NEW2021年08月05日

高速道路はいつまで有料? 遠のく“無料化”

私たちの生活に身近な高速道路。人々の暮らしや経済活動を支える社会インフラです。その高速道路は、今は「有料」でも将来は「無料」になるはずなのですが、有識者で作る国土交通省の作業部会が“待った”をかけました。一体どうして?今後どうなる?永野解説委員が解説します。

“待った”をかけたって、どういうことですか?

永野解説委員

高速道路の有料化を終える時期を延長すべきじゃないかと、有識者が提言したんです。

高速道路のあり方を議論している、国土交通省の社会資本整備審議会の作業部会(国土幹線道路部会)が4日、中間答申として公表しました。

全国の高速道路は、建設費などの借金を料金収入によって返すことになっていて、今の法律では、高速道路の有料化と借金の返済の期限を2065年までと定めています。

その後は利用者に無料開放することが原則なのですが、中間答申は有料期限の延長に向けた具体的な検討を国土交通省に求めました。

どんな理由があるのでしょうか?

永野解説委員

ひと言で言えば「財源不足」です。

高速道路は、日本の経済成長を支えてきましたが、供用から30年以上の区間が半分を超えるなど、老朽化が進んでいます。

2012年には、山梨県にある中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し、9人が死亡する事故が起きました。

この事故を受けた点検の結果、修繕などの対策が必要と判定されたのは、全国約7万3000か所。

重大な損傷の発見も相次いだということです。

さらに、中間答申は、将来的に自動運転といった新技術への対応なども予想される中、高速道路の維持や更新に使う財源が確保されていないと指摘し、今の制度は「大幅な見直しが避けられない」と結論づけたんです。

有料期限を延長するとして、一体いつまでにするんですか?

永野解説委員

それがはっきりしていないんです。

中間答申は「長期的な見通しを的確に立てることが難しい」として、有料期限を具体的にいつまで延ばすべきかには触れていません。

“高速道路無料化”の旗を降ろしたようにも見えますが、国土交通省は「借金をすべて返したあとで無料開放する原則は変わらない」という立場で、「もし原則を変える必要があれば、そのとき改めて議論する」としています。

中間答申を受けて、今後はどうなるのでしょうか?

永野解説委員

国土交通省は、中間答申の内容に沿って、法改正も含めた検討に入ります。

ただ、高速道路の有料期限はこれまでも繰り返し先送りされてきただけに、「またか」と思う人も多いのではないでしょうか。

1970年代、有料期限は「およそ30年後」とされていましたが、2005年の道路公団民営化の際に「2050年まで」となり、その後、2014年に「2065年まで」に延長されました。

こうした経緯を念頭に、中間答申は「将来、高速道路は無料になるという説明に対する不信感が高まっている」と指摘。

今後、有料期限延長の是非をめぐって、さまざまな議論を呼びそうです。

それともう1つ、中間答申には、高速道路の渋滞緩和に向け、新たな料金制度の導入が盛り込まれたことも押さえておきたいと思います。

東京オリンピック・パラリンピックに伴い、首都高速道路では、時間帯によって料金を上げ下げする料金制度が取り入れられています。

中間答申では、これを参考にしながら、まずは渋滞が起きやすい大都市圏を対象に時間帯や曜日を指定した形での検討を求め、将来は一定時間ごとに機動的に変動する仕組みの導入を目指すべきだと指摘しました。

国土交通省が、中間答申を踏まえ、有料期限や料金制度について利用者が納得できる結論を導き出せるかどうか、今後の検討状況をよく見ていく必要がありそうですね。