「飲み方」が変わる?

新型コロナの感染拡大で、長らく続いた自粛モードや行動制限。
「飲み会」の機会もめっきり減って、お酒に弱くなったと感じている人もいるのではないでしょうか?でも、大丈夫。お酒が飲める人も、飲めない人も楽しめる。
そんな新しい「飲み方」が広がり始めているんです。サタデーウオッチ9の長野幸代記者、経済部の保井美聡記者、どういうことなの?

お酒を飲めなくても楽しめるってどういうこと?

夏と言えば、職場の同僚や友人と「ビアガーデンに行く」という方もいると思いますが、今、各地のビアガーデンのメニューで増えているのが、アルコール度数が0.00%で、味わいがお酒に似ている「ノンアルコール飲料」なんです。
今週取材に行った都内のビアガーデンは、コクのある黒ビールや苦みが少なくさっぱりしている白ビールなど、ビール風味の商品だけでも5種類を提供。
お酒を飲める人も飲めない人も楽しめるようにしているんです。
売れ行きは想定の1.5倍だということで、店の担当者は「昔のようにただひたすらビールを飲み続けるような人だけでなく、気持ちのよい空間で食事を楽しもうと来る人が圧倒的に多くなっている。小さい子どもがいる家族連れも来るようになった」と話しています。


でも、ノンアルコール飲料って、味わいが足りないイメージもありますけど、本当に売れているんですか?
ノンアルコール飲料の市場は年々、伸び続けているんです。

去年(2021年)の販売金額は800億円を超え、5年前(2017年)と比べると、150億円以上も増えたとみられています。
一方で、人口の減少やいわゆる「ビール離れ」を背景に、主力のアルコール飲料のビールの消費量は減少が続いています。
こうした中でもなんとか売り上げを伸ばしたいビールメーカーは成長市場と言えるノンアルコール飲料に注力しているんです。
大手ビールメーカーの推計では、お酒を飲めない人や飲まない人は、合わせておよそ4000万人。
しかし、アンケートなどの結果、「お酒は飲めない、もしくは飲まないけれど、飲み会の雰囲気は好き」と言う人が3割にのぼるとみられています。
とくに若い世代はこうした傾向が強いと見ています。


かなり、大きなマーケットですよね?

そうなんです。この大手ビールメーカーでは、こうした若い世代を新たな顧客にしようと新しいバーまで東京・渋谷にオープンしました。
「お酒が飲めない人でも楽しめる」というコンセプトのこのバーでは、カクテルを中心におよそ30種類のノンアルコール飲料をそろえています。
飲みたい人も飲めない人も楽しめるように、アルコール分を0%、0.5%、3%の3つから選ぶことができます。
さらに、見栄えする映像をSNSに投稿したいという若い世代のニーズを踏まえて、味だけでなく、商品の見た目も工夫。
混ぜると色が変わったり、綿あめを溶かして飲んだりするカクテルもあります。
来店したお客に話を聞くと、「こういう見た目がかわいい商品があると、飲み会も楽しく参加できるかなと思います」とか、「誰がお酒を飲んでいるかとか関係なく、飲む人も飲まない人も大差なく楽しめたかなと思って、満足度が高い」といった声が聞かれました。
実はこうした商品、お酒が苦手な大学生などに聞き取りをして開発しました。

聞き取りを受けた1人、大学4年生の藤原美咲さんはもともと、ビールが苦手でしたが、苦みを抑えたビールベースのカクテルはおいしいと感じたといいます。
店では、こうした若い世代の意見をこれからも取り入れて、商品開発を進めることにしています。


若い世代にお客になってもらいたいという熱意が伝わってきますね。
一方で、これまでお酒に親しんできた中高年の世代はどうなんですか?
お酒は飲めるけど、“あえてノンアルコールを選ぶ”という人たちも増えています。

都内に住む桜井鈴茂さん(54歳)と妻ののぶ子さんです。
50歳を超え、お酒が体に残って体調を崩すことも多くなり、2年ほど前から夫婦でお酒を控えることにしました。
そうした中で、ノンアルコール飲料を試したところ、味が気に入ったといいます。
自分たちでもそのおいしさを広めたいと去年5月、ノンアルコールの商品を中心に提供する飲食店の経営を始めました。

もともとお酒が好きな人も数多く訪れているということで、桜井さんは「ノンアルという選択肢があると、お酒を飲んでいるような気分になれるし、朝から元気に動けると思います。必要なのはアルコールではなくて、いい場といい食事とおいしいドリンク、そして、仲間がいれば楽しめると思います」と話しています。


もともとアルコールを飲まない若い世代だけでなく、これまで飲んでいた人にもノンアルコール飲料は広がっているんですね?
そうですね。これまで飲酒の頻度が高かった40代男性などの方が、飲酒の習慣率は減っているという分析もあります。

「若者に限らず健康意識の高まりで、日本人は全体的にアルコール離れが進んでいる。アルコールのメリットとして飲みながらのコミュニケーションや日常から少し離れるといったようなことがあるが、娯楽が多様化していることもあり、飲酒による費用対効果をみて相対的な価値が下がっているのではないか。成熟した消費社会ではどこの国でも1つの商品で爆発的なヒットは生みにくく、いかに消費者のニーズを細かく丁寧につかみ取っていくのかが企業にとっては重要になってくる」
かつては、友人や同僚と話はしたいけど、お酒が苦手だから「飲み会に行きたくない」とか、飲み会に行っても「自分だけ飲まずに気まずい」という人もいたのではないかと思います。
飲みたい人も飲みたくない人も一緒に楽しめる。
そんなコミュニケーション場が広がることに期待したいと思います。

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