「宇宙天気予報」って何?
きょうの火星は晴れ、金星は雨でしょう…という予報のことではないようです。この宇宙天気予報の精度向上のため、ある大がかりな観測施設が、日本の協力のもと、東南アジアのタイに完成し、運用が始まりました。どんな予報のためのどんな施設なのか、アジア総局(バンコク)特派員の岩間宏毅記者に聞いてみます!
「宇宙天気予報」って初めて聞きました。どういうものなんですか?
岩間記者
聞き慣れないですよね。天気と言っても雨や雪のことではないんです。太陽の活動などによって地球近くで発生するさまざまな自然現象が、人工衛星や通信インフラなどの活動にどのような影響を与える可能性があるかを予測するのが「宇宙天気予報」です。
こうした自然現象のうち、太陽の活動などの影響で地球の上空で発生する「プラズマバブル」という現象が、電波障害の原因の一つとなっていて、GPSなどの人工衛星の位置情報に誤差が出たり、航空機の運航に使う通信が途絶えたりなどの悪影響を及ぼすおそれがあります。
日本では国立研究開発法人「情報通信研究機構」が、人工衛星などへの影響を予測して毎日、「宇宙天気予報」を発表しています。
この宇宙天気予報に関わる施設がタイにできたということですね。
岩間記者
そうなんです。情報通信研究機構とタイの大学が共同でタイ南部のチュンポン県に新しいレーダー施設を設置しました。17日、運用開始に合わせて現地で式典が開かれました。
情報通信研究機構は新たな施設で、プラズマバブルの発生をいち早く観測することで、電波障害など地球への影響を予測する「宇宙天気予報」の精度の向上を図るとしています。これによって、農業機械や建設機械の自動運転など、日本や東南アジアでの人工衛星を活用したサービスの利用拡大につながることが期待されます。
現地の式典に出席した情報通信研究機構の徳田英幸理事長は、「いろいろな国でスマート農業など位置情報を使ったサービスが始まっているが、そこに誤差が出ると、さまざまなトラブルが起きる。社会をより安全安心にするには宇宙天気予報の技術が不可欠だ」と話していました。
こうした取り組みは、日本にとってどういう意味があるんですか?
岩間記者
日本はおととしの11月から、日本版GPS衛星「みちびき」の本格的な運用を開始していて、東南アジアやオセアニアで、高精度の位置情報サービスを提供していくことも視野に入っています。
プラズマバブルの観測網の整備は、位置情報の精度の向上を通じて、日本の人工衛星の利用促進につながるとともに、関連する製品やサービスを売り込める可能性が広がることが見込まれます。さらにレーダー運用におけるタイとの協力は、日本の宇宙研究のノウハウ提供を通じて両国の関係強化にもつながりそうです。
レーダーの運用で協力するタイ王国モンクット王ラカバン工科大学のワッタナチャイ副学長は、「日本との協力は、宇宙天気の研究に役立つだけでなく、将来的には航空や海運産業での通信手段の機能向上にも大いに寄与すると考えている」と話しています。
日本とタイの協力で、宇宙という大きな場で研究やビジネスの可能性が広がっていくきっかけになりそうですね。
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