NEW2020年06月30日

キャッシュレス還元、どうだった?

6月30日で終了の「キャッシュレス決済のポイント還元」。去年10月の消費税率引き上げにともなって、縮小が懸念される消費を下支えするとともに、海外と比べ低いとされるキャッシュレス利用を増やすために導入されましたが、果たしてその効果はあったのでしょうか?経済産業省でキャッシュレス政策の取材を担当する永田真澄記者、教えて!

去年10月以降、町のあちこちで、この制度に参加するマークを掲げた店舗を見かけました。参加する店舗は多かったようですが、ねらいどおりの効果はあったのですか?

永田記者

確かにキャッシュレス決済を導入する店舗は増えました。参加した店舗は115万店。政府の当初の想定の倍以上で、対象となり得る店の6割近くにのぼりました。

経済産業省が参加店舗などを対象に5月に実施したアンケート調査によると、制度の終了後も参加店舗の9割が引き続きキャッシュレス決済を継続するとしています。

ポイント還元の恩恵がなくなる消費者も8割がキャッシュレスの利用を続けると回答しています。消費者への還元額も当初の予想を大きく上回っていることなどから、政府としては消費の下支えやキャッシュレスの普及に一定の効果があったとしています。

すると、今後も中小の店舗を含めてキャッシュレスがさらに広がっていきそうということですか?

永田記者

キャッシュレスが本当に定着するには、まだ課題があります。店舗の多くが継続すると答えてはいるものの、必ずしも導入のメリットを得られていないケースも多いからです。

同じ経済産業省のアンケート調査で、参加店舗に売り上げの確保に効果があったか聞いたところ「効果があった」が4割、「効果がなかった」が6割となり、受け止めが分かれる形となりました。

また、「顧客の獲得」や「業務の効率化」という面でも、効果があったかどうか受け止めが分かれる結果になっています。

消費者もキャッシュレスを使うようになっているはずなのにどうしてメリットを感じにくいのですか?

永田記者

大きな理由として考えられるのが店側が決済事業者に支払う「決済手数料」です。決して大きくない利幅で経営していることが多い中小の店舗としては、売り上げから手数料を引かれるのは負担となります。

制度の期間中、この決済手数料は上限を3.25%に抑えられていました。しかし、制度の終了後、主要な決済事業者400社のうち4割は、手数料を引き上げる方針です。

中小の店舗の場合、決済手数料は5%から7%程度が相場とされ、実質的な負担がかなり増えると見込まれます。しばらくすると、キャッシュレス決済の導入をやめてしまう店舗も多く出てくるのではないかと懸念されています。

せっかく多額の税金を投入して「一定の効果」を得たわけですから、キャッシュレスが定着するために何か手立てはないのですか?

永田記者

国内の決済手数料は海外と比べても割高だとされています。これを是正しようと、経済産業省は決済事業者に手数料の情報を公開するよう求めています。官民団体の「キャッシュレス推進協議会」のホームページ上で一覧として公開し、各社の手数料を比較できるようにして、競争を促すねらいです。

中小の店舗では決済事業者との個別の交渉で手数料が決められ、根拠が不透明だという指摘もありましたので、改善に向けた一歩と言えると思います。

また、決済事業者から店舗側への売り上げの入金も課題です。店への入金が月に1度という場合も少なくなく、キャッシュレス決済の比率が上がっていくと、店舗によっては仕入れなどの経費の支払いで手元の現金が減り、資金繰りが厳しくなる懸念もあります。このため、入金頻度の情報も公開するようあわせて求めています。

しかし、こうした取り組みは強制力はありません。海外では手数料を法的に規制しているケースもあり、キャッシュレス決済をさらに広げていくためには、日本も法的な規制を検討すべきだという意見も出ています。