NEW2020年10月29日

安くなる?携帯料金

政府からの値下げ要請にこたえる形で、KDDIとソフトバンクが同じ日に新たな料金プランを発表しました。いずれも主力のブランドではなく、別ブランドでデータ通信の容量が大きいプランを追加するというものでした。ほぼ同じタイミングで政府も値下げに向けた政策をまとめた「アクション・プラン」を示しました。今後料金引き下げが広がるのか?経済部で情報通信業界を担当する根本幸太郎記者に聞きました。

KDDIとソフトバンクが発表した新たな料金プランって、どんなものなんですか?

根本記者

KDDIは、主力のauとは別ブランドで展開している「UQモバイル」で月額3980円(税抜き)のプランです。データ通信の容量は20GB(ギガバイト)で、通話オプションの料金や各種割り引きが含まれていない金額です。

auではデータ使用無制限のプラン(月額7650円)を用意している一方、UQで用意していたのは10GBまでなので、その間を埋める容量に対応したプランということになります。

会社では、最も安い500円の通話オプションをつけた場合には消費税を含めても月額5000円を下回ると説明していて、来年2月以降に導入する方向です。

ソフトバンクは、第2ブランドの「ワイモバイル」で、同じく20GBで月額4480円(税抜き)のプランです。このプランでは、1回当たり10分以内の国内通話は無料になります。

やはり、ソフトバンクの50GBの大容量プラン(月額7480円)と、ワイモバイルの14GBまでのプランの間に位置づけられるプランで、ことし12月下旬に導入されます。

政府は、海外では20GBで月額5000円を下回る国も多いなどと指摘していたので、両社の新プランは政府の要請にこたえたものと言えそうです。

いまある料金プランをそのまま引き下げるのではない、ということですか?

根本記者

そのとおりです。両社ともメインのブランドの料金はそのまま維持するので、通常イメージする「値下げ」とは言えません。

ただし、消費者にとっては料金プランの選択肢が増えることになります。現在大容量のプランを契約しているものの、実際にはそれほどデータを使っていないという人の場合は、新たなプランに乗り換えれば、料金負担が軽くなる可能性があります。

携帯電話会社としては、政府の要請にこたえなければならない一方、5Gの設備投資やサービスの開発に向けて、売り上げが大きく減少することは避けたいという立場で、今回の新たなプランをひねり出したものです。

値下げに向けた動きは、これで打ち止めになってしまうのですか?

根本記者

まだ最大手のNTTドコモが、対応策を示していません。親会社のNTTが、ドコモの株式の公開買い付けを実施している真っ最中なので、株価にも影響しかねない料金プランを打ち出しにくいという事情があるためですが、「さまざまな選択肢の中から対抗策を検討していく」としていて、ほかの2社のように割安な料金設定の別ブランドを展開するかどうかを含めて、今後の動きが注目されます。

それだけではありません。KDDIとソフトバンクの発表前日に、総務省が取りまとめた「アクション・プラン」の効果が今後出てくることが期待されます。

アクション・プランには、携帯電話会社どうしの価格競争を促すさまざまな政策が盛り込まれています。この中には、格安スマホ会社が大手の通信インフラを利用するにあたって支払っているデータ接続料を今年度から3年間で半分程度まで下げることが盛り込まれています。これにより、今後格安スマホのさらなる値下げにつながると見込まれます。

また、契約する携帯電話会社を変更する際のいわゆる乗り換え手数料が引き下げられます。いまは3000円となっていますが、ネットで手続きする場合は無料に、店頭でも1000円以下に引き下げることになります。

さらに、乗り換えに伴う時間や手間の削減につながる「eSIM」の普及、キャリアメールと呼ばれる携帯電話会社のドメインのメールアドレスの継続使用なども盛り込まれています。

通信業界に詳しいMM総研の横田英明 研究部長は「これまでは乗り換え手数料などの問題もあってユーザーは動かず、同じ会社との契約を長く続ける傾向が強かった。その壁が低くなり、ユーザーにとっては乗り換えやすい環境が生まれたことになる。通信事業者としては、ユーザーをつなぎ止めるためにより魅力的なプランを互いにけん制し合いながら打ち出さなければならないだろう。長い目でみれば携帯電話料金は大幅に下がる傾向となっていくのではないか」と指摘しています。