NEW2023年05月16日

【詳しく】株価 バブル期以来の高値 理由は?この先どうなる?

東京株式市場では株価の上昇が続いています。日経平均株価は17日に3万円台を回復。19日にはいわゆる「バブル景気」の時期の1990年8月以来、32年9か月ぶりの高値をつけました。株価はなぜ上昇しているのか。この勢いは続くのか。証券業界担当の斉藤光峻記者、教えて!

※19日の最新の状況を踏まえて記事を更新しました。

そもそもなぜ株価が上がっているのでしょうか。

市場関係者の間ではさまざまな要因が指摘されています。

【①金融不安の後退】

まず、欧米の金融不安がいくぶん後退したことです。

「銀行」や「保険」など金融関連の銘柄で株価が上昇しました。

【②好調な企業決算】

経済活動の正常化や円安の効果で業績を伸ばす企業が相次いだことも株価上昇の要因となりました。

商社を含めた「卸売」や「空運」「陸運」など昨年度の決算が好調だった銘柄に買い注文が目立ちました。

斉藤記者
斉藤記者

昨年度の決算は全体として堅調だったようですね。

そうですね。

過去最高の最終利益を発表する企業も相次ぎました。

SMBC日興証券が旧東証1部上場企業を中心に5月18日までに発表をすませた全体の99.2%にあたる1423社の昨年度の決算を分析したところ、最終的な利益は54%にあたる769社が増益となりました。

斉藤記者
斉藤記者

株高の要因、このほかにもあるのでしょうか。

【③東証の改善要請】

東京証券取引所が市場での評価が低い企業に改善を促したことで企業の改革への期待が高まっていることも株価上昇の要因として指摘されています。

東京株式市場では、1株あたりの純資産に対して株価が何倍かを表すPBR=株価純資産倍率と呼ばれる指標が1倍を下回る企業が多く、市場での評価が低いことが課題となっています。

東証は、ことし1月、こうした市場での評価が低い企業に改善を求める方針を明らかにし、3月下旬にはこの方針に沿って対応するよう上場企業に通知したんです。

斉藤記者
斉藤記者

それで企業の側に改善の動きが出てきたということですか。

そのとおりです。

PBR1倍超えを目標に掲げて株主還元の一環として自社株買いなどを実施する企業が相次いだんです。

斉藤記者
斉藤記者

「自社株買い」というのはみずから会社の株式を買うということですね。

【④自社株買い】

そうですね。

このように企業が「自社株買い」などを活発に行っていることも株価の押し上げにつながっています。

東海東京調査センターによりますと、5月に入って17日までに合わせて3兆900億円の自社株買いが発表されたということです。

5月中に発表された自社株買いの総額は去年の3兆1000億円が最も多くなっていますが、すでにこの水準に迫っています。

【⑤金融緩和継続姿勢】

株高の要因、さらに続きます。

4月9日に就任した日銀の植田総裁、金融緩和を継続する姿勢を示しています。

斉藤記者
斉藤記者

これまでの路線を引き継ぐと言っていましたね。

これが投資家の安心感につながり、株式が買われる背景にあるという指摘もあるんです。

【⑥バフェット効果】

そして最後にもう1つ、“バフェット効果”と呼ばれているものです。

斉藤記者
斉藤記者

“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏ですね。

はい。

そのバフェット氏が4月に来日し、日本の総合商社の株式をはじめ日本株に積極的に投資する姿勢を示したことも日本株への投資を呼び込む要因となったと指摘されています。

斉藤記者
斉藤記者

これまでに挙がったものを合わせると6つの要因になりますね。

市場を引っ張っている銘柄はどんな業種になるのでしょうか。

4月以降、5月18日までの株価指数の値動きを業種ごとにみると、全体の90%にあたる30の業種で指数が上昇しています。

このうち鉄道などの「陸運」が13%、「保険」が12%、商社などの「卸売」が11%、デパートなどの「小売」と「銀行」がそれぞれ10%などとなっています。

斉藤記者
斉藤記者

では、株式を買っているのはどのような投資家なのでしょうか。

目立っているのは海外の投資家です。

東京株式市場では、3月下旬以降、5月の第2週まで海外の投資家が株式を買った金額が売った金額を7週連続で上回っています。

海外の投資家からの活発な買い注文が株価の上昇を支えているわけです。

斉藤記者
斉藤記者

この先も株価の上昇は続きそうですか?

株高の理由を複数あげましたが先行きにはリスクも潜んでいます。

野村証券の澤田麻希ストラテジストは、「今回は日本国内の要因で株価が上昇しているが、アメリカの株式市場で株価が下落する中でも日本株の上昇が続いており、期待が先行する中での投資の勢いがどこまで持続的なのかがポイントだ。

今後は、アメリカの銀行経営の問題や債務上限の引き上げをめぐる協議など海外経済のリスク要因を見極めるべきだ」と指摘しています。

そして株価の上昇がそもそも日本企業、そして日本企業の実力を反映したものなのかこの点も見ておく必要があると思います。

斉藤記者
斉藤記者