「○号車から痴漢の通報あり!」 痴漢防止の新対策とは
JR東日本が、新たな痴漢防止対策に乗り出すことになりました。スマートフォンのアプリを通じて、声を出さなくても車掌に通報できるシステムの導入を目指し、2月下旬から実証実験を行います。どんな仕組みなのか、鉄道業界を取材している西園興起記者に聞きます。
昔から問題になっている痴漢被害。いまだに減っていないのですか?
西園記者
警察庁によりますと、警察が都道府県の迷惑防止条例違反で検挙した電車内などでの痴漢行為は、全国で年間およそ2800件(平成30年)。3000件を超えていた平成28年以前と比べると減少していますが、高いレベルが続いています。
また、より悪質な行為にあたる、電車内の強制わいせつの件数は年間260件余り(平成30年)に上ります。さらに、被害にあっても警察に通報しないケースも相当あるとみられ、実際の被害はもっと多いと言われています。
これまでも、鉄道各社は女性専用車両を導入したり、車内に防犯カメラを設置したりして、被害を防ぐための取り組みを続けてきましたが、被害はなかなか無くなりません。
被害にあっても、声を上げられないという人も多いと言われていますよね。
西園記者
そうなんです。そこで、JR東日本が開発を進めているのが、スマホを使った通報システム。
列車内で乗客が痴漢行為を受けた際、あらかじめスマホにインストールしたアプリの画面をタップすると、車掌が持つタブレット端末に通知が送られます。通報を受けた車掌は、車内放送で「○号車のお客様より痴漢の通報がありました!」などとアナウンスすると同時に、同じアプリを入れているほかの人にも通知する仕組みです。
GPSなどを通じて、痴漢行為があった車両まで特定することが可能なため、対象を絞って注意喚起できるのです。被害者が自分で声を上げなくても、周囲に気付いてもらうことで、痴漢行為を抑えるねらいです。
JR東日本の深澤祐二社長は「痴漢行為の被害者は周りの人になかなか助けを求められないという声もある。アプリで通報のハードルを下げ、痴漢を防止していきたい」と話していました。
実証実験はどのように行われるのですか?
西園記者
まず、2月下旬から3月中旬にかけて被害の訴えが多い埼京線で行われます。朝の通勤時間帯に大宮ー新宿間の上下線に、タブレット端末を持ったJRの社員と、一般の利用者から募ったモニターが乗り込み、通報から車内放送を行うまでの動作を実験します。
アプリの使い勝手などを検証するとともに、乗客にアンケートをして車内放送のやり方や内容について、不快に思わなかったかなども調べることにしています。これを踏まえて、ことし6月以降、一般の乗客に広くアプリをインストールしてもらい、同じ埼京線で試験的な運用を始めます。
通報があった最寄り駅で、駅員と連携して被害者を保護したり、容疑者を警察に引き渡したりする手順なども確認するということです。そして、できるだけ早く実用化したいとしています。
通報のハードルが下がることで、いたずらの通報も増えるのではないですか。
西園記者
会社では、いたずらで通報するのをふせぐため、アプリの利用者には、名前などの個人情報の事前登録を求めることにしています。誰が通報したのかわかれば、いたずらはしにくいだろうと考えたのです。
痴漢の対策については、男女で受け止め方も違うでしょうし、車内アナウンスに抵抗がある人もいるかもしれません。「声を上げない通報」が痴漢防止の切り札になるのか、まずは実証実験での乗客の反応に注目したいと思います。
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