止まらない電力大手の不祥事 なぜ?

電力業界で不祥事が相次いでいます。新電力の顧客情報の不正閲覧、再生可能エネルギーシステムの不正閲覧、事業者向けの電力販売をめぐるカルテル。いずれも公平な競争による電気料金の引き下げを目指して始まった電力自由化の根幹を揺るがしかねない問題です。背景には何があるのか?エネルギー担当の佐々木悠介記者教えて!

そもそも顧客情報の不正閲覧って何が問題になっているの?
電力自由化に伴って、電力大手は小売り部門と送配電部門を分社化しています。
このため送配電部門が持つ顧客情報を小売り部門と共有することは法律で禁止されています。
にもかかわらず、小売り部門の社員が「新電力」と呼ばれる事業者の顧客情報(氏名、住所、契約電力量など)を不正に閲覧していたことがわかったのです。
経済産業省は調査を進めていますが、これまでに各社が発表している不正閲覧の件数は、あわせて75万件にものぼります。



かなり多いですね。
小売り部門の社員はなぜ不正閲覧を行ったの?
これまでの調べに対して、多くの会社は引っ越しをしてきた顧客や、工事会社からの問い合わせ対応など、いわゆる事務手続きの効率化が理由だと説明しています。
ただ関西電力では、閲覧した新電力の情報を営業活動に用いていた事例も確認されています。
新電力から顧客を奪うために不正閲覧を行ったとみられます。


どうして別会社である送配電部門の情報を不正閲覧できたの?
それは大手電力の中でシステム管理が適切に行われていなかったからと言えます。
送配電部門のシステムを閲覧するためのIDやパスワードを、小売り部門の社員が知っていたり、送配電部門の端末が置いてある部屋に小売り部門の社員が自由に入れるようになっていたりした事例もあります。
分社化したわけですから、顧客管理のシステムを分離するなどの対応が電力大手には求められています。


不正の背景には何があったの?
経済産業省では原因を調査していますが、根幹には電力大手の法令意識の低さがあると言えます。
電力小売りの自由化は、電力大手の独占的な地位を崩し、料金の引き下げやサービスの充実につなげようと始まりました。
そのために小売り部門と送配電部門の情報共有を禁じたり、部門ごとに分社化したりすることが義務づけられましたが、こうした変化に社員の法令意識が追いついていなかったのは明らかです。


各社への処分はどうなるの?

経済産業省は各社への処分を検討していますが、電力業界をめぐる不祥事はこれだけではありません。
3月14日に関西電力の送配電部門の子会社が、一部の営業所で法律で定められた電圧の測定を行っていなかったと発表しました。
送配電会社には、家庭などに電気が正常に送られているか定期的に確認して記録することが義務づけられています。
しかしこれが行われておらず、虚偽のデータが報告されていた可能性もあるということです。
電気の質を担保するための根幹となる取り組みが行われていなかったことになります。
経済産業省では重大な問題だとして、ほかの送配電会社でも同様の事案がないか調べています。
さらに去年12月には、公正取引委員会が事業者向けの電力販売でカルテルを結んだとして、中部電力、中国電力、九州電力などに独占禁止法違反で総額1000億円あまりの課徴金の納付を命じる方針を通知しました。

このように不祥事が相次いでいるため、各社には厳しい処分が下される可能性があります。


不祥事の影響はどこまで広がるの?
電力各社は、家庭向けで契約者が多い「規制料金」の値上げを申請していますが、消費者からは厳しい目が注がれています。
値上げの申請は本来燃料費の高騰を受けた正当な手続きですが、不祥事によって消費者からの信頼を損なう状況が続けば、想定どおりに審査が進まなくなる可能性もあります。
電力小売りの自由化以降、新電力と契約する家庭や事業者は徐々に増えていますが、それでもまだ国内の販売電力量のおよそ8割は電力大手が占めています。
それだけに各社には、実効性の高い再発防止策を早急に講じることが求められています。

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