脱炭素は蓄電池がカギ!

政府が掲げる2050年の脱炭素社会の実現。そのカギとなるのが、「蓄電池」です。EV=電気自動車にとって最も重要な技術であり、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの弱点である発電量の不安定さを克服するのにも蓄電池が欠かせません。この分野、日本のお家芸だったのですが、最近は海外勢に押されているようです。何が課題なのでしょう? 経済産業省担当の野中夕加記者、教えて!
蓄電池というと真っ先にスマホを思い浮かべます。
最近のスマホはだいぶ持ちがよくなりましたね。
野中記者

そうですよね。
昔はちょっと回数多く電話しただけで、電池マークが赤くなって残量20%を切り、慌てて充電した記憶がありますが、最近は電池の性能がずいぶん上がってきています。
でも蓄電池ってスマホやパソコン、スティック型掃除機とか身近なものだけでなく、さまざまな産業を変える可能性を秘めているんです。
といいますと?
野中記者

EV=電気自動車にも当然ながら蓄電池が使われていて、電池の性能次第で走行距離が変わってきます。
走行距離が伸びれば自動車産業が内燃機関からEVへと大きくシフトするスピードが速まる可能性があります。
また、太陽光などの再生可能エネルギーによる発電を増やすことにもつながるのです。
なぜ電池が再生可能エネルギーと関係あるんですか?
野中記者

太陽光発電は昼間、晴れていればたくさんの電力を生み出せますが、夜間や雨が降ると発電できませんよね。
変動が激しいのが欠点で、発電できない時間帯は、火力発電などに頼らざるを得ないのが現状です。
蓄電池に電力を大量にためておくことができれば、変動は抑えられ、再生可能エネルギーを増やすことにつながるんです。
産業を変える可能性ってそういうことなんですね。
でもこの分野、日本企業は強いんじゃないんですか?
野中記者

確かに日本のお家芸といえると思います。
リチウムイオン電池の量産化は1991年にソニーが世界に先駆けて成功したんです。
すごい!世界初ですか。
野中記者

日本の電池メーカーは技術力が高く、かつては市場で高いシェアを占めていました。
2019年、ノーベル化学賞をとった吉野彰さんはリチウムイオン電池の開発に貢献したことが評価されての名誉ある受賞でした。
しかし、世界的な需要の高まりで市場が拡大すると、中国や韓国のメーカーが台頭し競争が激化しています。
経済産業省によると、自動車用のリチウムイオン電池では6年前の2015年に世界で40%のシェアだったのが、去年・2020年にはおよそ半分の21%に低下しているんです。
蓄電池の重要性は高まっているのに、日本の競争力は落ちていると言わざるを得ません。
なぜ、こんなにシェアが低下してしまったのでしょうか?
野中記者
ひと言で言えば「ライバルの猛追」ということでしょうね。
中国は蓄電池を使うEVの市場が急拡大していて、電池メーカーも技術力を磨き、製品供給をしています。
市場あるところにビジネスが生まれ、技術開発が進むという好循環になっています。
さらに国の対応も大きく異なっています。
政府の電池支援策がほかの国は充実しているんですか?
野中記者
中国は2016年から2020年の間にEVなどにおよそ5600億円の補助金を拠出しています。
韓国は2030年に蓄電池の分野で世界トップを目指す「Kーバッテリー発展戦略」を国として掲げ、研究開発投資に税額控除するとしています。
アメリカは電池や原材料の生産などにおよそ6600億円を支援を行うことにしています。
日本政府の対応は?
野中記者

出遅れは否めないですね。
ようやくグリーンイノベーション基金を立ち上げ、次世代の蓄電池の研究開発に1200億円あまりを資金支援するとしています。
経済産業省に電池の専門部署「電池産業室」ができたのはことし7月です。
半導体のニュースで耳にしたストーリーと同じように聞こえます。
野中記者
経済産業省としても危機感を持っています。
蓄電池の重要な原材料である黒鉛の92%は中国からの輸入に頼っていて、経済安全保障の観点からも特定の国に依存しない体制づくりが大きな課題です。
このため、11月18日新たに電池メーカーや材料メーカー、有識者などによる官民協議会を立ち上げました。
どんなことを議論していくのでしょうか。
野中記者
大きなテーマの1つがいまのリチウムイオン蓄電池にかわる次世代の電池=全固体リチウム蓄電池です。
電気をためたり放出したりするのに必要な「電解質」が液体ではなく固体で、液漏れや発火など安全上のリスクが少ないほか、出力も、リチウムイオン電池より高めることが可能だとされています。
夢の電池ですね。
野中記者
はい。
この電池の開発は、トヨタ自動車など日本のメーカーが開発で先行していると言われています。
経済産業省は、こうした技術開発や生産能力の増強への大規模な投資や、原料となる鉱物資源の確保のあり方などについて議論を進め、来年5月ごろに新たな戦略を公表することにしています。
脱炭素社会の私たちの暮らしを変える蓄電地産業をどうもり立てていくのか注目していきたいと思います。
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