NEW2021年12月15日

日本も参加 世界最大規模の経済連携協定 元日発効へ

新型コロナに身近なモノの値上がり…。2021年も何かと暗い話題の多かった日本経済ですが、22年は元日に日本も参加する世界最大規模の経済連携協定=RCEPが発効して、1年のスタートを切ります。どんなメリットがあるのでしょうか?
12月15日の「ニュース シブ5時」で永野解説委員が解説しました。

阿部
アナ

そもそもRCEPって何ですか?

永野
解説委員

「地域的な包括的経済連携」を意味する英語(Regional Comprehensive Economic Partnership)の頭文字を取っていて、アールセップと呼んでいます。

関税の撤廃や引き下げなどを通じて、自由に貿易できる経済圏を作り、それぞれの国の人たちがより豊かになることを目指すという、とても大事な取り組みなんです。

庭木
アナ

どんな国が参加しているのですか?

永野
解説委員

日本をはじめ、中国、韓国、それにASEAN=東南アジア諸国連合の加盟国などの15か国です。

2022年の元日に、日本、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナム、オーストラリア、中国、ニュージーランドの10か国でまずは発効します。

その1か月後の2月1日には、韓国でも発効することになっています。

日本にとっては、最大の貿易相手国である中国、3位の韓国と、いずれも初めて結ぶ経済連携協定です。

阿部
アナ

日本企業にはどんなメリットがありますか?

永野
解説委員

巨大な自由貿易圏ができますので、特に輸出面での効果が見込まれています。

RCEPの規模などを「みずほリサーチ&テクノロジーズ」の菅原淳一主席研究員にも協力いただいてまとめました。

まず参加国のGDP=国内総生産は、日本円で合わせて約2930兆円に上ります(1ドル=113円換算)。

参加国の人口も22億人余りと、GDP、人口ともに世界のほぼ3割を占めるんです。

庭木
アナ

すごい規模ですね。

永野
解説委員

発効後は、例えば中国向けの輸出ですと、EV=電気自動車に使われるモーターの一部にかかっている10%もしくは12%の関税が段階的になくなります。

脱炭素化の流れが進む中で、“追い風”になりそうです。

また、同じく中国向けでは、人気があるとされる▽ほたて貝や、▽パックごはん、▽ぶり、▽日本酒、▽チョコレート菓子などの関税も将来的になくなります。

庭木
アナ

効果が大きそうですね。

永野
解説委員

そうですよね。
関連する企業の収益力が高まれば、働いている人の給与も上がって、個人消費が増えるという「経済の好循環」につながることが期待されているんです。

阿部
アナ

輸入面ではどうですか?

永野
解説委員

すぐにかどうかは分かりませんが、輸入品の価格が下がる効果もありそうです。

例えば衣類は、現在の4.4%から13.4%の関税が、段階的に撤廃されます。

タイやベトナム、オーストラリアなどからの衣類は、そのほとんどで、関税が元日に撤廃されます。

このほか、▽国産品とすみ分けができている中国産の乾燥野菜や冷凍総菜、▽お酒では中国の紹興酒、韓国のマッコリなどの関税も、段階的になくすことになっています。

また、こうした協定を結ぶ際、海外から安い農産物が入ることで国内農業に影響が出るとよく心配されますが、RCEPでは、コメや牛肉・豚肉などの重要5品目が関税の撤廃・引き下げの対象から除かれたことも特徴です。

阿部
アナ

値段が安くなるとすれば消費者にとってはありがたいですね。

永野
解説委員

そうですよね。でも、ここからが大事なんです。

RCEPは、日本経済を成長軌道に乗せるための推進力、車で例えると「エンジン」になることが期待されますが、その性能を最大限発揮させる取り組みが必要です。

庭木
アナ

どういうことですか?

永野
解説委員

大企業と比べて、中小企業は海外事業のノウハウがあまりないため、現地での売り先の開拓にも苦労しているのが現状です。

コロナ禍で先行きが不透明な中、設備投資に慎重な経営者も少なくありません。

国と自治体に加え、取引先に中小企業を多く抱える地方銀行などの金融機関には、中小企業がRCEPを活用する上で必要な情報や資金を提供するといった、中小企業の経営者の背中を押すような支援が求められます。

効果を幅広く行き渡らせ、1人でも多くの人がRCEPの恩恵を実感できるようにしてもらいたいですよね。