NEW2021年11月11日

世界と日本の森林どうなっているの?

イギリスで開かれている気候変動対策を話し合う国連の会議「COP26」。10日、議長国イギリスから各国が採択を目指す成果文書の議長案が示され、森林の保護や修復を確認する文言が盛り込まれました。脱炭素に森林の存在はもちろん欠かせませんが、そもそもからですが、世界と日本の森林どうなっているのでしょうか。農林水産省を担当する川瀬直子記者、教えて!

すごく初歩的なところから。
植物は二酸化炭素を吸収することはもちろん知っていますが、いったいどれぐらい吸収するんでしょうか。

川瀬記者

林野庁によると、適切に手入れされている樹齢40年程度のスギの人工林1ヘクタール(100メートル×100メートルの広さですが)で1年間に吸収する二酸化炭素の量は、およそ8.8トンと推定されるということです。

一方、1世帯から1年間に排出される二酸化炭素の量は、4.4トン程度なので1ヘクタールのスギの人工林でおよそ2世帯分ということになります。

たった2世帯ですか?

川瀬記者

少ないと思うかもしれませんが、10ヘクタールなら20世帯、100ヘクタールなら200世帯分となります。

世界の森林の状況はどうなっているのでしょうか?

川瀬記者

FAO=国際連合食糧農業機関によると、世界の森林のおよそ45%を占める南米やアフリカなどの熱帯では、大幅な減少が続いていて、世界全体では、この30年で4%減っています。

パーム油や大豆、酪農などの大規模農業や自給自足の農業をする土地を確保するために切り開かれたことが主な要因です。

こうした農業によるものが熱帯林が減少している原因の7割を占めるというデータもFAOは示しています。

また、木材にするために、木を違法に伐採するということも後を絶ちません。

日本も森が多い国ですよね。日本の事情はどうなのでしょうか。

川瀬記者

日本は、国土のおよそ7割が森林です。

その面積は、30年間ほとんど変わっていません。

ただ、林野庁によりますと、森林の多くが戦後植えられた人工林で、植えられて50年以上たっているものが半数以上を占めています。

古いといけないのでしょうか?

川瀬記者

実は木は高齢になると、二酸化炭素の吸収量が減るんです。

このため、人工林では間伐を行って森を適切に管理しながら、成熟した木は建造物などに使って、代わりに新しい木を植える取り組みをすすめることが重要なんです。

二酸化炭素の吸収という観点では世代交代が必要なんですね。

川瀬記者

そうなんです。

また、林野庁では普通の木よりも成長が早い「エリートツリー」と呼ばれる木を植えることで二酸化炭素の吸収量を増やすことも推奨しています。

COP26では日本政府も確か森林保護に資金を拠出するという発表がありましたよね。

川瀬記者

はい。
岸田総理大臣は森林分野に2億4000万ドルを拠出すると、COP26の首脳会合で発表しました。

日本はこれまでにも、木を切って痩せた土地に再び木を植える技術の支援など、世界の森林保護に取り組んできました。

このほかパナマでは違法に木が切られることがないように、木にチップをつけ、伐採された場所や種類、その後の流通経路などを追跡できる技術を国際機関を通じて資金面で援助していたり、「治山」といって、日本が長年培ってきた災害が起こりにくいように森林を管理する方法を東南アジアに伝えたりもしています。

こうした取り組みを今後、さらに強化していくことになります。

森を守るために、私たちにできることは?

川瀬記者

森林破壊につながる方法で作られた製品を買わない、ということがいちばんですが、原料がどうやって作られたかを消費者自身が調べるのは困難です。

そこで、1つの手段として、森林破壊をせずに環境に配慮した方法で生産された製品を認証する仕組みが誕生しています。

例えば、パーム油ではRSPO=持続可能なパーム油のための円卓会議という組織が認証制度を設けていて、世界の多くの企業が参加しています。

マークを見て、どのようにつくられたか確認してからものを買うことも大事なんですね。

川瀬記者

そうですね。
いろいろな製品が作られた背景について思いをめぐらせることも森林保全につながっていきます。

小さな一歩ですが、みんなで行えば大きな一歩になると思います。