CEO辞任でどうなる?ツイッターの疑問に答えます!(12月21日更新)

起業家のイーロン・マスク氏に買収されたツイッター。会社は非上場化され、全権を握るマスクCEOのもとで、連日、改革を進めてきましたが、ここにきてマスク氏が「後任が見つかりしだい、CEOを辞める」と表明し、ツイッターの経営はどうなるのか、大きな関心を集めています。ツイッターに関するさまざまな疑問に、ロサンゼルス支局の山田奈々記者が答えます。

マスク氏、20日には「後任が見つかりしだい、CEOを辞める」と明らかにしました。その経緯を教えてください。
ことの発端は、自分に批判的な記事を書いていたアメリカの有力紙の記者のアカウントを一時停止したり、フェイスブックやインスタグラムといったSNSの競合他社に誘導するリンクを含んだツイートを禁止したりしたことでした。マスク氏の対応に利用者などの間で批判が高まったのです。
マスク氏はツイッター上で謝罪に追い込まれるとともに「今後は大きな指針の変更では投票を実施する」としていたんです。


それで自分がCEOをやめるべきかどうか投票を呼びかけたのですね。
投票は、アメリカ時間の18日から19日にかけて実施されました。
「私はツイッターのトップを辞任すべきでしょうか」というアンケート投票に「はい」「いいえ」のボタンで答えてください、というもの。
投票の結果、辞任すべきが57.5%と賛成多数となったんです。



辞めると言い出したのはなぜなのでしょうか?
専門家の見方には大きく2つあります。
企業の買収や合併に詳しい、ボストン・カレッジ法科大学院のブライアン・クイン教授は、マスク氏が経営する電気自動車メーカー、テスラとの関係性を指摘しました。
マスク氏によるツイッターの買収が明らかになって以降、現在までテスラの株価は大きく下落しています。

「ツイッターに集中するあまり『イーロン・マスクはテスラを見捨てた』と言う株主まで出てきた。テスラはマスク氏にとっての主な収入源であり、その株主の声を無視出来なくなった」


別の専門家はどういった見方をしているのですか?
もう1つは、マスク氏による経営で高まる批判を回避するため、という見方です。
ソーシャルメディアなどのマーケティングに詳しいペンシルベニア大学のプナール・イルディリム准教授は次のように指摘します。

「アメリカの有力メディアの記者のアカウントを一時的に停止するなど間違いを犯したことで、マスク氏はツイッターだけでなく自身の世間的なイメージも傷つけてしまった。そのため、CEOを辞任するための正当な理由を求めていた。新しいCEOがマスク氏のように物議を醸す人でなければ会社の印象を回復できる」


CEOが変わると、ツイッターの経営は変わるのでしょうか?
クイン教授は、CEOが変わってもこれまでとほとんど何も変わらないという見方を示しています。マスク氏はCEOでなくなったとしても引き続き、ツイッターのオーナーであることに変わりはなく、多大な発言力を持つとみられるからです。
クイン教授は、「新しいCEOもマスク氏が望む通りに会社を経営することになるので、CEOが誰になるのかは関係ない。もし新CEOがマスク氏の気に入らないことをすればすぐにクビになるだろう」などと話していました。


ツイッターの買収後、どれぐらいの人が解雇されたのですか?
マスク氏は買収からおよそ1週間後の11月4日には世界の社員の半数の解雇に踏み切ったことを認めました。

2021年末の時点で社員数は7500人で、今回4000人規模の解雇になるのではないかとみられていました。
アメリカのメディア、ブルームバーグは11月21日までに解雇や退職によって削減された社員は、全体の6割以上に当たる5000人規模にのぼると伝え、残っている社員は2750人だとしています。


残った社員に長時間労働を迫ったという記事も見ました。

マスクCEOがツイッターの社員宛てに送った電子メールがアメリカのメディアに報じられました。
このメール、タイトルは「分岐点」となっています。


すごいタイトルですね。
ですよね。
メールのなかでマスクCEOは、「今後、画期的なツイッターをつくり、競争が激しくなる世の中で成功するためには、極めて激しく仕事をする必要がある」などと述べ、「これは長時間、猛烈に働くことを意味する」と書かれていたんです。

そしてそのまま社員として仕事を続けたい場合はアメリカ東部時間の11月17日午後5時までにリンクの「はい」をクリックするよう求めたんですね。「いいえ」のボタンはなく、「はい」を押さなかった人は退職を希望するとみなされ、3か月分の給与が退職手当として支給されるという内容でした。


日本ではちょっと考えられないですね。
マスク氏はアメリカ人の多くが休みをとる祝日・感謝祭である11月24日にも「Have a great Thanksgiving!」と投稿したのに続き、これまで利用を停止していたアカウントの大規模な復活を開始すると明らかにしました。
私たち記者もマスク氏のツイートに常に目を配らなければなりません。


ところでなぜ大規模な解雇をしているのでしょうか。
ひと言で言うと、コスト削減のためです。ツイッターは、2021年通期の決算は売り上げは増えたものの、2年連続で最終赤字になりました。

