家族が認知症に… いざという時のお金の話

「将来、自分や家族が認知症になったらどうしよう」
高齢化が進む中、誰もが一度は考えたことがあるかと思います。食事やトイレなど身の回りの生活のほかに、大きな問題になりやすいのがお金です。預金の引き出しは本人の意思確認が必要ですが、認知症などで自分で引き出せなくなった場合、家族はどう対応すればいいのでしょうか。全国銀行協会はこのほど、こうした時の対応についての新たな指針をまとめました。金融担当の宮本雄太郎記者に解説してもらいます。
お金の話って家族でもしづらいですよね。
宮本記者

「人生100年時代」と言われて久しいですが、厚生労働省の推計では、2025年に認知症の人は約700万人。高齢者の5人に1人が認知症と言われていて、その数は年々増える傾向にあります。
症状が進行するにつれて医療費や介護費はかさみ、家族も物理的な負担だけでなく経済的な負担も大きな悩みになっています。
家族で医療費や介護費がまかなえればいいけど…
宮本記者
みんながそうできるわけではないですよね。
本人の預金や貯金に頼らざるをえないときも出てくると思いますが、本人の代わりに家族が預金を引き出すことは、極めて難しいのが現状です。
悪用を防ぐため、本人以外の引き出しができないのが原則だからです。
でも、認知症が進んでしまったら引き出せなくなることもありますよね。
宮本記者
はい。
なので、国は「成年後見制度」といって、不動産や預貯金など財産管理の代理人を定める制度を設けています。
この制度で家庭裁判所から代理人と定められれば、本人の意思が確認できない場合も預金を引き出すことができます。
成年後見制度を利用する人は増えているのですか?
宮本記者
あまり利用が進んでいません。裁判所に申し立てをしなければいけないですし、医師が症状を確認するための鑑定費用も必要で、手続きに数か月かかることもあるからです。

一方で、認知症の人の増加にともなって、各地の銀行で預金を引き出せなくなる問題も相次いでいました。そこで、全国銀行協会が対応の指針を新しく設けたのです。
どんな指針ですか?
宮本記者
法的な代理人にならなくても、親族らが本人に代わって預金を引き出せるようにします。
ただし、「成年後見制度の利用を促す」という原則は変えていません。
手続きが間に合わないなどの例外的な場合に限って、家族や親族も引き出せるように対応を柔軟化します。
便利になるのでしょうか?
宮本記者
もちろん無条件ではありません。
まず、本人が判断能力を失っていることを銀行が確認する必要があります。
医師の診断書や担当医に聞き取りを行うなどして、本当に本人の意思が示せないか確認します。必要なら銀行員が面談も行うということです。
次に、預金の使いみちです。
医療費や介護施設の入居費など、本人の利益になることが明らかな場合に限るとしています。具体的な対応は、それぞれの銀行が考えることになりますが、本人の口座から病院や介護施設などに直接振り込むパターンなどが想定されています。
本人にとっても家族にとっても切実な問題ですね。
宮本記者
2030年には認知症の人が持つ金融資産が215兆円にも上るという試算(第一生命経済研究所)もあり、誰もが直面する可能性のある問題です。
いざという時に困らないように、元気なうちから家族でお金の話をしておくのが大切ですね。
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