NEW2022年02月02日

“悪い円安”を避けるには“賃上げ”を

ガソリン価格の上昇に食品の値上げ…。背景には円安もあると指摘されています。“悪い円安”を避けるには“賃上げ”が必要ということですが、2月2日の「ニュース シブ5時」で永野解説委員が解説しました。


小山アナ

値上げのニュースをお伝えする機会が増えてきました。


永野解説委員

2月から3月にかけても、食品の値上げが相次ぎます。

しょうゆに食用油、ちくわ、冷凍食品のハンバーグなど、これでも一部なんです。


礒野アナ

身近な食べ物ばかりです。


永野解説委員

そして、4月からは1本10円でおなじみの駄菓子「うまい棒」も12円に。値上げは、1979年=昭和54年の発売以来初めてです。

メーカーによりますと、海外産のとうもろこしなど、原料の値上がりが主な要因ですが、円安も影響しているということでした。


礒野アナ

確かに円安傾向が続いていますよね。


永野解説委員

1年前、1ドル=およそ105円だった円相場は、2月2日時点で114円台に。

原油などの原材料価格が高騰する中、円安が、輸入されたモノの価格を押し上げ、個人消費に水を差すのではないかーーー。

こうなってしまうのが“悪い円安”です。


小山アナ

でも円安って、プラスのイメージも強いですよね。


永野解説委員

円安はよい面もあり、実際に輸出企業は利益を増やしています。

海外に安く製品を売れるため、競争力が高まり、収益が増える効果があるからです。

海外企業への投資で得たドル建ての利益も、円安ならその分、円に換えた際の金額が大きくなります。


小山アナ

グローバル展開する企業にはメリットがあるというわけですね。


永野解説委員

日銀は、円安が日本経済にプラスに作用するという基本的な構図に変わりはないという立場です。

1月にまとめた最新のリポートで、円安が10%進めば、つまり分かりやすく言うと、1ドル=100円から110円になれば、GDP=国内総生産を0.8%押し上げるという試算を公表しました。


礒野アナ

じゃあなんで、“悪い円安”なんて言われているんですか?


永野解説委員

今の円安は、海外で稼ぐ企業から見るか、それとも消費者から見るかで、まったく別の顔になるからです。

消費者からすると、モノの値段が上がることにつながるため“悪い円安”ととらえられやすくなるわけです。


礒野アナ

円安にも“よい”“悪い”があるんですね。


永野解説委員

個人消費はGDPの半分以上を占めますから、消費者から見た“悪い円安”を避ける必要があります。

そのためには“賃上げ”を広げて、家計がモノの値上がり分を吸収できるようにすることが大事になってくるんです。


小山アナ

“賃上げ”と言えば、春闘が始まっていますね。


永野解説委員

これから3月半ばの集中回答日に向けて労使交渉が本格化します。

政府は経済界に対して3%を超える賃上げへの協力を求めていますが、NHKが国内の主な企業100社に行ったアンケート調査では、基本給を一律に引き上げるベースアップを行うと回答した企業は5社にとどまりました。


礒野アナ

5社だけ、ですか?


永野解説委員

一方で「未定」「検討中」とする企業は、半数近くに上りました。

オミクロン株の感染拡大などで景気の先行きが見通しにくいことが主な理由です。


礒野アナ

そうすると“賃上げ”はどうなるんでしょうか?


永野解説委員

この30年間、先進各国の賃金が大きく上昇しているのに対し、日本の賃金はほぼ横ばいです。

背景には経済の低迷などがありますが、企業が稼いだ利益を従業員に十分に還元していないという指摘も根強くあります。


小山アナ

経営者の思いきった判断を期待したいですね。


永野解説委員

そうですよね。企業業績が改善傾向にある中、業績に応じて賃金を引き上げ、個人消費の回復が企業の収益をさらに増やすという経済の好循環を作ることが今こそ重要です。

“悪い円安”を避けるために、政府も、経済の成長力の底上げに向けた戦略を確実に実行し、企業が安心して賃上げできる環境を整えることが求められます。