大戸屋とコロワイド なぜ対立?
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定食の「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングスに対して、今、焼き肉チェーンの「牛角」や居酒屋「甘太郎」を運営する外食大手のコロワイドが敵対的TOBに乗り出しています。新型コロナウイルスの影響で、両社とも売り上げが大きく落ち込む中で、なぜ敵対的買収に発展しているのでしょうか。そして買収の行方はどうなるのか、経済部の仲沢啓記者、教えてください。
(※9月9日 最新の情報を追記して更新しました)
コロワイドと大戸屋ホールディングスの対立ってそもそもなぜ起きたの?
仲沢記者
自身のグループ傘下に加えたいコロワイドと、自力での経営改善を進めたい大戸屋との間で、もともと激しく対立していたんです。
大戸屋は、1958年に東京・池袋に「大戸屋食堂」として創業し、店内調理を売りにして定食業態を広げ、ことし3月末時点で国内外に463店舗を展開しています。
コロワイドは1963年に会社を設立、牛角やかっぱ寿司などの運営会社を積極的に買収し、規模を拡大させてきました。ことし3月末時点でグループ会社は40を数え、国内外に2665店舗を展開しています。
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対立のきっかけは、大戸屋ホールディングス創業者で社長の三森久実氏が2015年7月に急逝したことです。その後、当時常務を務めていた長男の三森智仁氏が、自身の処遇を巡って会社と対立し、2016年2月に辞任。そして、2019年10月に自身や家族が持つ株式18.67%をコロワイドに売却しました。これによりコロワイドは大戸屋の筆頭株主となります。
大戸屋は、メニューを値上げしたことなどが響いて、2019年2月以降、毎月の売り上げが前の年を下回る状況が続いています。筆頭株主のコロワイドは、業績改善を図ろうと、買収によるグループ傘下入りを提案しましたが、大戸屋側はこの提案を拒否しました。
このためコロワイドは、ことし4月に大戸屋に対し、経営陣の刷新を求める株主提案を行うと明らかにしました。12人の取締役候補者のうち7人をコロワイドの役員などとし、そのうちの1人は三森智仁氏です。提案が可決されれば大戸屋を子会社化し、食材の共同調達などでコスト削減ができるとしています。
その株主提案は、どうなったんですか?
仲沢記者
大戸屋側は「提案のコスト削減策は味や鮮度などの品質低下を招き、深刻な客離れにつながる」として反対を表明しました。
その後、6月25日に開かれた株主総会では、およそ6割を占める個人株主らの反対もあり、結局、提案は否決されました。
その2週間後の7月9日、コロワイドが大戸屋に対し、今度はTOB=株式の公開買い付けに踏み切ると発表しました。株式の保有割合を19%から51%余りに引き上げて子会社化を目指すもので、買い付け総額は1株当たり3081円、最大で71億円余りになります。
このTOBに対しても大戸屋側は反対を表明。敵対的買収に発展することになりました。
8月14日、大戸屋は食品宅配大手の「オイシックス・ラ・大地」との業務提携を発表。グループ全体で会員数が30万人を超えるオイシックスとの提携で、今後、注力する自社の冷凍食品などを開発し、オイシックスのネット通販サイトでも販売する計画です。大戸屋としては、みずから経営改善を進める姿勢をほかの株主に示して、TOBに対抗しようとしていました。
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なぜコロワイドは、反対を押し切ってまで子会社化を図ろうとしているんでしょうか
仲沢記者
コロワイドは、2012年には焼き肉チェーンの「牛角」、2014年には回転ずしの「かっぱ寿司」、2016年にはハンバーガーチェーンの「フレッシュネスバーガー」を展開する会社をそれぞれ傘下に収め、次々と規模の拡大を図ってきました。ただ、これまでは敵対的買収ではありません。
8月13日に発表されたコロワイドのことし6月までの3か月間(第1四半期)の決算は、売り上げが304億円で前年同期に比べて48%減少し、最終的な損益は41億円の赤字に転落しました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休業などが響いた形です。
さらに、居酒屋業態やレストラン業態合わせて196店舗の閉店を決めるなど、グループが展開するブランドだけでは今後も苦しい状況が続くことが予想されます。
こうした中、大戸屋という定食チェーンを取り込み、知名度をいかして病院や介護施設への給食の提供といった新たな事業を行うことで、アフターコロナでの生き残りを図りたいと考えているんです。
一方の大戸屋も、第1四半期の決算では、売り上げが31億円と48%減少したほか、最終的な損益も15億円の赤字で、業績の改善が急務となっています。
<9月9日追記>
コロワイドは、9月9日、大戸屋ホールディングスに対して行っていた敵対的なTOB=株式の公開買い付けについて、目標を上回る株式の46.77%を取得し、TOBが成立したことを発表しました。
大戸屋ホールディングスは「結果については大変残念でご理解とご協力をいただいた多くの方々に申し訳ない結果と受け止めている。これからお客様や従業員のために最善を尽くしていく」としています。
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