交換業大手「FTX」経営破綻 刑事事件に発展 現状は?今後は?(12月14日更新)

暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」の経営破綻から1か月余りがたちました。12月12日には創業者の前CEOが逮捕され、刑事事件にまで発展しました。現状はどうなっているのか?今後はどうなるのか?詳しく解説します。(アメリカ総局・江崎大輔記者)

FTXトレーディングの前CEO、サム・バンクマンフリード氏が滞在先のバハマで逮捕されたと報じられました。事態が急展開したようですね?。
ニューヨークの連邦地検はバンクマンフリード氏を詐欺や資金洗浄=マネーロンダリングなど8つの罪で起訴し、アメリカから身柄の引き渡しの要請を受けたバハマ当局が12月12日、逮捕しました。

連邦地検が13日に発表した起訴状の内容によると、バンクマンフリード氏は約3年前からFTXの顧客を欺くための計画を考案し、顧客の資金を自身が保有する投資会社の経費や債務の支払い、それに、不動産購入や多額の政治献金のために流用したなどとしています。
3年前というと、FTXを設立した時期にあたりますから、創業したときから顧客をだまそうとしていた可能性がありますが、バンクマンフリード氏は逮捕される前の11月30日に開かれたメディア主催のイベントで「誰に対しても詐欺を働こうとしたことはない。(刑事責任は)ないと思う」などと答えていました。
今後、破綻に至る原因などが司法当局によってどこまで明らかにされるかが焦点となります。


FTXはそもそもどんな会社なんですか?
FTXはバハマに拠点を置き、暗号資産の売買や取引を行う大手交換業者でした。

2019年の設立から急成長し、日本を含め世界各国で事業を展開。創業者のサム・バンクマンフリード氏がCEOを務め、若き経営者としても注目されていました。
大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手などスポーツ界のスター選手を事業の広告塔にしていたことでも知られていて、私もアメリカでFTXの広告を目にしていました。


なぜ経営破綻したのですか?
いわゆる“取り付け騒ぎ”で資金繰りに行き詰まったとみられます。

きっかけは暗号資産関連のニュースサイトが11月初めにFTXの財務の健全性を疑問視する報道をしたことでした。
その後、別の交換業大手「バイナンス」のCEOが6日、保有していたFTX発行の資産を清算するとツイッターに投稿して経営への懸念が拡大。8日にその「バイナンス」がFTXの買収を検討しましたが、翌日に撤回され、投資家らがFTXから資金を引き出す動きが加速しました。
そして、11日に連邦破産法第11条の適用をアメリカの裁判所に申請し経営破綻しました。法律の適用は日本法人を含む約130のグループ会社に及びます。


どうしてこんなに大きく報じられているのですか?
負債総額が巨額になる見込み、というのが1つの理由です。
FTXが裁判所に提出した資料によりますと、負債総額は推定で100億ドルから500億ドル、日本円で約1兆4000億円から最大7兆円近くになる見通しです。債権者は100万人を超える可能性があり、多くはFTXに資金を預けていた投資家とみられます。
また経営破綻後にCEOを辞めたバンクマンフリード氏については、資金管理に問題があったとされ、経営のずさんさも指摘されていました。


その資金管理に問題があったのではないかという点ですが、アメリカの証券取引委員会が提訴に動いたとも聞きました。
バンクマンフリード氏は、連邦地検に起訴されただけではなく、SEC=アメリカ証券取引委員会から投資家への詐欺を行っていたとして12月13日付けで提訴されました。
証券取引委員会によれば、FTXは2019年5月以降、投資家から18億ドル、日本円で約2400億円(14日時点のレート)を超える資金を調達し、このうち、11億ドルはアメリカの顧客約90人から集めたものでした。
その際、バンクマンフリード氏は投資家に対して資産を守るためのリスク対策が取られ、安全だと説明する一方で、長年にわたって顧客の資金を自身が保有する投資会社に流用していたことなどを隠す詐欺を行っていたとしています。


顧客が預けていたお金はどうなるのでしょうか?
FTX側は、11月22日に開かれた裁判所の審理で破綻後のサイバー攻撃でかなりの規模の資金が「盗まれたか紛失した」と説明した、とアメリカのメディアは伝えています。

また、12月13日に開かれたアメリカ議会下院の金融サービス委員会の公聴会に出席したFTXトレーディングの新しいCEO、ジョン・レイ氏の説明によると、これまでに10億ドル、日本円にして1300億円以上(14日時点のレート)の資産を、インターネットから切り離した安全な場所に移したなどと説明しています。

日本法人のFTXジャパンは、顧客の資産の海外への流出などは確認されていないとしています。現在は出金を停止しているものの、できるだけ早く出金できるよう準備を進めているということです。
ただ、FTXは債権者である顧客に資産を返却するため、一部の事業の売却手続きを開始していて、日本法人も売却が検討されています。このため、日本の顧客にとっては、売却の手続きの行方も今後の焦点になります。


この問題、今後どうなりそうですか?
まず、FTXの破綻をめぐる裁判の手続きの中で、顧客の資産の保全や返還がどのように進むかが大事な点です。
さらに司法当局による捜査で破綻に至った原因などの解明につなげ、再発を防止することが重要です。
アメリカの議会ではFTXの経営破綻についての公聴会も開かれ、暗号資産全体の規制の在り方についての議論も注目されます。
アメリカのイエレン財務長官も「消費者を保護し金融の安定を促進するために行動することが重要だ」という声明を発表しています。

アメリカの議会などが再発防止のために立法措置に動く可能性もあり、暗号資産業界への規制をめぐる議論が活発になりそうです。

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