NEW2019年12月18日

なぜ今?スタートアップ

東京証券取引所などには、ことし95社が株式を上場します。なかでも「スタートアップ」と呼ばれる会社の上場が目立ちました。上場直後の時価総額が1位、2位はいずれもスタートアップ。今、どうしてスタートアップ企業の上場が相次いでいるんでしょうか。証券業界を担当している古市啓一朗記者、教えて!!

そもそもスタートアップって、どんな企業?ベンチャーと違うの?

古市記者

アメリカ西海岸のシリコンバレーなどで創業し、インターネットやAIといった最新のテクノロジーを駆使した斬新なビジネスで、短期間に規模を大きくした企業がスタートアップ企業と呼ばれてきました。

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世界に事業を拡大し、ことしニューヨーク証券取引所に上場したアメリカのライドシェア大手ウーバーも代表的なスタートアップ企業です。日本ではベンチャー企業の方が昔から使われ、なじみがありますが、ここ数年、スタートアップも使われるようになりました。

経済産業省に聞いてみるとスタートアップ、ベンチャーに明確な定義や違いはないそうです。ただ、スタートアップには、クラウド技術やスマートフォンのアプリを使ったサービスを手がけたり、シェアリングといった新しい分野でサービスを開発したりしている企業が多いのが特徴です。

スタートアップの上場、ことしはそんなに目立ったの?

古市記者

明確な定義がないだけに何件あったとは言いにくいのですが、東京証券取引所の新興企業向け市場「マザーズ」にことし上場する企業は64社。この10年では最も多かったのです。

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上場直後の株価で計算した時価総額をみると…

▽ことしのトップはクラウドで名刺情報を管理するサービスを手がけるSansan(1424億7800万円)
▽2位は同じくクラウドを使った会計ソフトを開発したfreee(1166億円)、
▽3位は医療データ分析のJMDC(1015億6200万円)、
▽4位は建設会社の日本国土開発(613億1100万円)、
▽5位は会社間の簡易メッセージツール開発のChatwork(541億6800万円)。

1、2、3、5位にスタートアップ企業と呼ばれる会社が並びます。証券取引所の人も「市場が活気づくひとつのきっかけになった」と話していました。

なぜ“ことし”なの?

古市記者

スマートフォンの普及だけでなく、クラウド技術やシェアリングエコノミーといった新しいビジネスモデルが浸透・拡大を始め、会社が成長したことが背景にあるのは間違いありません。

一方、スタートアップ企業の人たちと話していると、別の理由も聞かれます。

ひとつは2013年4月から日銀が行っている大規模な金融緩和政策で金利がとても低い状態が続いていることです。ここ何年かは銀行からの借り入れがしやすく、スタートアップが事業を始めやすい環境にあったようです。

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JースタートアップのHP

もうひとつは国も革新的なビジネスやサービスを支援しようと補助金制度を整備していること。国は「Jースタートアップ」というプロジェクトを始め、スタートアップ企業を資金的に支援して、海外進出を後押しする体制もつくっています。

日本のスタートアップもグーグルやアマゾンのように急成長して世界的な企業になる?

古市記者

確かにその可能性は秘めています。ただ、上場したスタートアップ企業をみると、もうけがでない、赤字の状態で、上場する企業も多かったんです。

ことし国内の証券取引所に上場する95社のうち、上場直前の決算で最終損益が赤字だった企業は18社。ここ5年間で最も多くなりました。顧客が増え、売り上げは伸びているけれど、さまざまな先行投資や積極的な広告宣伝をしたために利益が出ていない企業が多く、事業の将来性が評価されて上場にこぎつけた形です。

ただ、いつまでも赤字企業というわけにはいきません。上場後は業績面でも一定の成果を出さないと株価が下がりやすくなり、投資家から新たに資金を調達しようにも思い通りにいかなくなる可能性もあります。

業績面も軌道に乗せて、いつか日本発のスタートアップ企業が世界で活躍するようになってほしいと思います。