NEW2023年12月18日

手紙とはがき なぜ値上げ? “巨額赤字”の将来試算

手紙やはがきの郵便料金を来年秋にも値上げする方針案を総務省が示し、手紙はいまの84円から110円に、はがきは63円を85円にそれぞれ値上げするそうです。手紙の値上げは消費税率の引き上げを除けば30年ぶり。どうしていま値上げが検討されるの?総務省や郵便事業を担当する谷川浩太朗記者、教えて!

年賀状を出す人も少なくなって、郵便物が減っていると聞いたことがあるけど、それでも値上げをするのはなぜなの?

モノの値段は人気がなくなると一般的には値下げされますが、郵便料金は逆なんです。

全国津々浦々に郵便物を届けるには大きなコストがかかって、事業として維持するためには値上げが必要だと総務省や日本郵便は考えています。

郵便物の量は2001年度をピーク(262億通)に減少傾向が続き、2022年度はそのピークから45%減少しています(144億通)。

郵便事業はたとえ郵便物の数が少なくなっても、きちんと全国に届くように配達などの維持にはコストが掛かります。

いわば人気が無くなるほど1通あたりのコストは高まるので、郵便物が減っていくにつれて営業収支は悪化していくのです。

昨年度はついに、2007年の民営化以降で初めて営業赤字に陥りました。

谷川記者
谷川記者

今回、値上げをすれば、営業黒字に戻すことができるの?

それがそうでもなさそうなんです。

値上げの方針案にあわせて総務省が郵便事業の将来の試算を公表しました。

まず、値上げをしなかった場合、2027年度には3050億円の営業赤字に、2028年度には3439億円にまで赤字が拡大するとしています。

ただ、値上げをしても、将来の赤字は続くという試算もあったんです。

値上げを行った場合、いったんは収支は改善して2025年度に67億円の黒字になりますが、その後再び赤字に転じ、2028年度には1232億円まで赤字が拡大するとしています。

谷川記者
谷川記者

それではさらに値上げが繰り返されることになりそうなの?

それはまだわかりません。

総務省は今回の値上げについて、国民生活にとっての重要性や負担などを踏まえて、最小限の値上げ幅にとどめていると説明しています。

ただ、その一方で、郵便事業はその営業費用の3分の2を仕分け作業や集配にかかる人件費が占めるなど、なかなかコスト削減が難しい構造的な課題を抱えているのは事実です。

日本郵便はこれまで土曜日の配達の廃止などを行ってきました。いわば“サービスの質を落とす”ような形といわざるを得ません。

また、今回の値上げ方針とは別に、全国におよそ17万ある郵便ポストについて削減を行うかどうかをめぐって、総務省の有識者会議での議論も続けられています。

ユニバーサルサービスとしての郵便事業をどのような形で維持していくのか、さらに踏み込んだ業務の効率化を行うのか、議論が活発になりそうです。

谷川記者
谷川記者