NEW2019年09月27日

サクサク消費税(10) 景気は大丈夫?

消費税の気になる点を解説する「サクサク消費税Q&A」。
最終回は、「今、消費税率引き上げて景気は大丈夫なの?」です。

消費税率の引き上げで家計の負担は増すことになりますが、消費に与える影響が心配ですよね。

前回、平成26年4月に5%から8%に引き上げた時は、増税の影響が大きい住宅や自動車といった大きな買い物を中心に駆け込み需要が高まる一方、増税後は、その反動で販売が減少し、個人消費は大きく冷え込みました。

増税直後、平成26年4月から6月までのGDPは年率に換算してマイナス7.1%。マイナスの幅は、東日本大震災の影響で景気が悪化した平成23年1月から3月のマイナス6.9%を超える大幅な落ち込みとなりました。税率引き上げが景気悪化のリスクと背中合わせだということが、よく分かりますよね。

今回の引き上げは、大丈夫なのでしょうか?

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政府は今回、駆け込み需要の反動を抑え、増税後の景気の落ち込みを和らげるための対策づくりに腐心しました。キャッシュレス決済を対象にしたポイント還元、一部の世帯を対象に、購入した金額以上の買い物ができる「プレミアム付き商品券」、環境性能や耐震性が高い住宅を新築した際などに、商品と交換できるポイントがもらえる「次世代住宅ポイント」も導入されます。

増税の影響が大きい住宅や自動車の購入への対策はどうなっているのですか。

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ローンを組んで戸建て住宅やマンションを購入した人などに対し、所得税を減税する「住宅ローン減税」が拡充されます。今は、最大で年間50万円が10年間減税される仕組みですが、消費税率の引き上げ後は減税の期間が3年間延長され、その期間は、最大で建物価格の2%分が減税されます。

一方、自動車を保有する人が毎年課税される「自動車税」が、恒久的に減税されます。税率引き上げ後に新車を購入した人が対象で、自動車の排気量に応じて、年間4500円から1000円の範囲で減税になります。また、今の「自動車取得税」に代わって導入される、燃費性能を基準とした税金「環境性能割」も、最初の1年間に限って税率が1%引き下げられます。

あの手この手で対策を講じているのは分かりますが、果たして、その効果は?ということですよね。

前回のような大きな駆け込み需要は起きていないというのが、多くの見方です。8月に国内で販売された新車の台数は去年の同じ月より6.7%増えましたが、業界団体は、これは軽自動車の新型車の販売が好調だったことが主な要因で、大きな駆け込み需要は出ていないとしています。

住宅については、工事請負の契約を済ませば8%の税率が適用されることになっていたことし3月までは、全国で着工された戸数が4か月続けて増加しました。しかし、その伸び幅は、前回の消費税率引き上げ前に比べて大きくはなく、事業者への聞き取りなどを踏まえても、駆け込み需要は限定的だったということです。

ということは、今のところ、影響は抑えられそうと見ていいのですか?

いや、むしろ心配なのは、消費意欲そのものが伸びていないことだと指摘する声もあります。政府は、今回の消費税率引き上げで、高齢者だけではない「全世代型」の社会保障の実現を図るとしていますが、将来への不安や、子育てにかかる負担が一気に解消されるわけではありません。

消費者の根強い節約志向も指摘される中、消費税率の引き上げが、景気にどのような影響を及ぼすか。注意深く見ていく必要がありそうです。