洋上風力発電なぜ注目?
政府が目指す2050年の脱炭素社会。その実現には、再生可能エネルギーの導入の拡大が不可欠です。その中でも、特に注目が集まっているのが「洋上風力発電」です。なぜ今、注目されているのでしょうか。教えて西園興起記者!
「洋上風力発電」ってどういうものですか?
西園記者
海上に風車を設置して発電するのが「洋上風力発電」です。現在、国内では海岸沿いの平地など陸上に風車を設置するケースがほとんどですが、海外ではヨーロッパを中心に普及が進んでいます。
洋上風力発電に注目が集まっているのはどうして?
西園記者
海が最後のフロンティアだからです。
再生可能エネルギーは、太陽光や陸上での風力発電を中心に普及が進みました。しかし日本の国土は山が多く、さらに大規模に導入しようとすると、適した土地は限られ、周辺の環境への配慮も必要となります。
一方、海は障害物もなく、安定して強い風が吹きます。海に囲まれた日本にとっては、洋上風力発電は大きな可能性を秘めた再生可能エネルギーだと言えます。
いま、日本ではどのくらい洋上風力発電が行われているの?
西園記者
現在、国内には洋上風力発電の設備は、長崎県五島市沖や千葉県銚子市沖などに合わせて5基あり、設備容量は1.4万キロワット程度です。
一方、イギリスでは2200基以上、ドイツではおよそ1500基ありますから、ヨーロッパに比べると圧倒的な差があります。
そこで、政府は、去年12月、洋上風力発電の設備容量を2040年までに3000万から4500万キロワットに増やす目標を決めました。
大型の火力発電所に換算すると、30基から45基分に相当し、現在の実に2000倍以上になる計算です。
かなり野心的な目標ですね。政府は目標を実現できるのでしょうか?
西園記者
課題は少なくありません。
洋上風力発電は海の上に風車を設置するので、漁業者の同意が欠かせません。
また、日本は先行して進むヨーロッパと比べると遠浅の海が少ないため、大量に導入するには、風車の土台を海底に固定する「着床式」だけでなく、海に浮かべる「浮体式」の技術開発も求められます。
さらに、整備にあたって専用の船も必要で、陸上での風力発電と比べると、維持費もかかります。
海の上で発電した電力を陸地に送るための新たな送電網も整備しなければなりません。
課題が山積ですね。どうやって実現を進めていくのでしょうか?
西園記者
政府は、秋田県、千葉県、長崎県の沖合にある合わせて5つの区域を「促進区域」に指定して洋上風力発電の整備を支援しています。公募で事業者に選ばれると30年間、その海域を使うことができます。
洋上風力は、部品の数が数万点にのぼり、関連産業も多いことから新たな成長産業としても期待されています。
政府としては、野心的とも言える目標を立てて、投資を呼び込むことで普及を進めていきたいとしています。
ことし2月、東芝が洋上風力発電の分野でアメリカのGE=ゼネラル・エレクトリックと提携する方向で交渉を進めていることが明らかになりました。
このほか、商社やゼネコン、さらには海外メーカーも日本での洋上風力発電事業に関心を持っています。洋上風力が脱炭素の切り札となるのか、注目したいですね。
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