「ウポポイ」って知っていますか?
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出自粛などを繰り返し呼びかけた北海道の鈴木知事。2月ごろからテレビで流れた記者会見の映像で、鈴木知事の背後に書かれている「ウポポイ」ということばに「何のことだろう?」と気になった人もいるのではないでしょうか。「ウポポイ」は、実は北海道にできた大切な施設の愛称。アイヌ文化の発信や、観光を盛り上げる意味で地元の期待も大きいんです。苫小牧支局の中尾絢一記者、教えてください!
ウポポイって、どういうものなんですか?
中尾記者
ウポポイは、アイヌ文化を復興・発展させるための国立施設です。正式には「民族共生象徴空間」といいます。政府が北海道白老町に約200億円をかけて整備しました。森や湖など豊かな自然が広がる約10ヘクタールの広大な敷地の中に、アイヌ民族博物館、古式舞踊が披露される体験交流ホール、伝統家屋「チセ」を再現した集落「コタン」などがあります。愛称のウポポイの意味はアイヌ語で「大勢で歌うこと」。親しみやすく覚えやすいようにと、インターネットなどの投票で選ばれました。
北海道では重要な施設として期待されていると聞きました。具体的にどんな役割があるんでしょうか。
中尾記者
先住民族のアイヌの人たちの失われつつある文化の発信拠点になることが最も大切な役割です。アイヌの人たちは「自然界のすべてのものに魂が宿る」という世界観など、固有の文化を発展させてきました。一方で、明治政府の同化政策で日本語での教育を強制され、信仰の自由も奪われました。アイヌの人たちへの差別意識が強まった歴史もあります。いまでは日本語と系統が異なるアイヌ語や、独特の文様が施された工芸品の製作を伝承する人が年々減少し存続の危機にあります。国の施設として整備することで、多くの人たちが協力して、文化の研究や継承の活動に携わることができると期待されているんです。
国立アイヌ民族博物館は、アイヌの歴史・暮らし・風習などを伝える生活道具や工芸品など約1万点を所蔵しています。アイヌ文化は地域ごとにことばや着物などが異なります。博物館では、白老地方・釧路地方・旭川地方などさまざまな地域から寄せられた資料を通じて、多彩な文化を感じることができます。アイヌ文化になじみがなかった人が関心を持つきっかけになる施設もあります。伝統的な古式舞踊の見学や、工芸・刺しゅうを体験して学ぶこともできます。
館内の案内表示にも特徴があります。アイヌ語を第1言語として表記し、日本語・英語・中国語・韓国語を併記しています。アイヌ語を継承するとともに、少しでも多くの人に知ってほしいという思いが込められています。
ウポポイ、いつごろ開業予定なんですか?
中尾記者
ことし4月24日にオープンする予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で2度にわたって延期され、まだ開業時期は発表されていません。政府は感染状況を見ながら判断するとしています。
開業に向けた第一歩として、6月9日から地元の町民向け内覧会が始まりました。感染防止対策に力を入れています。来場者には体温のチェックを行い、古式舞踊の披露も密集を避けるため屋内のホールではなく、屋外ステージに変更していました。開業後も当面は、体験プログラムの制限など影響が続くとみられます。
ウポポイの来場者数の目標は年間100万人です。先住民族への関心は海外でも高く、北海道の観光を盛り上げる起爆剤としても期待されています。ウポポイを訪れることで多くの人がアイヌ文化に触れ、理解を深めるきっかけになればと願っています。
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