日銀 植田総裁 物価の先行きなど何を語った?

日銀の植田総裁は、NHKなど報道各社のインタビューに応じました。物価の先行きや金融政策の方向性などについて何を語ったのか、詳しくお伝えします。

賃金や物価の見通しを踏まえ、金融政策は今後どの方向に向かうのか。年内に政策変更などの判断ができる可能性はあるのか。
当面の物価の見通しということで申し上げれば、ここからかなり高い確率でインフレ率は低下していく。その後、反転してまた上がっていくという見通しを立てている。
その後半の部分についての自信が、前半部分についてほどはないということがまず1つの大きなポイントかと思う。
後半はそこそこ高い見通しにはなっているが、インフレ率で言えば、まだもう少し丁寧に見たいという判断だ。そのうえで、後半部分の見通しの確度が高まるのがいつになるかは、今後のデータ次第であり、基調的な物価の上昇率を規定するGDPギャップとか賃金の動向、それにインフレ期待などを丁寧に見て判断していくということだ。


日銀は先月、金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスの中で、物価目標の実現に向けて、「賃金の上昇を伴う形で」という表現を付け加えた。日銀として、賃上げの持続性や広がりをどういう形で判断し、どう判断できれば、政策変更につながるのか。
賃金の動きの判断は、いろんな賃金統計を丁寧に見たり、あるいはその元になる労働需給に関するデータを見てみたり、支店等からのものも含めて、さまざまなヒアリング情報を活用したりして判断するということになるかと思う。
そのうえで、金融政策は、賃金そのものを目標にしているわけではない。持続的、安定的な2%の物価上昇という状態では、当然賃金も上がっているはずだということを今回、フォワードガイダンスに明示的に書いたということなので、あくまでも政策判断のポイントは、物価が持続的、安定的に上がっているかどうかというところの判断になる。


物価が持続的、安定的に上昇していると判断できれば、物価上昇が2%を下回る場合でも出口へ向かう可能性はあるのか。
2%をちょっと下回るくらいのところでも満足できるのかという質問だと思うが、そこの非常に細かいコンマいくつの差がものすごい重要というよりは、持続的、安定的かどうかということの判断のほうが重要になるというふうに考えている。


急激な利上げによるアメリカ経済の減速のタイミングや深さをどう見ているか。それが、日銀の政策判断にどの程度影響するか。
後段から申し上げれば非常に重要な影響を及ぼすというふうに思っている。
アメリカ経済がどうなるかによって、世界経済も大きな影響を受けるし、それは日本の輸出に影響し、マーケットを通じての影響、コンフィデンス、センチメントを通じての影響も大きい。そのうえでアメリカ経済は、ひところに比べると成長率などは低下しているが、それでもかなり堅調に推移しているというのが実感だ。
ここからどう推移するかは、大きく分けて3つのパターンがあり得て、1つは、これまでの引き締めの効果がだんだんと出てきて、景気がもう少し減速し、インフレ率が期待するような経路で下がっていく。
これはある種のソフトランディングで、その場合どこかから経済ももう少し持ち直して、高い成長につながっていくというケースだと思う。
これに対して2つのリスクシナリオがおそらくあって、1つは引き締めの効果が少し遅れ、それに伴って経済が大きく減速ないし不況に陥るケース。
もう1つはかなり堅調な状態が続き、インフレ率が思ったほどは低下せず、高い金利の時期が長引いたり、少し先に行ってまたもう一段階の利上げがあり、その後またいろんなことが起こるというようなケースも考えられるかと思う。


中央銀行が発行するデジタル通貨、CBDCについてどう考えているか。アメリカで相次いだ銀行破綻の背景として指摘されているインターネットの金融サービスを通じた預金の取り付け、いわゆる「デジタル・バンク・ラン」はCBDCの議論に影響を与えるか。

CBDCについては、日本銀行としてはフィージビリティのチェックを継続して行っている段階ということだと思う。
それをさまざまな実験で確かめつつ、実験の環境をだんだん複雑あるいは現実に近いものにして、技術的な可能性がどこまであるか、チェックしつつ、進んでいるという段階かと思う。
そのうえで、今後何らかの形で導入するかどうかということについては、日本銀行だけでは当然決められなくて、国民的な議論の中で決まってくるものだと考えている。
最近の金融ストレスの問題の影響については、さまざまな場所で、この問題を議論すると、皆さん気にしている。CBDCを導入することによる技術的なプラスとともに現在の金融システムの安定性を脅かさない形で導入するという両方に気配りすることが必要だ。


日銀の金融緩和が当面継続するという見方もあって東京株式市場では日経平均株価が3万円台まで上昇している。その背景には円安もあると言われているが、今の為替水準についてどう受け止めているか。

為替レートの水準、あるいは影響に関する評価について具体的にコメントすることは差し控える。現状は円安だが、理屈上は、いろいろな主体を見ると、それぞれ違った影響を及ぼして、プラスの影響を受ける主体であったり、マイナスの影響が受ける主体であったりしてさまざまだ。
そういう中で、為替については、ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい。


日銀総裁就任後、生活の変化はあるか。
学者のときであれば、例えば、神田にキャンパスがあったので、調べ物をしたいときに、本屋街に行って本を調べるなど、そういうことは自由にできたわけだが、それはなかなかできなくなったというような違いがある。

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