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水産物禁輸 なぜ日本の主張通らず

原発事故による汚染水問題を理由に、韓国政府が福島県など8県の水産物の輸入を禁止していることについて、WTO=世界貿易機関の上級委員会は、規制は不当だとする日本の主張を退け、輸入禁止措置が継続される見通しになりました。

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1審にあたる小委員会では、日本の主張が認められていたと思うのですが、これが2審で退けられたというのは、どういうことなんですか。

東京電力・福島第一原子力発電所の事故を受けて、韓国政府は、水産物への汚染が懸念されるとして、2013年から福島県など8県の水産物の輸入を禁止している。これに対し日本政府は、規制は不当だとしてWTOに提訴した。

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1審の小委員会は「日本が食品に対して設けている年間1ミリシーベルトという放射線量の基準は、同時に韓国の基準も満たしていることから、輸入を禁止する必要はない」という日本の主張を認め、韓国の規制が「差別的」だと判断したの。

ところが、この1審の判断について上級委員会は、「自国に流通する食品の放射線量をできるだけ低い水準に抑えたい」という韓国の主張を考慮していないと認定。1審の判断を取り消したというわけ。

WTOの紛争処理は2審制なので、これが最終的な判断になり、事実上、敗訴した形になったということなの。

1審の判断に誤りがあるとはどういうことですか?

ひと言で言うと、1審にあたる小委員会での議論不足が問題だというの。

WTOの上級委員会がまとめた報告書では、日本と韓国では自然環境から受ける放射線の量が異なるということを小委員会が十分、議論していなかったと指摘している。

また、小委員会では、食品に含まれる放射性物質のデータのみに基づいて判断しているが、それ以外のリスクについて議論されていないから、不十分だと。

さらに、韓国がより厳しい安全基準に基づけば、輸入禁止措置が妥当だと主張していたのに1審ではこの主張を十分議論していなかったと指摘しているの。

今回、日本の主張が退けられたことに被災地などでは落胆の声が広がっていますね。

そうね。韓国や中国、アメリカ、EU=ヨーロッパ連合など、23の国と地域では、一部で緩和する動きもあるものの、今も規制措置を継続している。

中でも韓国は、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県のすべての水産物の輸入を禁止しているの。日本から韓国への水産物の輸出額は大幅に減っているんだけど、特に大きな影響を受けている水産物がホヤ。宮城県は、震災の前、水揚げしたホヤのうち、7割から8割を韓国に出荷していたわけだから、影響が大きいの。

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水産物の輸入禁止をめぐる議論は今後どうなっていくのでしょうか。

日本政府は、上級委員会の判断について、「日本の主張は退けられたものの科学的根拠に基づいて日本の水産物は安全だと認められた」として、今後は韓国との2国間の協議で規制の撤廃を求めていく方針。

さらに韓国以外のほかの国や地域に対しても、引き続き規制の撤廃を求めていくとしている。

ただ、政府内では、上級委員会で日本に有利な判断が示されることを前提に、各国に対して積極的に規制の撤廃を求めていこうという思惑があっただけに、今後の影響が心配されるわね。