自賠責保険 2年ぶりに引き下げる方針 その背景は?

自動車やバイクを持つ人に加入が義務づけられている「自賠責保険」。原材料価格の高騰や円安を背景に、企業の間で製品やサービスの値上げが続く中、加入者が払う自賠責の「保険料」は、ことし4月から引き下げる方針が決まりました。値上げラッシュの中に、いったいなぜ?その背景には何があるのでしょうか。

そもそも自賠責保険って、自動車などを持つ人が必ず入らなければいけない保険のことですよね?
はい、そのとおりです。
自賠責保険とは「自動車損害賠償責任保険」のこと。
交通事故の被害者や遺族を救済するため、法律に基づいて車やバイクを持っている人に加入が義務づけられていて、みなさんも車などを購入した際には必ず加入しているはずです。

実はこの自賠責保険、その時々の社会情勢や環境変化を踏まえて、加入者が支払う保険料をいくらにするのが妥当か、毎年議論されているんです。
損害保険各社が加盟する「損保料率算出機構」での議論を経たあと、金融庁の審議会が開かれ、ことし4月以降の保険料が決まる、という流れになっているんですね。
そして、ことしの会合が13日から始まりました。
審議会では保険料を2年ぶりに引き下げる方針で、下げ幅はすべての車種の平均で、10%程度となる見通しです。


近頃、食品や電気・ガスなどの値上がりがニュースになっていますが、保険料は下がるんですね。
この流れに乗って、てっきり値上がりするものだと思っていました。
そうですよね。
今回の値下がりの背景には、自賠責保険ならではの理由があります。
端的に言うと、去年の交通事故数が減少し、保険各社が支払う保険金も減ったから、なんです。

そもそも自賠責保険は強制加入が義務づけられた公共性の高い保険となっています。
このため、誰もが無理なく加入できるよう、「ノーロス・ノープロフィットの原則」と言って、自賠責保険は契約者から集めた保険料と、保険会社が支払った保険金の収支に大きな差額が生じないよう、運用されています。
過度な利潤や損失が生まれない金額にすることが重要なのです。
つまり、交通事故が減って、支払う保険金が減っているなら、それに伴って、加入者が支払う保険料も下げなければならないのです。


交通事故は減っているんですか?
はい。
交通事故の件数については2004年のおよそ95万件をピークに減少が続き、去年はその3割程度にまで減っています。
それに伴い、最近、各保険会社が契約者に支払う保険金も減っています。
▽2016年度は7634億円
▽2017年度は7256億円
▽2018年度は6552億円
▽2019年度は5926億円
▽2020年度は5841億円
▽2021年度は5867億円
衝突事故を防止する自動ブレーキなど車の安全技術が向上したことや、新型コロナの感染拡大によって人々の行動が抑制されたことなどで、死亡事故や重い障害が残る事故が減っているんです。
死亡事故で保険金が支払われた件数も減少しています。
▽2016年度は3529件
▽2017年度は3389件
▽2018年度は3160件
▽2019年度は2889件
▽2020年度は2664件
▽2021年度は2683件


具体的に保険料はどれくらいの金額になりそうですか。
まだ、議論の途中ではありますが、損保業界の関係者によりますと、仮に10%程度引き下げられた場合、一般的な自賠責保険料(乗用車・2年)では、2000円程度安くなるということです。
金融庁の審議会は、今月中に最終的な下げ幅を決める方針です。
私たちにとって身近な保険であるだけに、注目されますね。


ほかの保険料はどうなっているの?
自賠責とは違って、値上げの動きもあります。
例えば、火災保険は相次ぐ大規模な自然災害で、保険金の支払額増加を背景に値上がりしていますし、車の修理や故障などを補償する「任意保険」の保険料は、車の安全性や性能の向上によって、修理時に必要な費用や部品代が高額になっていることから、今後、値上がりする可能性があります。
このあたりも生活に直結しているだけに、動向から目が離せません。

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