をよぎっているからだと思います。11年前、世界の経済が危機的な状況に陥るきっかけとなったリーマンショックです。リーマンショックの引き金となった金融商品とCLOの仕組みが似ているんです。

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リーマンショックの前、「サブプライムローン」という所得が低い人たち向けの住宅ローンをたくさん集めて1つにまとめた金融商品がアメリカで多くつくられました。当時、アメリカは住宅バブルだったので、この金融商品は量産されて世界中の銀行や証券会社、投資家に販売されたのです。

しかし、その後、住宅バブルは崩壊。住宅ローンを返せない人が続出し、この金融商品を持っていた銀行や投資家は大きな損失を出してしまい、リーマンショックにつながりました。

CLOは、住宅ローンではなくて、企業向けローンを集めてつくっています。やや信用力に欠ける企業がたくさん含まれているので、ローンの金利が高く、買い手にとっては魅力があるんです。

でも、もし、アメリカの景気がこのあと悪くなって企業がローンを返せなくなってしまえば、CLOをたくさん持っている日本の金融機関は大きな損失を受けるかもしれないのです。

日銀はレポートの中で、「リーマンショックのような経済危機に見舞われた場合、最大で3割ほど価格が下落するリスクがある」と指摘しています。

え…、そんな値下がりのリスクがあるなら、もっと手堅い別の商品を買えばいいのに。

そうも言ってられない事情が金融機関にあるのです。なにしろいまは金利がとても低い状態ですから。

日本では景気をもっとよくしようと金融緩和が長く行われています。個人や企業がお金を借りやすいように金利も低くなっています。でも、金利が低い分、国債とか社債といった金融商品の利回り、つまりもうけも少なくなっているんです。

一方、CLOはほかの金融商品と比べてリスクがある分、より多くの利回りを得られるというのが特徴です。低金利で収益を上げにくくなっている日本の金融機関にとっては魅力的な商品というわけです。

金融機関もリスクを意識しているので、何でもかんでも買っているわけではありません。農林中金や三菱UFJが持っているCLOは、すべて最高ランクの格付け「AAA」がついています。

日銀も先のレポートの中で日本の金融機関が持っている『CLOの頑健性は高い(比較的安全)』と分析しています。ただちに危ないというわけではありません。

それでも日銀が、いま、注意喚起したのはどうしてなんでしょう?

アメリカの景気の先行きが、少し不透明になっていることがあると思います。日本の金融機関が過去に海外の投資や融資で大きな損を出し、日本経済の足を引っ張ったこともあります。

異変は起きていないか、よく目をこらせというメッセージなんでしょう。