NEW2019年12月13日

なぜ?“就職氷河期世代”を支援

「就職氷河期世代」ってどんな世代か知っていますか?ある人材サービス大手が、就職氷河期世代を中心に300人を正社員として採用する計画を打ち出しました。実は政府や自治体でもこうした世代の就労を支援しようという動きが出ています。なぜいま「就職氷河期世代」の支援なのでしょうか。経済部の藤本浩輝記者、教えて!

そもそも就職氷河期世代って、どういう人たちなんですか?

藤本記者

就職氷河期世代とは、新卒の就職が特に厳しかった主に平成5年(1993年)ごろから平成17年(2005年)ごろに大学や高校を卒業した人たちのことだとされています。

「就職氷河期」ということばは、もともとは当時の就職雑誌に登場した造語で、平成6年(1994年)の「新語・流行語大賞」では、「審査員特選造語賞」に選ばれています。このころ、特に大卒の就職難が社会問題となり、就職が非常に厳しい時代に入ったというニュアンスの「氷河期」ということばは、共感を持って受け入れられたようです。その氷河期の時代に就活をした世代は、現在、30代半ばから40代半ば。

内閣官房の就職氷河期世代支援推進室によりますと、この世代では、正社員になりたいのに非正規雇用で働いている人が少なくとも50万人、「長期無業者」が40万人程度いるとみられ、支援が必要な人は、合わせて100万人程度と見込まれています。実は、就職氷河期世代の就労を支援することは、日本社会の課題の1つとなってきているんです。

そうなんですか。そうした中で、パソナグループが就職氷河期世代を中心に300人採用するというニュースを見ましたが、なぜ今、就職氷河期世代の支援に乗り出したのでしょう?

藤本記者

ニュース画像

パソナグループは、人材派遣の分野で大手。この取り組みのねらいについて、南部靖之グループ代表は「氷河期世代の人たちをいかせば、人手不足や東京一極集中の解消にも大きな力添えをしてくれる」と述べています。

パソナグループは、就職氷河期世代の就労を支援する取り組みを、クラーク博士の「少年よ大志を抱け」になぞらえて、「ミドルズビーアンビシャス制度」と名付けました。「中年よ大志を抱け」といったところでしょうか。

会社では、募集に関する情報を自社のホームページで公開しているほか、来月には東京と大阪で説明会を開催。採用選考を経て、来年4月1日から順次、子会社に入社してもらい、来年度1年間で合わせて300人を正社員として採用する計画です。そして、半年程度、研修を行った後、それぞれの適性に応じて自社の拠点がある兵庫県の淡路島など全国各地に配属します。

正社員として採用することで、パソナグループが「地方創生」をかかげて各地で進める事業のリーダーとなる人を育てたいというねらいがあります。これが、地方の人手不足の解消にもつながるという考え方のようです。

就職氷河期世代を支援するこうした動きはほかにも広がっているんでしょうか?

藤本記者

もともと就職氷河期世代の支援は、ことし6月、政府が就職氷河期世代の就労を促進するため、およそ100万人を対象に支援を行い、正規雇用で働く人を3年間で30万人増やす方針を示しています。

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内閣官房の就職氷河期世代支援推進室は公式ツイッターで、就職に関するセミナーなどの情報を発信しています。今月(12月)決定した政府の新たな経済対策では、来年度から3年間、国家公務員の中途採用に集中的に取り組むとしています。

自治体も動いています。ことし8月、兵庫県宝塚市が就職氷河期世代を対象に正規職員の募集を行ったことも注目されました。1600人余りの応募者の中から選考を経て4人の採用を内定しています。

国、地方自治体、そして今回のパソナグループのような民間がそれぞれ支援を打ち出すことで、就職氷河期世代の就労が広がりを見せてきています。これから来年にかけて、さらに大きな関心を呼ぶかもしれませんね。