NEW2020年07月09日

地域ごとに知りたい 新型コロナの影響

新型コロナウイルスは日本全国、各地に深刻な影響をもたらしています。しかし、その影響はけっして一様ではありません。コロナで各地の経済はいまどんな状況にあるのか。日銀のさくらレポートを読んでみてはどうでしょう。商店の経営者などさまざまな人の“生の声”を拾い集めた報告書。あなたが暮らす地域はどうなっているのか、金融担当の野上大輔記者が解説します。

日銀がまとめた報告書とは、どんなもの?

野上記者

全国各地にある日銀の支店が、3か月ごとに地域の経済統計を分析したり、企業や商店主などから「商売はどういう状況なのか」「景気をどう感じているか」を直接聞き取ったりしてまとめます。報告書の表紙がピンク色をしていることから、さくらレポートと呼ばれています。

聞き取り先は、観光地でお土産を販売する店、理髪店、旅館の経営者、カーディーラー、大手企業の工場長、観光団体の関係者…。さまざまな人の“生の声”をもとに景気を総合評価します。

同じ日銀の調査では、短観=企業短期経済観測調査が特に有名です。短観は景気がいいか悪いかを『数字』であらわしますが、さくらレポートは各地の支店が景気の現状を『ことば』で表現します。

新型コロナウイルスの影響が広がる各地の景気、どんな表現になっていると思いますか?
7月9日に公表された最新の判断はこちらです。

さくらレポートでは全国を9つの地域にわけて景気判断をしますが、すべての地域が3か月前の4月の報告から判断を引き下げました。

表現はまちまちですが、より厳しくなっているように読めますね。

野上記者

もっと細かく「個人消費」をどう判断しているかも地域別にみてみましょう。

北海道は「大幅に減少」なのに対して、北陸や東海、四国では「持ち直し」。違いが出てきましたね。どうしてなんですか。

野上記者

地域の主力産業を見てみると、表現に違いが出た背景が見えてくると思います。まず北海道はなんといっても観光が主要産業です。韓国や中国などインバウンドの恩恵を多く受けてきた北海道にとっては、かなりの痛手となっています。

ふだんは観光客でにぎわう洞爺湖町の温泉街も…(5月25日)

さくらレポートにある“生の声”をみても…

「緊急事態宣言解除後も宿泊予約はまったく回復してこない」(札幌)
「政府の観光支援策に期待したいが、効果を実感できるのは需要期の7月から8月を過ぎてからになってしまうのではないか」(函館)

厳しさが伝わってきます。

一方、東海はトヨタ自動車に代表されるように自動車産業が盛んです。中国、アメリカ、ヨーロッパと海外で経済活動が再開するのに伴って、自動車関連のメ-カーや機械メーカーではそうした国の工場への輸出や受注が回復しているといいます。

「対中国の輸出は回復基調にある」(名古屋)
「大幅な減産を行ってきたが、足もとは増産に転じつつあり、協力会社への発注を増やし始めている」(名古屋)

生産の復調がそこで働く人の消費意欲にも影響していると考えられます。

一口に厳しいといっても、細かく見ていくとまだら模様なんですね。この先の景気はどうなるんでしょうか?

野上記者

各支店長の共同記者会見 福岡(左上) 札幌(右上) 名古屋

支店長会議にあわせて大阪支店、名古屋支店、福岡支店、札幌支店の4つの支店の支店長がいつも会見をします。これから各地の景気はどうなるのか。今回4人の支店長が異口同音に挙げたのは「今後の感染の広がり方次第」という点です。

支店長会議が開かれた9日も、東京で感染が新たに確認された人の数は224人とこれまでで最も多くなりました。

名古屋支店の清水季子支店長も会見では「感染の状況が厳しくなってくると、不確実性が高まる。改善の動きはこれからも続くと見ているが(感染が再び広がることを懸念して)抑制的なものになっている」と慎重な見方を示しました。

景気の動向をいつも注意深くみている日銀の人たちにとっても、新型コロナウイルスの影響で、経済はかつてないほど見通しにくい状況になっていると言えそうですね。