NEW2021年10月27日

「スマホでの送金手数料 “ことら”が安くする?」

私たちが銀行口座からお金を送る際の手数料。大手行のATM=現金自動預け払い機で他行の口座に振り込む場合、数百円の手数料がかかっていますよね。ただ、“ことら”という新しいプロジェクトが実現すれば、送金にかかる手数料がもっと安くなりそうです。
「ニュース シブ5時」キャスターの永野解説委員が解説します。

阿部アナ

“ことら”って、子どもの虎かなにかですか?

永野解説委員

いえ、そうではありません(笑)。

「小口トランスファー(transfer)」の略称、つまり少額の送金のことで、スマホを通じた個人間の送金手数料を安くするプロジェクトの名前でもあります。

ちなみに10月から、ATMやインターネットバンキングでの振込手数料が安くなったことは、すでにご存じの方も多いと思いますが、今回はこれとはまた別の話です。

久保田アナ

どういうことでしょう?

永野解説委員

プロジェクトを担うのは、大手銀行です。

ことし7月、三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンクに加えて、りそな、埼玉りそなの計5行が新会社を設立しました。

1回当たり10万円以下の送金を安くできる新サービスを、2022年度から提供できるよう、準備を進めています。

阿部アナ

どうやって安くするんですか?

永野解説委員

今の送金システムと比べながら仕組みを説明します。

私たちがほかの銀行にお金を振り込む際、今は主に、銀行どうしを結ぶ「全銀システム」というネットワークを使っています。

このシステムは比較的大がかりで、送金にかかる手数料は、この9月まで実に40年以上にわたって固定されていました。

銀行は送金にかかる手数料をもとに私たちの振込手数料を決めますので、結果的に振込手数料が高いままになっていると、公正取引委員会からも指摘されていたんです。

久保田アナ

確かに、お金を振り込むときは負担感がありました。

永野解説委員

ですよね。

10月1日から全銀システムでの送金の手数料が引き下げられたことで、各行の振込手数料も次々と値下げされています。

ある大手行では、ATMでキャッシュカードを使って3万円以上振り込む場合、9月まで税込み440円だった手数料を、10月以降は330円に値下げしました。

阿部アナ

それでも330円かかるわけですね。

永野解説委員

そうなんです。

一方の「ことら」のシステムは、全銀システムとは別物です。

個人のスマホのアプリを通じて、10万円以下のお金をもっと安く、できれば無料に近い手数料で、ほかの口座に送れるようにすることを目指しています。

大手行、地方銀行、信用金庫のほか、スマホ決済の事業者などと、最新技術を用いた簡易なネットワークで結ぼうとしています。

阿部アナ

安くなるのはありがたいですね。

永野解説委員

そうですよね。

また、送金の際は、ATMなどのように相手の口座番号を入力するのではなく、携帯電話の番号やメールアドレスなどの入力でできるようにするということです。

今も、同じスマホ決済どうしであれば無料でお金のやり取りができるサービスが展開されていますが、将来的には例えば「○○ペイ」から「△△ペイ」へという、異なるスマホ決済への送金も可能にしたいとしています。

久保田アナ

お金の流れが大きく変わりそうですね。

永野解説委員

例えば、グループで食事をして幹事にスマホで代金を送ったり、コロナ禍でなかなか孫と会えないおじいさん、おばあさんがお年玉を送ったり。

あるいは、遠くの友人に結婚や出産のお祝い金を送るなど、いろんな使い方が想定されています。

こうした少額の送金は市場規模が年間で20兆円程度に上るという見方もあり、より手軽にお金を送りたいというニーズを取り込むのがプロジェクトのねらいです。

キャッシュレスの流れを加速させ、新たなビジネスを生み出すきっかけにしたいという銀行界の思惑もありそうです。

阿部アナ

でも、銀行にとって手数料収入が減るのは、よくないことでは?

永野解説委員

確かに、超低金利時代の中、振込手数料は金融機関の貴重な収入源になっています。

ただ、ことらプロジェクトの関係者は、サービスの導入が、金融機関にとっては現金を管理するための経費の削減にもつながると説明しています。

アメリカでは、スマホを通じて少額のお金を無料で送金できるサービスが行われていますが、お金をやり取りするために必要な銀行の業務負担が減るなどした結果、銀行の収支は全体で見ると改善したということです。

阿部アナ

サービス開始は来年度ということでしたね?

永野解説委員

はい。

具体的には決まっていませんが、来年度の上半期の開始を目指しています。

手軽に、そして何よりも安全に送金ができるようにしてもらいたいですし、高齢者にとっても分かりやすくして、幅広い世代の利用者が利便性を実感できるサービスになるよう期待したいですね。