QRコード決済有料化へ どうなる? 日本のキャッシュレス化

スマートフォンを使ったQRコード決済大手の「PayPay」がこれまで無料にしていた中小の加盟店向けの決済手数料を有料にすると発表しました。スーパー、コンビニから商店街にあるお店までスマホ決済は広がっていますが、今回の有料化はどういう意味があるの?
そして利用している私たちにはどんな関係がある?
情報通信業界の取材を担当する加藤誠記者 教えて!
QRコード決済の加盟店の手数料を有料化するってどういうこと?
加藤記者
たとえばクレジットカードを利用できるお店は多いですよね。カードのシステムを導入しているお店側にとっては『現金を持ち合わせていなくても代金を決済できる』という利便性が生まれるため、集客につながります。その分、カード会社に決済金額の一定割合を「手数料」として支払っています。
では、QRコード決済の「PayPay」はどうだったか。

これまで売り上げが10億円未満の中小の事業者はこの手数料が無料でした。これをことし10月からは有料にすると発表したのです。
2018年10月にQRコード決済に参入。この分野ではほかの大手よりも遅れて参入しましたが、加盟店には「手数料ゼロ」を、利用者には「100億円還元キャンペーン」などといった大規模なポイント還元策を打ち出し、一気に拡大させてきました。
さらに消費税率引き上げを受けた政府のポイント還元事業もあり、使える場所は340万か所。サービス登録者数は4100万人(8月19日現在)に増えて最大手となりました。
ただ、会社の昨年度の営業損益は700億円を超える大きな赤字でした。
本来であれば加盟店からの手数料でポイントやシステム費用などをまかなうところですが、いわば赤字覚悟で加盟店、利用者の拡大を優先してきたのです。
今回の手数料有料化で「採算」を重視する方向に転換するねらいなんです。
「PayPay」以外の会社はどうなの?
加藤記者
主なQRコード決済の事業者の「LINE Pay」「d払い」「au PAY」「メルペイ」はことし10月からそろって一律有料化にする方針です。

ちなみに、手数料は一般的なクレジットカードの手数料よりは安い水準だとしています。
安いといっても「無料」の看板がなくなれば、離れてしまう加盟店もいるのでは?スマホ決済を頻繁に利用する人にとっては、加盟店が少なくなるのはちょっと…。
加藤記者
1%~2%台が多いとはいえ、手数料は中小の事業者にとっては負担に感じるかもしれません。今回の有料化をどう受け止めているのか、都内の加盟店に直接聞いてみました。
- 「QRコード決済をことし3月に導入しました。花の値段を安く抑えて売っていたので、もともと現金の支払いだけにしていたが、わざわざ現金をおろしに行く人もいたので、近所の店舗でも使い始めたのをきっかけに導入しました。できれば無料のままがいいのですが、新規のお客も増えたので続けると思います」(生花店の女性・渋谷区)
- 「現金だけの取り扱いだったが『QRコード決済は使えないんですか?』と尋ねられることが増えたので、1年ほど前にさまざまなキャッシュレスサービスを使えるシステムを導入しました。ただ、手数料はお店負担ですし、価格にも転嫁できないのが苦しい。さらに緊急事態宣言下でお酒も提供できず、とても辛い状況です。現金を持っていない人が増えているので、時代にあわせていくのはしかたないのでしょうか」(飲食店の女性・江東区)
- 「政府のポイント還元策があった去年よりも、QRコード決済の利用は落ち着いてきている。手数料がこれまでゼロだったが、有料化となると考えてしまいますね」(自転車販売店の男性・墨田区)
加盟店側はQRコードのメリットは一定程度感じているようです。
ただ、今はコロナ禍です。感染が急拡大している地域の飲食店などでは、営業時間を短くすることを余儀なくされたり、感染防止の対策費用がかかったりと、負担が少なくないだけに、手数料の有料化はあまり歓迎していない様子でした。
採算を重視するため手数料を有料にしても、加盟店が離れていっては元も子もありません。会社にとっては“手数料にみあうメリット”を打ち出すことができるのかがポイントになってきそうです。
私たち利用する側にとって、今回の加盟店の手数料有料化は関係してくるの?
加藤記者
これからなので詳しくわかりません。
取材をしてみると、QRコード決済の会社は、手数料をさらに引き下げることで加盟店を増やす、あるいは加盟店をつなぎとめるという「値下げ競争」がこれから起きることを一定程度、想定しているようです。
ただ、それよりも店舗の情報を広く発信することや、クーポンを企画するなど、店舗の集客を手助けするような「経営支援の競争」が起きるのではないかと私は思います。
そうなれば、私たちにとっても、ただQRコードで決済するだけでなく、今まで知らなかったお店の情報をスマホで得ることができるなど、新しいサービスを受けられる場面が出てくるかもしれません。

また、スマホ決済が普及する中国の「アリペイ」では、決済を利用したユーザーに金融機関からの融資をはじめとした金融サービスを紹介しています。国内のQRコード決済の会社も決済以外にさまざまなサービスを展開、連携していますが、有料化で開発・投資の余力が生まれる分、決済以外のサービスが今よりも充実していく可能性もあります。
日本のキャッシュレス決済の比率は30%程度。90%を超える韓国、50%台後半のイギリスをはじめ、主要国は40%から60%台で、まだまだ日本は下回っています。
加盟店にたしかなメリットを感じてもらいながら、私たち消費者の利便性をどう高めていくか。今回の有料化の動きは日本にキャッシュレス化が根付くかどうかの大きな分岐点となるかもしれません。
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