NEW2022年06月24日

太陽フレアって何?スマホが使えなくなるの?

いま、スマホを使ってこの記事を読んでいる方も多いと思います。そのスマホが2週間にわたって使えなくなる事態が起こるかもかもしれません。
大地震や集中豪雨のような自然災害の影響?
いえいえ、その要因は地球から遠く離れた太陽にあります。
「太陽フレア」と呼ばれる太陽の表面で起こる爆発現象が、人々の暮らしに大きな影響を及ぼすおそれがあるというのです。
私たちはどうすればいいの?
経済部の野中夕加記者、教えて!

そもそも太陽フレアってどんなものなんですか?

太陽は活動の周期があるんですね。その活動が活発になると、表面で巨大な爆発現象が起きるようになります。この現象を「太陽フレア」と呼びます。
電磁波や高エネルギーの粒子、それに電気を帯びたガスが放出されます。早いものだと8分間で、遅くとも数日の間に1億5000万キロも離れた地球にも届くのです。
その際、地球を覆っている磁場に作用して地球の磁気を弱めてしまうのです。

野中記者
野中記者

なんか怖いですね。いつごろ起きるんですか?

次に太陽の活動が活発になるのは3年後の2025年ごろと言われています。
これを見据えて、国内でどんな影響が考えられるのか、総務省ではことし1月から有識者による議論を重ねてきました。
今回、その報告書がまとまり被害想定やとるべき対策を国として初めて示したんです。

野中記者
野中記者

具体的にどのような被害がありうるんでしょうか?

100年に1度の巨大な爆発が起きた場合を想定した「最悪シナリオ」の例です。あくまで最悪のシナリオなので、必ずこうなるというわけではないですよ。
まず携帯電話やテレビは、2週間にわたって断続的に利用できなくなったり、視聴できなくなったりします。携帯電話は周波数が一時的にひっ迫するため、110番や119番などの緊急通報もつながりにくい事態になるとしています。
また、GPSの精度が大幅に低下し、カーナビが正常に機能しなくなったり、スマホの地図アプリが使用しにくくなったりするということです。

野中記者
野中記者

スマホで電話できない、地図アプリも使えないとなると大変!

そうなんです。
初めて行くレストランやアパレルショップをスマホでナビしてもらえなくなるし、ウーバーイーツなどの宅配もピンポイントに届けてもらえなくなりますよね。
さらに、飛行機の管制機能にも影響を及ぼし、事故のリスクを避けるため2週間にわたり運休することもありうると国の被害想定には書かれているんです。

野中記者
野中記者

うわー、旅行や出張も出来なくなってしまうんだ。

さらに最も深刻なのは電力の供給が滞る可能性があるという点です。
太陽フレアによって磁場が乱れると、電力系統に強い電流が流れます。その対策をとっていない設備では保護装置が誤作動を起こし、広域停電につながるとされています。また誤作動が起きなくても、設備の損傷で電力供給に影響が出るとしています。
1989年には、カナダでおよそ10時間に及ぶ大規模な停電が起きて600万人に影響が出たこともあります。
このところ気温の高い日が続いていますが、厳しい暑さの夏場に停電が続くと、エアコンが使えず熱中症で倒れる人が増えるというまさに命に関わる事態です。

野中記者
野中記者

最悪シナリオとならないために私たちでできることはないのでしょうか。

影響や被害を完全に防ぐというのは難しく、少しでもリスクを小さくするしかありません。例えば、スマホが使えなくなっても、有線通信である自宅の固定電話やインターネットは使えます。
またカーナビでGPSの精度が落ちた場合も、地図情報そのものの機能は利用できます。大事なことは事業者が、あらかじめどのような代替手段があるのか確認しておくことだと言われているんです。

野中記者
野中記者

企業はこうした事態に備えていないんですか?

国は、インフラを持つ企業が、必ずしも専門的な知識やノウハウを持っているわけではないことを課題として指摘しています。
自然災害への備えならともなく、太陽フレアの被害想定が今回初めて示されたわけですから、ある意味当然かもしません。
そこで、まずはインフラのリスク評価や強じん化のために何をするべきか、標準的なガイドラインを分野ごとに策定することを報告書では提言しています。

野中記者
野中記者

なかなかすぐに対策に取りかかるのは難しそうですね。国はどう対応しようとしているんでしょうか。

重視しているのが情報発信です。
爆発現象が観測された場合、社会インフラにどのような被害が想定されるのか、一般にわかりやすい予報や警報を出そうとしています。

これを担うのが、総務省が所管するNICT・情報通信研究機構です。

現在も太陽フレアの監視を行い、観測結果を「宇宙天気予報」という形で発表してきましたが、専門的な学術用語が多く、一般にはわかりにくいことが課題でした。

それを見直し、実際にどのような影響がもたらされるのか、事業者や国民にわかりやすく発信しようとしています。

通信や放送、測位、電力などの分野でそれぞれ基準を設け、3段階や4段階のレベルで注意警戒を促すということです。

野中記者
野中記者

大雨注意報や大雨警報のようなイメージでしょうか。

そうですね。

気象庁が天気予報や災害への防災情報を出すのと同じですね。

今回の報告書では、自然災害への備えと同じように国を挙げて備えを進める必要があると指摘しています。

NICT・情報通信研究機構の石井守センター長は、「日本ではこれまで大きな被害が起きておらずわかりにくいと思うが、諸外国でもだんだんと備えを進めている現状があり、日本もその段階に入ったと考えている。最悪の場合は、ここまで起こり得るということを理解してもらい、少しずつインフラ整備をしていくのが現実的だ」と話しています。

野中記者
野中記者