ことし4月から6月までの3か月間の決算でも、インターネット広告の収入が伸び悩むなどして最終赤字となり、業績の不振が続いているんです。


なぜ広告収入が伸び悩んでいるのでしょうか。
ネット広告は景気減速の影響を受けやすいのです。
今、アメリカでは、FRB=連邦準備制度理事会が利上げを行ってますよね。この先、景気の減速懸念が強まっていて、さきざきの景気が悪いとなると企業は真っ先に広告費を絞り込もうとするんですね。
さらに、マスク氏のツイッター買収後、GM=ゼネラル・モーターズやファイザーといった広告主が、買収による影響を見極めたいとして、ネット広告の配信を見合わせるという動きが相次ぎました。
言論の自由をかかげたマスク氏のもと、ひぼう中傷や差別的な投稿が増えると、企業としては広告を出しにくくなりますよね。


これだけ人が辞めると、業務はうまく回るのでしょうか?
そこは最も知りたいところですが、社内のようすはなかなか伝わってきません。
ただ、懸念はあります。退職を選んだ人の中には、ソフトウエアの不具合を修正するエンジニアが多く含まれていたとされているためです。
ツイッターではこれまでも投稿にひぼう中傷や、暴力を扇動する内容などが含まれていないか、チェックを行ってきました。AI=人工知能も使っていますが、社員も関わることで投稿内容の安全性を確保してきました。
多くの人材が会社を去ることで管理がうまくいくのか懸念する声があがっています。


投稿管理評議会って何ですか?
英語でcontent moderation councilといいます。
contentは英語で「内容」、moderationは、直訳すると「節度」ですが、インターネット分野で使われるときは「ネット上の記事や投稿をチェックする」という意味合いが含まれ、投稿管理評議会と訳されています。
マスク氏は買収直後にこの投稿管理評議会を設立すると表明しました。

「多様な価値観を取り入れる」ともコメントしていましたが、これまでのところ、設置したという事実は明らかにされていません。
また、マスク氏は、この評議会が招集されるまでは、アカウントの復活などは行わない方針も示していたんですが、実際には、これまで利用が永久停止されていたトランプ前大統領のアカウントや、差別的な投稿で利用が停止されていた保守系ネットメディアなどのアカウントも復活させています。


新たな認証サービスを再開したと聞きました。
認証サービスは12月12日から順次始まっています。
これまで著名人などに限定した形で付与していた認証マークを3つの色に分けます。一般人も含め個人は青色、政府機関はグレー、そして企業には金色のマークが与えられるとしています。偽のアカウント対策のため、人による確認を行い、信頼性を高める考えです。

料金は、ウェブサイトからの申し込みであれば月額8ドルですが、iPhoneのアプリを経由した場合は、月額11ドルになるとしています。
広告収入に依存せずにこうした有料サービスの再開で収益の改善を図るねらいがあるとみられます。

時系列まとめ(12月21日時点)※日時はすべてアメリカ太平洋時間
▽12月20日
・マスク氏 後任が見つかり次第CEOを辞任と表明
▽12月19日
・マスク氏CEO辞任すべきか投票 辞任すべきが57.5%に
▽12月18日
・マスク氏CEO辞任すべきか利用者に問う投票を開始
・フェイスブックやインスタグラムなど競合他社へ誘導するリンクを含んだツイートを禁止と発表
▽12月16日
・停止した記者のアカウントを復活
▽12月15日
・マスク氏の取材を担当する複数記者のアカウント停止措置
▽12月11日
・投稿文字数の制限を280字から4000字に増やす方針明らかに
▽12月10日
・アカウントが本人のものと証明する有料の認証サービスを再開 価格はウェブサイトからの申し込みは月額8ドル、iPhoneのアプリ経由の申し込みは月額11ドルに
▽12月8日
・何年もツイートせず、ログインもしていない15億にのぼる休眠中のアカウントを削除すると発表
▽11月24日
・利用停止していたアカウント 恩赦と称して大規模復活させると表明
▽11月21日
・マスク氏「ツイッターは日本中心だ」と社内会議で言及と報道
▽11月21日
・社員全体の6割以上にあたる5000人規模の人員削減 ブルームバーグ報じる
▽11月19日
・ネット投票賛成多数でトランプ前大統領のアカウント復活
▽11月18日
・トランプ前大統領のアカウント復活させるか投票開始
・保守系ネットメディアやコメディアンなど停止アカウントの復活
▽11月16日
・マスク氏 社員に「分岐点」というタイトルのメール 長時間、猛烈に働くことを求める リンクで「はい」を押さない社員は自動的に退職へ
▽11月12日
・契約社員の8割にあたる4400人が解雇されたと報道
▽11月11日
・認証サービス、中間選挙後に導入もなりすまし急増で数日で中断と判明
▽11月10日
・マスク氏 在宅勤務を認めないと従業員に通知
▽11月5日
・アカウントが本人のものと証明する認証サービスを一般人にも導入と表明
・ツイッターブルーの月額を7ドル99セントに値上げ
▽11月4日
・マスク氏 ツイッターの社員半数について解雇を認める
▽11月1日
・40以上の市民団体 大口の広告主に書簡 マスク氏が不適切投稿容認の場合は広告中止を求める
▽10月31日
・アメリカ証券取引委員会の資料でマスク氏がCEO就任と判明 9人の取締役全員を解任
▽10月27日
・マスク氏 ツイッター買収完了 買収総額440億ドルで
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