NEW2020年07月13日

テレワークで何を着ればいいの?

新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークなど新しい働き方が広がりました。働き方が変わったことで、仕事で着る服の選び方にも変化が出ているようです。ファッションの現場で今、何が起きているのでしょうか。経済部の長野幸代記者に聞きます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、仕事で着る服が変わってきているんですか。

長野記者

自宅で仕事をすると外で人に会う機会が減るので、これまでビジネスの現場や通勤などで着ていたスーツの需要が大きく減りました。

こんなデータがあります。家庭が消費に使ったお金を調べた総務省の5月の家計調査。1人暮らしを除く世帯が消費に使った金額は、1世帯当たり25万2017円でした。物価の変動による影響を除いた実質で、前の年の同じ月を16.2%下回り、8か月連続の減少となりました。中でも「背広」が64.7%、「婦人用スラックス」が37.4%も減少しています。

ところが、大手デパートの関係者に話を聞いてみると、衣料品全体の売り上げは厳しいものの、シャツやブラウスといったトップスの売り上げは去年を上回るほど好調だというのです。

上半身に着る服だけが好調なんですか。

長野記者

テレワークだと、顔を合わせての打ち合わせは主にテレビ会議ですよね。そうなると、パソコンの画面に映るのは上半身だけなので、シャツやブラウスだけ新調できたら十分だという考えが出てきているようなんです。

東京にある洋服のレンタル会社では、「トップスだけレンタルしたい」という声がこのところ寄せられています。この会社では、利用者がサイトに登録した体型や好みのスタイルをもとに、プロのスタイリストが毎月3着を選んで自宅に届けるレンタルサービスを手がけていて、毎月9800円を支払うと、何度でも借りることができます。

先月の登録者数は、去年の同じ月と比べて40%増。また東京の別のレンタル会社でも、ことし5月の登録者数は去年と比べておよそ2倍に増えたそうです。

外出を控える動きが広がっていたことも影響しているのでしょうか。

長野記者

家にいながら気軽に新しい服を試せることも、確かに大きな要因ですね。

利用者からは「服を着替えることで気分転換したい」とか、「ずっと家の中で過ごすからこそ、明るい色の服を着たい」という声が寄せられているそうです。うまく使いこなせば購入するより洋服代を節約できることも背景にありそうです。

そうなるとデパートの売り上げにも影響が出そうですね。

長野記者

デパートでは一般的に婦人服、紳士服といった衣料品が、売り上げ全体のおよそ3割から4割を占めています。しかし、ことしは夏物のセールを行っても客足がかつての水準まで戻っていません。

このため、東京 銀座のあるデパートは今月15日からテレワークに適した服をそろえた特設コーナーを設け、新たな需要を取り込もうとしています。感染拡大を受けて、テレビ会議を利用するようになった人からどのような服を選べば印象がよくなるか、相談が増えたためです。

どのような服がテレワークに適した服として人気なのですか?

長野記者

ある大手デパートのファッションコンサルタントは、「細かいストライプやチェックなどの柄の服は避けたほうがいい」と話していました。画面越しでは目がチカチカしやすく相手の目を疲れさせてしまうおそれもあるからです。

また、暗い色を避け、壁などの背景と色合いが重ならないようにするのも大切です。このため、表情を明るく見せるため鮮やかな色合いや光沢感のある服が人気だそうです。また、ジャケットやカーディガンを羽織ると自宅でもフォーマルな印象を与えるということです。

一方、男性には着心地がよく、襟があって清潔な印象を与えるポロシャツが人気だということです。また、長時間座っていても疲れにくいストレッチ素材のズボンを選ぶ男性も多いということです。

一般的に景気が落ち込む時はファッションの需要も落ち込むと言われています。メーカーや小売業界にとっては、財布のひもが締まりがちな今こそ、働き方や生活スタイルの変化に合わせて消費者のニーズを掘り起こしていくことが新たなビジネスチャンスにつながりそうです。