NEW2020年02月19日

レジが無く“手ぶらでOK”のコンビニって?

小腹が空いたのでちょっとコンビニに。ランチタイムと重なって店内は長蛇の列、買い物はあきらめよう…、そんな経験がなくなるかもしれません。大手コンビニが、デジタル技術を活用した“レジなし”店舗の実証実験に相次いで乗り出しています。レジが無いだけでなく、スマホすらいらない“手ぶら”店舗ってどんなの?経済部の仲沢啓記者に聞きます。

“レジなし”で“手ぶら”の店舗ってどういうことですか?

仲沢記者

手のひらをかざして入店。商品を取ってそのまま店を出れば会計が済む、そんな店舗です。財布もスマホもいりません。

コンビニ大手のローソンと大手電機メーカーの富士通が、今月から川崎市にある富士通の社内で、従業員を対象にした実証実験を始めます。

事前にスマホのアプリに顔の画像や手のひらの静脈、クレジットカードの情報を登録しておけば、入り口で手のひらをかざすだけで入店できます。入店したあとは、好きな商品を手に取って店の外に出るだけです。

これを可能にしているのは、店の天井にある28台のカメラと、商品が並ぶ棚にある重さを量るセンサーです。

客が手を伸ばした位置をカメラが確認

商品を手に取ると重量のセンサーが反応

誰がどの商品をとったかを検知

客が店を出ると、クレジットカード決済が完了する仕組みです。私も実際に買い物をしてみましたが、お茶1本を購入するのに10秒ほどしかかかりませんでした。

何でも買えるんですか?

仲沢記者

まだ実証実験の段階なので、通常の半分以下の23平方メートルの店舗で、並ぶ商品もおにぎりやサラダ、カップめんに飲み物など、通常の品ぞろえの1割以下のおよそ250種類に限られます。冷凍食品やアイスクリームは、低温で重量センサーの感度が鈍くなるなどの課題があるため並んでいません。

また、コンビニの売上の多くを占める酒やたばこは、対面での販売ではなく年齢確認ができないといった理由から、買うことはできないそうです。チケットの発券や公共料金の支払いも現状はできません。

ローソンと富士通では、5月下旬まで3か月間実験を進め、ことしの夏ごろには一般向けの店舗でも実験を行いたいとしています。

買い物をする側からすると、早くて便利だけど、買えない物、使えないサービスもあるってことですね。コンビニ側にとってのメリットはどんなところですか?

仲沢記者

レジでの業務がなくなるので、そこにかける人手を減らすことができます。さらに、通勤前やランチタイムといった、レジが混雑する時間帯に、並ぶのがいやでコンビニに来なかった人たちが買い物をしてくれるようになれば、売り上げが伸びるかもしれません。

ローソンの牧野国嗣理事執行役員は「デジタルの活用で人手不足を解消するだけでなく、レジ待ちを嫌っていた人を取り込んで売り上げを伸ばしたい」と意気込んでいました。

会計する必要のない店舗としては、アマゾンがアメリカで展開する「アマゾン・ゴー」も話題になりましたよね。日本国内のほかのコンビニでも取り組みは進んでいるんですか?

仲沢記者

セブン‐イレブンはNTTデータと共同で、同様に重量センサーやカメラで商品を判別し、持ち帰るだけで会計が済む店舗の実験を行っています。ファミリーマートもパナソニックと共同で、商品を専用の読み取り台に置くとカメラで商品を識別し、事前に顔を登録することで、顔認証だけで商品を購入できる店舗の実験を行っています。

コンビニ業界は、深刻な人手不足に加え売り上げの頭打ちなどで、ビジネスの根幹が揺らいでいます。レジ無し店舗は、コンビニにとっては省人化となるだけでなく、利用者にとってもレジ待ちがなくなるというメリットがあります。

一方で、精度の問題や商品が限定されるなど課題も多いように感じます。レジ無し店舗が今後広がるのか、各社の実験の行方に注目したいと思います。