NEW2021年12月22日

2022年日本の宿題 国債頼みの財政から脱却なるか

長引く新型コロナの影響などで、国の財政が一段と悪化しています。国債の発行残高は、2021年度末に1000兆円を超える見通しです。財政の課題について、12月22日の「ニュース シブ5時」で永野解説委員が解説しました。

阿部
アナ

財政状況は今どうなっていますか?

永野
解説委員

国債の発行残高は右肩上がりで、新型コロナが日本経済を直撃した2020年度と21年度は、積極的な財政出動によって一段と増加しています。

21年度末には、初めて残高が1000兆円を突破することが確実とみられ、これは20年度の国の税収のおよそ16年分に当たります。

経済規模と比べて見ますと、先進国の中でも突出しています。

久保田
アナ

1000兆円ですか。途方もない金額ですね。

永野
解説委員

国の予算の在り方を有識者が審議する「財政制度等審議会」は、12月にまとめた提言で、巨額の予算を組んでいる現状を「戦後最大の例外」と位置づけました。

財政出動は「国民の生活や事業を守るために大きな役割を果たした」とする一方、これを前例とすることなく、“例外”から脱却するよう強く訴えたんです。

阿部
アナ

脱却すると言ってもどうやって?

永野
解説委員

1. 収入を増やすこと
2. 支出を減らすこと

このシンプルかつ当たり前の取り組みを地道に続けることが求められます。

久保田
アナ

家計でも同じようなことが言えますね。

永野
解説委員

では収入をどう増やしていくのか。

政府は「まずは経済をしっかり立て直す」として、経済を力強い回復軌道に乗せることで税収アップを図りたい考えです。

企業収益を増やし、賃金を引き上げ、消費を活性化させるという「成長と分配の好循環」を目指しています。

阿部
アナ

支出面ではどうですか?

永野
解説委員

2022年度からいわゆる「団塊の世代」の人たちが75歳以上になる点に注目です。

医療や介護などの社会保障費の増加が避けられない中、全体の支出をどう抑えていくかは大きな課題です。

久保田
アナ

なぜ財政の健全化が必要なのでしょう?

永野
解説委員

財政制度等審議会は提言で、将来のリスクに対応するための財政上の「余力」を持っておく必要があると指摘しています。

久保田
アナ

どういうことですか。

永野
解説委員

具体的には、
1. 震災や豪雨などの「自然災害」
2. 新型コロナのような「新たな感染症」
3. 「金利上昇」の3つです。

中でも金利は、上昇すれば利払いがさらに膨らむことになります。

今は日銀が大規模な金融緩和によって金利を抑え込んでいますが、財政制度等審議会は「金融政策で金利を抑え込む状況を、将来もずっと続けられることを前提にはできない」と、警鐘を鳴らしています。

阿部
アナ

財政の健全化は待ったなしの課題ということなんですね。

永野
解説委員

財政は国の信頼の礎とも言われますが、そこで注目されるのが、基礎的財政収支=プライマリーバランスの黒字化目標です。

久保田
アナ

聞いたことはありますが、具体的にはどういう意味でしょう?

永野
解説委員

プライマリーバランスは、社会保障費や公共事業費などの政策に充てる経費を、国債に頼らずに、税収やそれ以外の収入でどれだけ賄えるかを示す指標です。

2020年度は国と地方を合わせて56兆円余りの赤字でしたが、政府は、25年度に黒字化する目標を掲げています。

阿部
アナ

2025年度ですか。あまり時間がない印象です。

永野
解説委員

この目標年度について、政府は「新型コロナの経済や財政への影響を検証し、その結果を踏まえて再確認する」としています。

2022年の年明けから検討を始める予定で、「財政健全化の本気度が試される」という指摘も出ています。

コロナで大きな影響を受けた暮らしや事業への支援はもちろん重要ですが、財政の悪化を放置し続ければ、私たちの子どもや孫にそのしわ寄せが及びかねません。

財政はどうあるべきなのか、むだに使われていないか、一人一人が身近な問題としてとらえ、今後も注意して見ていく必要がありそうです。