NEW2020年03月03日

マスク、今なにが起きているの?

マスクの品薄状態が続いています。ドラッグストアの入り口に「マスクの入荷ありません」と書かれているのを見て、ため息をついている方も多いはず。なぜ、マスクが店頭にないのでしょうか。そして今、何が起きているのでしょうか。(この記事は3月3日配信です)

ここしばらく、店でマスクを見なくなりました。いったいなぜなんですか?

マスクの品薄が続いているのは、もともと需要の多い時期に、新型コロナウイルスの影響で需要が膨れあがったためと言えそうです。国内生産や輸入による供給量に対して、需要がはるかに上回っているんですね。

まず生産について。経済産業省によりますと、国内のマスクメーカーは24時間体制で増産していて、1週間に通常の3倍にあたる1億枚を生産しているそうです。これに中国などからの輸入を合わせると、現時点の供給量は1週間で1億1000万枚余り、月間で4億5000万枚程度になります。

一方で需要。この時期はもともと、花粉症などでマスクの販売が最も多いんです。例年だと需要は1週間におよそ1億枚程度とされています。新型コロナウイルスの影響でマスクを使う人が大幅に増え、現在の需要はその数倍に膨れあがっていると見られます。また、転売目的でマスクを買い占める動きがあることも、品薄感を強めていると指摘されています。

マスクは医療機関や介護施設など向けに優先的に出荷され、スーパーやドラッグストアなどに納品されても1店舗当たりの数は限られ、すぐに売り切れてしまう状況になっているんです。

メーカーの増産は、実際にはどう行われているんですか?

各社とも増産に追われているようですよ。今回、生活用品メーカーのアイリスオーヤマを取材しました。

この会社は通常時よりもマスクの出荷量を5倍に増やして対応しています。中国の大連市と蘇州市にある自社工場で生産したマスクを日本に輸入し、ドラッグストアなどに出荷しています。新型コロナウイルスの感染拡大によるマスクの需要の増加に対応するため、現地の工場を24時間体制で稼働させているということです。

埼玉県深谷市にある物流拠点に行ってみると、中国から届いた1箱40枚入りのマスクが、首都圏に出荷されるトラックの荷台いっぱいに積み込まれていきました。通常に比べて5倍の量を出荷していますが、連日それを上回る注文が入って来るため、すべての注文には対応しきれない状況だということです。

アイリスオーヤマ広報室サブリーダーの岡村響介さんは「メーカーとしても24時間体制で生産をしているが、それ以上に需要が高まっている状況だ。マスクを必要とされる方にいち早くお届けできるように生産や供給の体制を整える努力をしていきたい」と話していました。

マスクの供給量を増やすため、政府は国内で生産設備を増強するメーカー3社に補助金を出すことを決めたほか、異業種の企業にも生産に乗り出すよう要請しています。実際に電機メーカーのシャープがマスクの生産に乗り出します。こうしたことが品薄の解消につながるか注目されています。

なるほど。ところで最近はトイレットペーパーを買いだめする動きも出ていますね。「マスクの品薄」と「トイレットペーパーの買いだめ」に共通する問題があるのでしょうか?

トイレットペーパーは、「製造元が中国にあり、今後、品不足になる」などという誤った情報をきっかけに一部で買いだめの動きも見られます。

大阪大学大学院 大竹文雄教授

行動経済学が専門の大阪大学大学院の大竹文雄教授は、マスクやトイレットペーパーの品薄が続く背景には「みんなが買うから、自分も買う」というように、消費者の行動が周囲に影響されやすいことがあり、みんなが買えば自分が買えなくなるかもしれないという不安が買いだめにつながっているのではないかと指摘します。

そのうえで、トイレットペーパーについては、「メーカー側が十分に在庫があることをもっと積極的にアピールし、販売店も入荷予定のスケジュールを具体的に知らせることが消費者の不安の解消につながる有効な方法だと考える」と話しています。

一方、マスクについては、「『あなたが買うことで、マスクをもっと必要とする医療や介護の関係者などが手に入れることが難しくなる』などと呼びかけることで消費者の行動を変え、買いだめを抑える効果があるかもしれないが、マスクの在庫が十分ではない中でどこまで有効かは見通せない。マスクの多くがネット上で高額で転売されているが、これについては、チケットの転売を禁止するのと同じようにネットでの転売を規制するようなルールを設けることを検討してもよいのではないか」と話していました。