NEW2022年09月23日

円安局面で24年ぶりの市場介入 なぜこのタイミング?

政府・日銀は、外国為替市場で1ドル=145円台後半まで円安が進んだことを受けて、急速な円安に歯止めをかけるため22日夕方、ドルを売って円を買う市場介入に踏み切りました。政府・日銀によるドル売り円買いの市場介入は、日本の金融危機のさなかに円安が進んだ1998年6月以来、24年3か月ぶりとなります。なぜこのタイミングだったのか?日銀担当の下村直人キャップに聞きます。

なぜこのタイミングで市場介入に踏み切ったのですか?

このまま急激な円安が続けば、エネルギーや食品、原材料といった輸入品などが値上がりし、それが企業活動や暮らしに悪影響を及ぼしかねない。こうした危機感があったとみられます。

日本時間の22日未明にアメリカのFRBが大幅な利上げを決めた一方、日中に日銀が大規模な金融緩和を維持したことで、日米の金利差の拡大が意識され、市場では円安が急速に進んでいました。

そして日中、日銀の黒田総裁が記者会見で当面は金利を上げないと強調すると、円相場は1ドル=145円台後半まで値下がりしました。

この1ドル=145円という水準ですが、これに近づいた今月14日には、鈴木財務大臣が、介入について、「やるときには間髪入れずに瞬時にやる」と発言するなど、“口先介入”のレベルを高めていました。

さらに同じ14日には日銀が、市場介入を視野に入れた準備の動きとされる「レートチェック」を銀行などに対して実施しました。この水準を一気に突破したことで、危機感が一段と強まったものとみられます。

下村記者
下村記者

今回の市場介入、日米は協調したのでしょうか?

介入したあとの記者会見で、鈴木財務大臣は、単独での介入かどうか明言は避けつつ、「関係各国とは常日ごろ、連絡を取りあっている」と述べ、事前にアメリカなどとすりあわせを行ったことを示唆しました。

今回の市場介入をめぐっては、アメリカの理解が得られないために実施が難しいのではないかという声も事前にはありました。というのも、記録的なインフレに見舞われているアメリカにとって、介入によって円高ドル安方向に動けば、さらなる物価高につながるおそれがあるからです。

これについてアメリカの財務省は今回の介入には関わっていないとして日米の協調介入でないことを明らかにしました。ただ、「このところ高まっている円相場の変動を抑えるのが目的だと理解している」として事実上、容認した形です。

また、ヨーロッパ中央銀行の報道官は22日、NHKの取材に対し、「外国為替市場で政府・日銀が行った市場介入には参加していない」と述べました。

この結果、今回の政府・日銀による市場介入は、日本が単独で行ったことが明らかになりました。

下村記者
下村記者

介入効果は続くのでしょうか、今後の焦点はどこにありますか?

今回の市場介入によって、投機的な取り引きには大きなけん制になるため、急速な円安にいったん歯止めがかかる可能性があります。

鈴木財務大臣は「一定の効果が数字に表れている」として市場介入の効果はあったという認識を示しています。

ただ、円安ドル高を加速させてきた背景には、日米の金融政策の違いという大きな構図があります。

日銀の黒田総裁は22日の金融政策決定会合のあとの記者会見で、「当面、金利を引き上げることはない」という考えを強調しました。このように金融引き締めを急ぐアメリカと金融緩和を続ける日本という状況は、当面は変わらないため、円安に歯止めをかける効果は限定的だという指摘もあります。

為替政策を担当する財務省の神田財務官は22日の記者会見で、「今後も必要によってはやる」と述べ、この先も為替市場が大きく変動することがあれば、さらなる介入も辞さない構えを見せました。

ただ、市場介入に必要な国の外貨準備には限りがあるため、際限なく介入を行えるわけではありません。また、今後も介入を行う場合、日米が介入をめぐってどういった意思疎通を図っていくかは引き続きポイントになりそうです。

「伝家の宝刀」ともいえる市場介入についに踏み切った政府・日銀が、円安の大きな流れを劇的に変えることは容易ではなく、今後長く市場と向き合うことになる可能性もあるため、その覚悟が問われることになります。

下村記者
下村記者