NEW2019年11月20日

台風で保険料値上げなぜ?

千葉県で多くの電柱が倒れて停電が長引いた台風15号、河川が氾濫した台風19号。ことしも大規模な災害が相次ぎ、多くの被害が出ました。自然災害の多発で、わたしたちの家計に影響が広がっています。櫻井記者、解説して。

家計にどんな影響がでているの?

櫻井記者

火災保険の保険料が値上がりしているんです。火災保険は、火事によって建物や家財道具に被害が出たときの補償はもちろんなんですが、台風や大雨による被害も補償の対象になります。その火災保険の保険料、このところ自然災害が相次いでいるため値上げが続いています。

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東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパン日本興亜など大手の損害保険会社は2015年10月に保険料を全国平均で2%から4%値上げ。先月も全国平均で6%から7%値上げしました。さらに再来年の1月にも値上げする予定です。

損保ジャパン日本興亜の試算では、東京都にある耐火構造の一戸建ての住宅で建物に2000万円、家財に1000万円の火災保険をかけた場合の保険料は、この4年間で5000円程度、高くなっているそうです。

どうして自然災害が続くと保険料があがるの?

櫻井記者

保険料が決まる仕組みを細かく見てみるとわかります。火災保険の保険料は「純保険料」と「付加保険料」の2つからなっています。

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「純保険料」は災害が発生したときに私たち契約者への保険金の支払いにあてられます。もう一方の「付加保険料」は保険会社の経費などにあてられます。

このうち保険金の支払いにあてられる部分をいくらにするかは、第三者機関がどのくらい値上げするか目安を決めています。気象庁のデータをもとにコンピューター上で何十万個も台風を発生させて被害をシミュレーションしているそうです。そして将来、どこに、どれくらいの自然災害が起きるかの確率を予測し、支払われる保険金の額を都道府県ごとに計算しているんです。

ところが、これだけ自然災害が相次ぐと、将来、自然災害が起きる確率、そして支払われるであろう保険金の額も計算上は高くなってしまいます。ですので保険料が値上がりしているというわけなんです。

実際、これまでの自然災害ではどれくらいの保険金が支払われたんですか?

櫻井記者

最近は増える傾向なんです。

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損害保険協会のまとめでは、▽2014年は関東地方に降った大雪の被害で3224億円。▽2015年には台風15号による豪雨被害で1642億円。▽去年2018年は大規模な災害が相次ぎ、西日本豪雨で1956億円、関西地方を襲った台風21号ではこれまでで最も多い1兆678億円、静岡県や神奈川県などで停電が広範囲に及んだ台風24号では3061億円の保険金が支払われたんです。

そして、大手損害保険グループ3社が19日に明らかにした見通しだと、台風15号と台風19号の保険金の支払い額は8600億円。さらにほかの自然災害もあわせると今年度は1兆円規模になる可能性もあるというのです。3社だけでこの規模ですから、実際はもう少し膨らむかもしれません。

そうすると、まだまだ火災保険の保険料は値上がりすることに?

櫻井記者

その可能性があるんです。さっき説明しましたが、平均の保険料はことし10月に値上がりして、再来年の1月にも値上げがすでに決まっています。しかし、ことしの台風15号と台風19号の被害はまだ保険料に反映されていません。ですから、今後、さらに保険料が上がるかもしれません。

消費税率引き上げもあったし、保険料の値上げは正直、懐には厳しいです…。

櫻井記者

そのとおりだと思います。台風や大雨は私たちにどうすることもできませんよね。ただ、火災保険の保険料の2つの要素=「純保険料」と「付加保険料」のうち、「付加保険料」は保険会社の経費にあてられるわけですから、保険会社がコストを削減すれば少なくすることもできます。

最近、保険会社では、被災地にドローンを飛ばしたり、人工衛星を使ったりして人手をかけずに被害状況を把握しようとしています。保険金の支払いに必要な膨大な書類の作成も自動化を進めています。少しでも値上げ幅を抑えるよう、保険会社にはなんとか努力をして欲しいと、強く思います。