NEW2022年06月23日

注目!中古家電 企業も熱視線

暮らしに必要な機能を備え、新製品より割安に買える中古家電。身近なモノの値上がりが相次ぐ中で消費者のニーズが高まり注目を集めています。こうした流れに対応しようと、企業の間でも、この分野のビジネスを強化する動きが相次いでいます。

中古家電の売り場ではいま何が起きているの?

家電量販店大手が運営する東京・池袋の店では、中古家電の販売が伸びています。

この店では4年前から、店で引き取った中古品のほか、メーカーが販売を終了したものなど、未使用のアウトレット品を取り扱っていますが、このところ洗濯機や冷蔵庫などの売り上げが右肩上がりだというのです。

ヤマダ池袋アウトレット・リユース 今泉裕明店長

「(中古家電は)やはり価格の訴求力は抜群だと思われます」

家電など、中古品の市場は伸びているの?

はい。
家電を含む中古品全体の市場規模は11年連続で拡大しています。

2010年には1兆円あまりでしたが、2020年には2兆4000億円を超えました。

さらに2025年には3兆5000億円に成長すると見込まれています。

どうして伸びているの?

市場拡大の背景には、消費者のニーズの多様化があります。

リサイクルの推進など環境問題への意識の高まりや、フリマアプリの普及などで、若い人たちを中心に中古品を買って使うことに対する心理的な抵抗が小さくなってきているという見方が広がっています。

それに加え、中古家電をめぐってはさらに2つの理由が重なって、最近関心を集めているようです。

その2つの理由とは?

1つは「品不足」です。

コロナ禍での世界的な物流網の混乱に加え、最近では中国・上海でのロックダウンなどもあり、家電製品などに必要な部品の供給が滞る事態が起きています。

このため、エアコンなど一部の製品では店頭で品薄になっているものも出ています。

そこで、中古品を選ぶ人が増えたというのです。

どうしても今欲しいという人は、今ある商品から選ぶ必要がありますからね。

もう1つの理由が「物価高」です。

身近なモノの値段が上がってくる中で、比較的高額になりがちな家電製品でも、価格をより重視する人が増えているというのです。

実際、先ほどの池袋の店で買い物客に話を聞くと、「洗濯機の在庫があまりないと聞き、中古品を買いました」とか、「別に使えればいいかなって最近思い始め、価格を見て決めた」といった声が聞かれました。

需要が増えるということは、企業にとってはビジネスチャンスということですか?

はい。
そこで、この大手家電量販店では、新たに中古家電の再生工場を建設し、ことし5月から稼働を始めました。

家電量販店が自前の工場、しかも中古専用ですか?

新工場では、店舗で買い取った中古の洗濯機などを、再び販売できるように分解・洗浄しています。

専用の機械を使って、長年使ってこびりついたカビや汚れを一気に落とし、それでも落ちない頑固な汚れは、作業員が1つ1つ落としていきます。

傷んだ部品は交換し、表面の細かい傷も補修して、1日およそ500台の洗濯機や冷蔵庫を再生できるというのです。

工場の建設で、グループでは、中古家電の供給量を、現在の年間およそ7万台から、2025年度には30万台まで増やす方針です。

中古品は、その時々であったりなかったりする商品というイメージですが、安定的に商品が供給されれば、消費者も買い物しやすくなりますね。

さらに、中古家電の分野では、新たなビジネスも登場しています。

24時間営業の無人家電販売店です。

店で家電を買うのに、店員さんがいないんですか?どうやって買うの?

店内に設置されたタッチパネルを使って、ほしい商品を選んで注文、決済します。

扱っているのは、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、それにテレビの4種類。

驚くのは、その販売方法で、メーカーや製造年数、大きさなどを問わず、税込みで、
▼電子レンジ=5500円、
▼冷蔵庫、洗濯機=1万1000円、
▼テレビ=1万6500円と、
一律価格で販売しているという点です。

機能や発売年が違う商品を一律の価格にしたのは、どうして?

店の運営会社によりますと、コストを抑え安く提供するために店員を置かない分、商品の特徴を対面で説明できないので、価格設定をシンプルにしたというのです。

取材した、東京・大田区の店では、1か月で50台から70台ほど売れていて、有料の配送サービスもありますが、ほとんどの客は台車を借りて持ち帰るということです。

ちなみに、利用の多い時間帯は夕方以降だということでした。

無人の中古家電販売店「ゴジユウニ」運営会社 西野秀さん

「有人店舗と比べて1台あたり5000円から1万円ぐらいは金額は抑えられていると思います」

中古家電のニーズが高まっているのはわかりました。
でも、中古品の需要が増えると、新品が売れなくなるのではないですか?

その点は、見方が分かれています。

先ほどの家電量販店大手は新製品と中古家電は、いずれも事業として成長可能だと分析しています。

ヤマダホールディングス 清村浩一執行役員

「新品を希望するお客様は確実にいらっしゃいます。他方、短期間、求めやすい価格でよいというお客様にはリユース製品は最適と思っていますので、必ず両立できる事業になっています」

違った客層で、それぞれ売り上げを伸ばせるというのですね。

一方で、中古家電の拡大が、既存の家電販売に影響を与える可能性を指摘する専門家もいます。

日本総合研究所 小方尚子 主任研究員

「中古市場が拡大すればするほど、新品の市場はそれだけ減るのは避けられない。企業としては、節約されたお金を使いたくなるような新しいものを提供し、既存の市場を縮小させないことが大事な戦略となる」

選択肢が広がることは、私たちにとっては良いことですが、中古家電を買う上で、注意する点はありますか?

中古家電の選び方について、家電ジャーナリストの安蔵靖志さんに聞きました。

ポイントは大きく2つ、「保証の有無」と「購入後すぐに動作確認」です。

見た目はきれいでも、故障のリスクは新品よりは高いので、保証を付けているお店で買う方が安心だということです。

また、一般的に中古家電の保証期間は短いので、購入したらなるべく早く電源を入れてちゃんと動くか確認する必要があるということでした。

家電は毎日使うものですから、値段も重要ですが、安心して使えるものを賢く手に入れたいですね。