「第3のビール」 高くなる?

秋も深まりつつある10月1日、酒税法の改正で、ビール系飲料やワイン、日本酒などの税率が見直されました。この見直しで、「ビール」の税率が下がり、「第3のビール」の税率が上がるというのですが…。“家飲み”を楽しむ人が増える中で、ビールや、ビールに比べて割安なイメージのある第3のビールの値段がどうなるのか、ちょっと気になります。経済部で食品業界を担当する嶋井健太記者、教えて!
ビール系飲料の税率、何がどう変わるんですか?
嶋井記者
ビール系飲料は、「ビール」、「発泡酒」、「第3のビール」という3つに分類されます。
このうちビールは最も税率が高く、第3のビールは最も税率が低いため、割安感があり、家庭で飲む場合、第3のビールを選ぶ人も増えてきています。
しかし今回の見直しでは、高いビールの税率を少し下げ、低い第3のビールの税率を少し上げます。
具体的に、350ミリリットル換算で、9月まで、ビールの税率は77円、第3のビールの税率は28円と、49円も開きがあったんです。
今回の見直しで、ビールは7円の引き下げとなりますが、第3のビールは9.8円の引き上げ。
その結果、ビールの税率は70円、第3のビールの税率は37.8円となり、差が32.2円に縮まります。

実は税率の見直しは今後も段階的に行われ、2026年10月には、ビール、発泡酒、第3のビールの3種類すべての税率54.25円に一本化されるんです。
6年後にはみんな同じ税率になるんですか。なぜそんな見直しが?
嶋井記者
もともと「第3のビール」は、「ビール」の税率が適用されない新しいお酒としてビールメーカー各社が原料などを工夫して開発してきたもの。
見た目や味はビールのようですが、酒税法上はビールではなく、業界では「新ジャンル」と呼ばれています。
キリンの「本麒麟」、アサヒの「クリアアサヒ」、サントリーの「金麦」、サッポロの「ゴールドスター」が代表的な銘柄で、皆さんも実際に飲んだり、テレビのコマーシャルで目にしたりする機会も多いのではないでしょうか。
財務省の資料によると、ビールの課税数量は年々減少傾向。
一方で第3のビールは増加傾向にあります。

2005年度、ビールの課税数量は364万キロリットル。
第3のビールは115万キロリットルでした。
これが2018年度は、ビールが248万キロリットル、第3のビールが203万キロリットルで、ほぼ並んでいます。
政府は、税率に差があることがメーカーの商品開発に影響を与えているとして、段階的に税率の見直しを進めているのです。
なるほど、税率によって価格が平準化されていくのでしょうか。割安な第3のビールを楽しんでいる人たちにとっては、財布への影響も大きそうですが。
嶋井記者
酒税は工場から出荷された段階で課税されます。
実際に店頭での小売価格や外食での販売価格が上がるか下がるかは、それぞれのお店が利益分もあわせて決めていきます。

実際、飲食店の事情は切実で、ビールの税率が下がるといっても、販売価格は下げないという声も聞かれます。
新型コロナウイルスの影響で客足が激減している中、これ以上売り上げを下げられないと値下げに踏み切れないところも少なくないのです。
一方で、値下げに踏み切ったところもあります。
ビアホールなどを全国展開する東京のある飲食チェーンは、10月1日から、10円から30円の値下げに踏み切りました。
代表的な銘柄の生ビールの中ジョッキは、価格が830円から820円に値下げ。
このチェーンも客足が半分ほどに落ち込んで、一部の店舗は閉店を余儀なくされている厳しい状況ですが、担当者は「この厳しい状況の中で、数少ない明るい話題である減税による値下げをアピールして、客足の回復につなげたい」と話していました。
また今回の税率の見直しで、ビールメーカーの中には、税率が下がるビール需要の伸びを見込んで新商品を投入するところもありますし、ある大手スーパーはプライベートブランドの新商品を発売します。
割高だったビールと、割安だった発泡酒や第3のビール。
税率が見直されることで、小売や外食、そして消費者の購買行動が、少しずつ変わっていくのかもしれません。
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