NEW2022年05月27日

プラスチックごみ 最先端のリサイクル技術って?

紙ごみ、ペットボトル、プラスチック容器、ビンや缶。家庭でごみを分別して出しているものの、どんな風にリサイクルされているのか、疑問に思ったことはありませんか。今回は、プラスチックごみを分別する最新技術などについて、経済部の寺田麻美記者、教えて!

わが家では、プラスチックごみを分別していますが、1週間もするとかなりの量がたまって驚きます。回収されたプラスチックごみが、いったいどのようにリサイクルされているのか気になっているのですが?

先日私は、環境分野の最新技術や製品を紹介する展示会に取材に行ってきました。

都内の会場では、プラスチックごみを分別するためのさまざまな技術も紹介されていました。

寺田記者
寺田記者

“分別”だけでも、いろいろな技術があるんですね。

たとえば、山形県のメーカーが開発した小型の装置は、ポリエチレンなど、プラスチックの細かい種類を判別することができます。

プラスチックに近赤外線を当てて反射する光の波形を読み取る仕組みです。

寺田記者
寺田記者

細かく種類を判別できると、どんなメリットがあるんですか?

開発した会社によりますと、リサイクルして新たなモノを作るにはプラスチックを材質ごとに分ける必要があります。

専用の装置がない場合は、手ざわりや匂い、燃え方などの経験則で、材質を判別することが多いということで、この装置によって誰でも簡単に判別できるようになるのが最大のメリットです。

また今回の装置、“小型”である、ということも大きなポイントです。大型の装置を導入できない中小の業者からは特に好評で、引き合いも多いということです。

寺田記者
寺田記者

プラスチックごみの中でも、ペットボトルは分別が進んでいる印象があります。実際のところ、どうなのでしょうか?

ペットボトルは、単一の素材でできているため、プラスチック製品の中でもリサイクルに適していると言えます。

日本では、家庭でのごみの分別がしっかり行われていることもあって、日本のペットボトルのリサイクル率は88.5%に上っています。海外に比べると高い水準だということで、回収されたペットボトルは、食品トレーや卵のパックなどに再利用されています。

ただやはり、課題はあります。

寺田記者
寺田記者

いったいどんな課題ですか?

ペットボトルの中に飲み残しがあったり、ラベルなどがついたままだったりすると、分別に手間がかかってしまうんです。

そうした課題を解決しようと開発されたのが、こちらのペットボトル回収機です。

寺田記者
寺田記者

普通の回収ボックスに見えますが…

この回収機は、都内の精密機器メーカーが新たに開発しました。外からは見えませんが、投入口にカメラやセンサーが取り付けられています。

そして、飲み残しがあったり、ボトルからラベルやキャップを外していなかったりすると、投入口から入れることができない仕組みになっているんです。

寺田記者
寺田記者

なるほど。

これなら分別の手間が省けますね。

それに回収されたペットボトルは、回収機の中でつぶされます。

これによって、容積は3分の1になるため、輸送効率も上がるということです。

寺田記者
寺田記者

続々と新しい技術や製品が生まれているんですね。

そうですね。背景の1つには、4月から施行された「プラスチック資源循環法」があります。

法律では、企業や消費者、自治体に、プラスチックを使う量を減らすとともに、分別回収をしてリサイクルするよう求めています。このため、それに対応した製品やサービスに注目が集まっているんです。

寺田記者
寺田記者

リサイクルをより進めていくには、私たち使う側、捨てる側の意識や行動も大事ですね。

そうですね。実は、先ほどふれたペットボトルのリサイクルについては、ほかにも課題もあるんです。

関係企業が頭を悩ませているのが、自動販売機の横などに設置された回収ボックスから集められた、いわゆる「事業系ペットボトル」と呼ばれるものです。

ボックスには、飲みかけのペットボトルが捨てられていたり、なかには家庭用のごみが入れられたりしているケースも少なくないんです。

寺田記者
寺田記者

繁華街の回収ボックスにごみがあふれかえっているのをよく見ますね。

そうですよね。そこで業界団体は、去年、新しい回収ボックスを作りました。投入口を下向きにしたうえで、サイズを小さくして、家庭ごみなどペットボトル以外のものを入れにくくしました。

業界団体では、実証実験の結果などをふまえ、ことし秋から、全国で新しい回収ボックスの設置を始めたいとしています。

脱炭素社会に向けて、これまでの使い捨ての一方通行の経済の形から、循環型の経済への転換が求められていて、世界の潮流となっています。

循環型の経済の市場は、2030年に世界でおよそ500兆円に拡大するという試算もあります。

また、資源価格が高騰している中で、経済安全保障の観点からも、今ある資源を繰り返し使う経済の実現が一層重要になってきていると言えます。

ごみは、きちんと分ければ資源にもなります。循環型の経済の実現に向けて、それぞれの立場で取り組みを進めることが大切だと思います。

寺田記者
寺田記者