NEW2022年11月17日

GAFAどうなっちゃったの?人員削減のワケ

メタが1万1000人以上、アマゾンもおよそ1万人。ツイッターも社員と契約社員あわせておよそ8000人。世界を席けんしてきたアメリカの大手IT企業、GAFAはいま、次々と大規模な人員削減を明らかにしています。いったい何が起きているのでしょうか。ロサンゼルス支局の山田奈々記者に聞きます。

GAFAこと、アメリカのIT企業大手が次々と人を減らしているのはなぜですか?

理由は会社によってさまざまですが、共通のキーワードをあげるとしたら「巣ごもり消費の終えん」がまず、あげられると思います。

新型コロナウイルスの感染拡大で、外出が思うようにできなくなり、インターネット通販でものを買ったり、オンラインゲームをしたりしましたよね。

山田記者
山田記者

確かによく利用していました。

最近でこそ、支出を抑えていますけど。

それです!例えばおよそ1万人の従業員の人員削減を計画していると、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズが報じたアマゾンは、ネット通販の需要が急拡大。

小売り部門や物流センターなどで働く従業員を増やして対応にあたりました。

ことし9月末の従業員数は世界でおよそ154万人。

3年前と比べて2倍に増えたというんです。

しかし、コロナの感染拡大が落ち着き、経済・社会活動が正常化するとともにネット通販の利用もそれまでと比べれば減速していったわけなんです。

ビジネスの大きさに働く人の数があっていないため、人員削減に踏み切ろうとしているのです。

山田記者
山田記者

ソーシャルメディア各社も同じような理由ですか?

そうです。

コロナ禍で自宅で過ごす人が多かったので広告の売り上げが伸びました。

ネット広告が会社の収入源の大半を占める旧フェイスブックのメタや、動画投稿サイト、ユーチューブを運営するグーグルなどはその恩恵を大いに受けてきました。

ただ、最近は広告の売り上げがこれまでのようには伸びず、人件費を削減しようと動き出す会社が増えているんです。

また、ネット広告には固有の弱点があります。

山田記者
山田記者

弱点?それは何でしょうか?

ネット広告は景気減速の影響を受けやすいということです。

アメリカでは、FRB=連邦準備制度理事会が急ピッチな連続利上げを行っていて、この先の景気の減速懸念が強まっています。

さきざきの景気が悪いとなると企業が真っ先に絞り込むのが広告費なんです。

山田記者
山田記者

実際に広告費は落ちてきているんですか?

アメリカ・ニューヨークにグローバル本社があるメディア投資会社の「マグナ」が、ことし9月に出した予測では、来年2023年のアメリカにおける広告全体の売り上げの予測は、4.8%の増加と、6月時点の予測5.8%と比べて、伸びが1%縮みました。

さらに、ソーシャルメディア向けの広告に絞ると、ことし1月から3月までの売り上げは、前の年の同じ時期と比べて7.5%の増加でしたが、その後、4月から6月までの売り上げは、マイナス1%と急ブレーキがかかっています。

特に、メタは売り上げのほとんどをネット広告に頼っているため大きな打撃を受けたんです。

実際、ザッカーバーグCEOは、アメリカの急速な利上げを背景にした景気の減速傾向や広告収入の減少などを人員削減を決めた理由にあげています。

山田記者
山田記者

急速な利上げが広告費の減少をもたらしているんですね。

ただ、メタには個別事情もあります。

フェイスブックから社名をメタに変えるほど、インターネットの次の形とされる仮想空間、メタバースの事業に注力していますが、開発費が膨らみ、収益を圧迫しているんです。

社名変更から1年あまりが経ちましたが、思うようにメタバースの利用が広がっていない実態もメディアで報じられています。

ザッカーバーグCEOは「ムダがなく、効率的な企業に生まれ変わるため追加措置もとる」と話しています。

山田記者
山田記者

起業家のイーロン・マスク氏に買収されたばかりのツイッターも従業員の半数を解雇したとして、世界に大きな衝撃が走りましたよね?

ツイッターも理由は同じようなものですか?

ツイッターも、収入源のおよそ90%をネット広告収入が占めています。

景気減速の影響を受けやすいという点ではメタと同じです。

しかし、ツイッターの場合、こうした景気の影響に加えて、マスク氏による買収も大きく影響しています。

山田記者
山田記者

どうして企業買収が解雇につながるんですか?

これまでみずからのツイートでたびたび物議を醸してきたマスク氏の買収を受けて、40以上の市民団体がツイッターの大口の広告主となっている企業宛てに、書簡を出したんです。

マスク氏が不適切な投稿内容を容認するなど、ツイッターの安全性を脅かす場合には、広告の配信を中止するよう求める内容でした。

これを受けて、今後のツイッターの経営状況や改革の進捗を見極めたいとして、広告の配信を一時中断する企業が続出したんです。

マスク氏は、1日に400万ドルを超える(日本でおよそ5億6000万円)損失を出しているため、人員削減以外に選択肢がないとしていて、11月4日に社員のおよそ半数にあたる4000人規模を解雇したのに加え、12日には、契約社員の8割にあたる4400人を追加で解雇したと報じられています。

山田記者
山田記者

ほかのIT企業はどうなのでしょう?

マイクロソフトもゲームなどの複数の部門であわせて1000人に満たない規模の人員削減に踏み切ったと報じられていたほか、グーグルの持ち株会社、アルファベットも採用を抑制すると伝えられるなど、各社とも人件費の圧縮は避けて通れなくなっているようです。

最近では、IT以外でも、娯楽大手のウォルト・ディズニーが新規採用の凍結と人員の削減に踏み切ると伝えられています。

山田記者
山田記者

IT大手各社における人員削減の波は、今後も続いていくのでしょうか。

1つのポイントは年末が近づいているということです。

アメリカは12月末に年度末を迎える企業が多く、通期の決算、来年の予算などを組むのに重荷となる人件費はなるべく落としておきたいという思惑も働いているようです。

コロナ禍による巣ごもり需要バブルの終えん、そして利上げによる景気減速懸念、打撃はそれぞれの企業によって異なるでしょうが、世界を席巻してきたアメリカのテック企業にはかつて経験したことがない逆風が吹いているようで、注視する必要がありそうです。

山田記者
山田記者