NEW2020年02月05日

まだ残っていたの?たばこが吸える特急

いまや公共の場では禁煙が当たり前の時代。狭い鉄道車内は当然、禁煙かと思いきや、1月末までたばこを吸える特急列車が走っていたのをご存じですか?

全国の私鉄の有料特急では最後まで走り続けたのが、近鉄の喫煙車両。なぜ残っていたの?

大阪放送局の太田朗記者、教えて!

まだ座席でたばこが吸える電車があったとは驚きです。

太田記者

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それがこちらの車両です。近鉄の12200系。昭和44年(1969年)から昭和52年(1977年)にかけて製造された車両で、昭和から平成にかけて近鉄特急の顔ともいえる存在でした。ただ、老朽化にともない、来年春までに引退することが決まっています。

この車両に昭和のなごりともいえる喫煙車両が残っていたのです。

これまで1日のうちに数本、1編成に1両だけ連結して運行を続けてきたのですが、時代の流れにあわせるように1月31日をもって運行を終了しました。

他の車両とはどう違うのですか?

太田記者

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座席のひじ掛けについている灰皿が最大の特徴です。また、網棚の上には空気清浄機が設置されています。

実は私も喫煙者なので乗車してみましたが、堂々とたばこを吸いながら車窓を流れる景色を見るというのは、なかなか気分がいいものでしたよ。

う~ん、私はたばこが苦手なので、その気持ちが理解できないです。でもなぜ今まで運行を続けてきたのかが不思議です。

太田記者

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近鉄は喫煙者のためのサービスとして運行を続けてきたと説明しています。もう1つ、近鉄ならではの理由もあるんです。

それは私鉄のなかで近鉄は特急の走行区間が長いという特徴です。大阪難波駅から近鉄名古屋駅まで2時間20分程度。

長時間乗車する利用客のために喫煙ルームを設置した列車の導入を進めてきましたが、一方で、古い車両には喫煙ルームがないため、喫煙車両を残し続けたというのです。

昔はこの近鉄の車両のように列車内でもたばこを吸えたんでしょうね。

太田記者

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昭和の時代は、列車内での喫煙は当たり前でした。かつてはたばこを吸う人が今とは比べ物にならないぐらい多かった事情があります。

JT=日本たばこ産業によると、喫煙者率は最新の平成30年(2018年)の統計では男性27.8%、女性8.7%、男女合わせた全体で17.9%です。

これが昭和50年(1975年)当時の喫煙者率は、なんと男性76.2%、女性15.1%、全体で44.5%とかなり高い割合だったのです。それも時代とともに変わっていきます。

新幹線では、昭和51年(1976年)に初めて禁煙車が登場しました。たばこを吸う人が年々減り、社会の受動喫煙対策も進む中で、全国のJRや私鉄で禁煙車が続々と導入されていきます。

そして、東海道新幹線では平成19年(2007年)に全席禁煙の列車が運行を開始したほか、各地の特急列車も全席禁煙にする動きが相次ぎ、喫煙車はほとんどがすでに姿を消したというわけです。

近鉄が運行を終了した理由も時代の流れということですか?

太田記者

正確にいうと、4月から施行される改正健康増進法が理由です。受動喫煙を防止する法律の対象に鉄道も含まれていて、座席でたばこが吸える喫煙車両は運行できなくなるためです。

ただし、列車に喫煙ルームを設置することは認められています。

新幹線をイメージするとわかりやすいと思いますが、愛煙家たちは今後、列車やホームに設置された喫煙ルームでたばこを吸うことになります。

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実は、いまでも東海道・山陽新幹線の一部に喫煙車両が残っています。運行本数が非常に少ないので、ほとんど見ることはないと思いますが、これも改正健康増進法のため、ことし3月のダイヤ改正で姿を消す予定です。

近鉄の喫煙車両は今後どうなるのですか?

太田記者

網棚の上にある空気清浄機と座席のひじ掛けについている灰皿を撤去して、車内のクリーニングを行います。そして、禁煙車に生まれ変わって引退する来年春まで運行することになっています。

近鉄では、たばこを吸う人も吸わない人も快適な旅を楽しんでほしいと話していました。