お金を“キレイ”にさせない
大手銀行の間で、いわゆる「マネーロンダリング」への対策を強化する動きが出ています。三菱UFJ銀行は、6月から支店の窓口での現金による海外送金を受け付けないことを決めました。こうしたマネーロンダリング対策、日本は「世界の主要国に比べておくれをとっている」と言われています。
マネーロンダリング、日本語にすると「資金洗浄」ですね。
犯罪で得た資金を合法的なものに見せかけること。マネーロンダリングやテロ組織への資金供給の防止は国際的に大きな課題になっているの。
警察庁によると、マネーロンダリングの疑いがあるとして2018年に金融機関などから届け出があった取り引きの件数は41万件余り。「犯罪収益移転防止法」の施行後、最も多くなっていて、仮想通貨をめぐる届け出も急増しているとのこと。
金融機関や仮想通貨の交換会社にはどういう対応が求められているんですか?
金融庁が力を入れているのは「リスクベース・アプローチ」と呼ばれる手法。金融機関が、単に法律上のルールを守るだけでなく、自分たちの金融商品や送金などのサービスがどのように悪用されるリスクがあるのか、そして、顧客の個人や企業にどういったリスクがあるのかを分析して対応にあたること。
リスクが高いと判断したら、海外送金の際に目的を確認したり、適切な取り引きだとわかるような証拠を求めたりする。国際情勢やテロ組織の動向は時々刻々と変化するから、経営者やビジネス内容がいつの間にか変わっていないかなどを定期的にチェックすることも重要だとされているの。
三菱UFJ銀行が窓口での現金による海外送金の受け付けをやめるのも、対策の一環なんですね。
そう。窓口に現金を持ち込んで海外送金を依頼するような場合、お金の出どころが確認しづらく、不正な送金につながるおそれがあるから。
実際、最近でも、ある地方の銀行に1億円を超える多額のお金が持ち込まれたにもかかわらず、資金の出どころや送金先について十分に調べられないまま海外への送金が行われたことがあるそう。
こうした例もあって現金持ち込みによる海外送金は地方銀行の多くが受け付けを取りやめていて、大手銀行でも、「みずほ」や「三井住友」も同様の対策を検討している。口座振替やインターネットバンキングなどでは引き続き海外送金を受け付ける。
世界の主要国の中で日本の対策が遅れているというのは意外でした。
他の主要国のほうが早くから現実的にテロの脅威にさらされ、対策を求められていたことが背景の1つとも言われる。
2019年、日本は、マネーロンダリング対策を担う「FATF(ファトフ)」と言う国際組織の審査を受ける予定。前回2008年の審査では法整備などの不備を指摘され、その後2014年には、「多くの深刻な不備を改善してこなかったことを懸念している」と、名指しによる異例の声明が出された。こうした経緯から「対策が不十分な国」だとみなされてきただけに、今回の審査に向けて、官民を挙げた取り組みが必要になっているのね。
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