クルマが生産できない! その意外な理由とは?

「クルマの生産、減らします」
2021年が明けて間もない1月初旬、日本の自動車メーカーが次々と減産、つまり計画よりも生産台数を減らす方針を明らかにしました。自動車といえば、新型コロナウイルスの影響で一時、売れ行きが記録的に落ち込みましたが、去年の夏以降は一転、急速に持ち直し経済回復を引っ張ってきた存在。それなのにどうして生産を減らすのか?その理由として各社があげるのが“半導体不足”です。産業のコメとも言われる半導体。いったい何が起きているの!?
自動車メーカーが減産するというニュース、何度か目にしました。何があったんですか。
年明け以降、相次いで減産が表面化しました。それまでは世界的な販売回復に伴って、生産も好調だっただけに意外感がありました。

海外メーカーでもドイツのフォルクスワーゲンが去年12月に北米やヨーロッパでの生産を調整する、つまり計画より減らすと発表しています。
この各メーカーの減産に共通しているのが、「半導体が足りない」という理由なんです。
スマートフォンやパソコンをつくっているメーカーならわかるのですが、自動車メーカーで半導体というのも意外です。
実は自動車には多くの半導体が使われているんです。
例えば、マイコンと呼ばれる半導体は、さまざまな電子機器の動きを制御する“頭脳”のような役割を担っていて、車種によって異なりますが一般的な乗用車でおよそ30個、高級車になるとおよそ80個も搭載されていると言われます。

エンジンや変速機、ハンドルをはじめ、窓、ワイパー、ライト、サスペンション…。
そして最近ではアクセルとブレーキの踏み間違いを防いだり車線をはみ出さないように走ったりする高度な機能がついた車も増え、ますます多くの半導体が搭載されるようになりました。まさに自動車は“走る半導体”となっているんです。
ある自動車メーカーの関係者は「部品メーカーから部品が入ってこない。半導体が調達できないので部品をつくれないようだ」と話しています。
どうして半導体が品薄になっているの?
今のところ、ほかの業界では半導体が不足している状況にはなっていません。自動車の需要が比較的短期間に急激に変動したことが背景にあるとみられます。
まず去年の春ごろ、新型コロナウイルスの影響で世界中で販売が落ち込みました。
ところが夏ごろからは急速に持ち直し、メーカーによっては月単位の生産が過去最高となったところもあったほどです。
こうした需要の急回復に対応しようと自動車メーカー、部品メーカーは生産ペースを大幅に引き上げたのですが、このペースに半導体メーカー側の増産が追いつかないという事態となっているんです。
半導体って、そんなに増産するのが難しいのでしょうか?
今の事態に至ったことについて、さまざまな指摘があります。

1 車の需要の回復ペースが“想定以上”
自動車・部品のメーカーが、これほど自動車の需要が急回復するとは予想しておらず、車用の半導体をつくるメーカー側もかなり慎重な計画を立てていた。できるだけ部品の在庫を持たずに効率的に自動車を生産する「ジャストインタイム」モデルの弱点でもある。(経済産業省の関係者)
2 車用の半導体はつくるのに時間がかかる
自動車に高い安全性が求められるのと同様、車用の半導体にも高い安全性が求められる。わずかな不具合も許されないため精密に作り込むほか、製造ラインや製品も細かくチェックする。ラインが正常に稼働し、製品を納品できるようになるまで数か月かかる場合がある。(車用半導体メーカーの関係者)
3 車用の半導体は後回し
台湾のTSMCなど『半導体受託生産メーカー』(ほかの半導体メーカーなどからの依頼を受けてさまざまな用途の製品をつくる。受託専門の半導体メーカー)にも「車用半導体をつくってほしい」という依頼が増えた。しかし、こうしたメーカーはスマホやゲーム機、パソコン向けの最先端の半導体製造に追われている。車用の半導体は価格が安く利益も少ないとして、増産を後回しにしているのではないか。(半導体業界に詳しい金融関係者)
4 米中対立の影響も
受託生産メーカーの1つで、中国のSMICが去年、アメリカ政府から制裁措置を受けた。これをきっかけに台湾のTSMCなどへ生産の発注が殺到。半導体の生産は一段と混み合う状態となり、価格が安い車用半導体への対応をますます後回しにしている。(半導体受託生産メーカーの関係者)
いろんな要因が重なり合っているんですね。車の半導体不足はいつごろ解消するんですか?
車用の半導体の品薄感が解消するにはあと3か月かかるという人もいれば、ことしの夏まで解消しないという慎重な見方もありますが、いずれにしてもすぐに解消するという訳にはいかなそうです。
半導体が“産業のコメ”と呼ばれるようになって久しいですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、極めて微妙な需給バランスの上に立っていることが浮き彫りになりました。
脱炭素社会の実現や、DX=デジタルトランスフォーメーションの流れの中で、半導体は一層重要性が増していくだけに、より安定的な供給体制を構築していくことが課題となります。
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