新型ウイルスで貨物スペースの奪い合いって?

新型コロナウイルスの感染拡大による影響はモノの移動、物流にも広がっています。日本は貿易大国。輸出や輸入で経済が成り立っており、物流が滞りなく動くことは極めて重要です。しかし、貿易額が大きい中国から日本への航空貨物ではスペースの奪い合いが起きています。さらに、影響は船の輸送にも?大阪放送局の太田朗記者、教えて!
航空貨物のスペースの奪い合いって何が起きているんですか?
太田記者
新型コロナウイルスの感染が中国で拡大した影響で、中国の工場の生産がストップしました。中国で生産されるさまざまなモノに頼っていた日本企業はこの遅れを取り戻そうと通常なら船で運ぶものも飛行機で急いで運ぼうと依頼が集中しているんです。
飛行機で運ぶって値段が高いような気が…
太田記者
確かに航空貨物の価格は高いですよ。同じルートでも船で輸送する料金の10倍ほどになるそうです。ただ、中国から日本にモノを運ぶ場合、船だと1週間程度はかかりますが飛行機だと通関を含めて3~4日です。
中国では工場の生産が再開されつつありますが多くの工場では従業員が確保できなかったり、原材料が届かなかったりしたことで稼働を再開したあとも生産力が落ちていました。そのため、本来の計画よりも生産が遅れてしまっており、この遅れをなんとかしたいと日本企業が飛行機で緊急輸送しようというわけなんです。
10倍もするならちょっとくらい遅れても船で運んだほうがコストが抑えられていいのではと考えてしまいますが、なぜ企業はそこまでする必要があるのですか?
太田記者
特に今回動きが早かった自動車産業を例に説明します。中国で部品を生産し、日本の工場で部品を組み立てている場合、部品の調達が滞ると日本の工場がストップしてしまいます。サプライチェーンが寸断されてしまうのです。そうなると車の完成が遅れて、客への納車も遅れてしまうことになります。自動車メーカーとしては売り上げが入ってこない状態です。
それならば、一時的にコストが膨らんだとしても部品を急いで輸入して車の製造を続け、完成した車を販売したほうがいいという判断です。
なるほど。ところで、航空貨物ってどうやって運ぶんですか?貨物専用の飛行機?
太田記者

旅客機には客室の下に乗客の荷物を載せるスペースがありますよね。いつも乗客の荷物でいっぱいになるわけではなく、その空きスペースを使って貨物輸送を行っているんです。でも今、中国と日本を結ぶ便は大幅に減便されています。
このスペースの奪い合いが起きているわけなんです。2月初旬まではまだある程度、旅客便が飛んでいましたが、2月下旬からはほとんど飛ばなくなってしまいました。
そこで注目が集まっているのが貨物専用機です。成田空港と関西空港には貨物専用のターミナルがあって中国からの貨物便も飛んでいます。ただ、旅客便ほど便数が多くないのでモノを運びたい企業からの注文が集中し、限りある貨物スペースも奪い合いが起きています。こうしたことから3月上旬には、航空貨物の運賃は最大で通常時の5倍に跳ね上がってしまいました。
船の輸送は通常どおりなのですか?
太田記者

海運も実は異変が起きています。さまざまな貨物を積み込むのに使われる「コンテナ」。このコンテナが世界各地の港で不足する事態になっているんです。
コンテナは効率的に輸送するため使い回す仕組みになっています。船は港に到着すると、貨物が詰まったコンテナを降ろし、今度はすでに貨物が積み込まれた別のコンテナを載せて、次の港に向かいます。コンテナがぐるぐる世界を回っているイメージですね。
ところが今回、中国で工場が稼働を停止して生産が減ったことで、輸出するモノが減少してしまいました。そのため、中国の港では輸入のコンテナを降ろす一方で、輸出するコンテナがない状態となり、船がコンテナを載せないまま出発するケースが相次ぎました。結果的にコンテナが中国の港にたまってしまい、世界各地の港でコンテナが不足する影響が出ているんです。

それは困った事態ですね。入れ物がないのではモノが運べないですよね。
太田記者
そのとおりです。こちらでもスペースの奪い合いが起きる可能性が指摘されています。また、コンテナを必要としている港に空のコンテナを運ぼうとするとその費用を上乗せした輸送料金が設定される可能性もあります。今後、輸送費用が上昇することが考えられる状況になっているのです。
価格の高い製品の輸送ではまだ輸送費の上昇分を吸収できる可能性がありますが、アパレルなど価格が安い製品のメーカーにとっては輸送費の上昇は経営を直撃します。
新型コロナウイルス感染の終息が見えない中で、物流の混乱は経済に対する隠れた重荷になるおそれがあり、注視する必要があります。
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