NEW2019年07月12日

またATM止まるって…

「ねえねえ、ちゃんとお金下ろした?」ー。金曜日の午後に、こんな会話が聞こえてきたことなかったですか?全国でおよそ5600台のATMを持つ「みずほ銀行」は去年6月から、週末に、たびたび、すべてのATMを一斉に止めてきました。うっかりお金を下ろし忘れて週末に買い物ができなかった人もいるのではないでしょうか。いったい何のために止めるの?銀行取材担当の経済部の大江麻衣子記者に聞きました。

大江記者

それはですね。ATMにつながっている銀行のシステムを新しくしているからなんです。

システムはATMにつながっているだけじゃないんです。個人の預金の出し入れや、振り込みなどの取り引きのデータ、企業どうしのお金のやり取り、海外に送金するデータなどをシステムですべて管理・記録しているんです。業界では「勘定系システム」と呼ばれています。

最近では「LINE Pay」や「PayPay」といったキャッシュレス決済サービスにもつながるようになったので、データは膨大な量になっています。銀行にとっては生命線ともいえる重要なインフラで、このシステムを抜本的に新しくしようとしているんです。ちなみに今回のシステムの刷新には4000億円かかるそうです。

4000億!でも、みずほだけ何度もATMが止まっていません?ほかの銀行では聞いたことがないんですけど。

大江記者

みずほに聞くと、理由は大きくわけて2つ。「データ量が多いこと」と「失敗が許されないこと」です。

みずほはもともと日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行の3つの銀行が統合してできました。その分、取り扱っているデータ量も多く、個人の取り引きデータは2400万人分、企業の取り引きデータは10万社分にのぼるそうです。新しくしたシステムにこれらのデータをすべて移していくんですが、一度に移せるデータ量には限界があるため、作業を9回に分けたとみずほの担当者は説明しています。その9回目の最後の作業が、この7月13日~16日の朝にかけて行われるのです。

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「失敗が許されない」から何度も止めるというのは?

大江記者

みずほは深刻なシステムトラブルを過去に2度、起こしているんです。

1度目は平成14年4月。3つの銀行が統合し「みずほ」としてスタートを切った初日に、大規模なシステム障害を起こしました。全国でATMが使えなくなったほか、口座から公共料金などが二重に引き落としされるケースが250万件にものぼったんです。システムトラブルが完全に収まるまでに数か月かかったんです。

2度目は東日本大震災の直後。ある口座に大量の義援金が振り込まれて処理が追いつかなくなってしまったんです。1週間以上にわたって振り込みができなくなり、ATMも使えなくなりました。会社からの給料の振り込みが数日遅れるといったことも起きたんです。

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「3度目のトラブルは絶対に許されない」ーそんな覚悟でシステムを刷新しているといいます。念には念を入れ、リハーサルを何度も繰り返しながら慎重に作業を進めているそうです。

ほかの銀行のシステムも新しくする必要があったりするの?

大江記者

みずほが進めるシステムの一本化のような大規模な見直し以外にも、クラウド化への対応や新しいサービスの開発でシステムの更新や改修が必要だという銀行も少なくないと言われています。一方で銀行システムは新しさも求められています。キャッシュレス決済が急激に普及しているように、さまざまなフィンテックと連携して、もっと速く、もっと便利なサービスに応えられるような新しいシステムが必要になってくるでしょう。

ただ、みずほのようにすべてのATMを止めて慎重に作業をするのか、1度や2度で終わることになるのか、これは正直わかりません。取り扱うデータの量、そしてどれくらい慎重に作業を進めるか、投入する作業員の数などどれくらいのコストを払うかといった判断にかかわってくると思います。

「この週末はATMがご利用になれません」ー。今回が最後ですので、必要なガマンだと思うしかありませんが、休み明けに、またトラブルというのだけは困りますね。くれぐれも、この連休のお金、忘れずにおろしておいてください。