NEW2019年01月16日

公表やめます あの数字

激しい販売競争が繰り広げられてきたビール業界。それだけに、販売シェアの動向は関係者のみならず、ひいきの銘柄を持つ“ビール党”の方々にとっても注目の的。しかし、ことしからその販売シェアが分からなくなりそうです。いったい、なぜなのか?

ビール業界のシェアって、順位の入れ替わりがあったりして、注目されることが多かったような気がしますけど、どうして分からなくなるんですか?

ビール系飲料のシェアは、業界団体が公表する大手5社のデータと、それぞれの会社が公表するデータを元に計算されてきたんだけど、業界団体と各メーカーともに、ことしから出荷量などの公表を取りやめることになった。だから、シェアも計算できなくなる。

公表を取りやめる理由として、業界団体などでは「5社の出荷量だけでは、市場全体の動向を反映できなくなってきたため」と説明している。

業界団体と大手メーカーのデータで全体の動向を反映できないって、どういうこと?

かつては、大手5社のデータがそろえば、ほぼ市場全体を把握できたんだけど、もうそういう時代ではなくなっているということね。

「クラフトビール」、「輸入ビール」、「PB=プライベートブランド」が、その理由。

例えば、クラフトビールについては、平成6年の規制緩和で、経営規模が小さくてもビールを製造できるようになって、全国にクラフトビールのメーカーがたくさん誕生した。個性的な味わいなどを武器に、特にこの5年間では、その市場規模が2倍以上に増え、今後もさらに拡大すると見込まれてる。だけど、業界団体に入っていない中小メーカーがつくっているから、統計には含まれていないというわけ。輸入ビールも統計には含まれていない。

売り場でも大手メーカー以外のビールをよく見かけるようになってますね。大手スーパーやコンビニでは、そのチェーンでしか売っていないPBも多く見かけます。PBって、安いのが魅力で、それなりに販売量もあるはずですよね。

確かにPBのビールは販売を伸ばしているけど、そのPBも実は大手メーカーが製造を受託している。しかし、その分をメーカーみずからの出荷量やシェアに含めるかどうかについては、PBを手がける会社とそうでない会社の間で意見が分かれている。その意見の隔たりが販売データを公表しないという判断にも影響を与えたものと考えられる。

それで、ことしから公表されなくなるということは、去年のデータが最後になるわけですけど、シェア争いの結果はどうだったんですか?。

やっぱり興味ある?

ビールと発泡酒、第3のビールをあわせたビール系飲料の出荷量では、
▽アサヒがシェア37.4%で9年連続の首位
▽2位がキリン(34.4%)
▽3位がサントリー(16.0%)
▽4位がサッポロ(11.4%)
▽5位がオリオン(0.9%)という結果。

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平成4年以降のシェアの推移を見てみると、最初はキリンが市場の半分近くを抑えて首位で、次いでアサヒ・サッポロ・サントリーという順位だったけど、平成13年にアサヒがトップになり、以降アサヒ・キリンのし烈な首位争いが続いた。また、4位が長かったサントリーが、平成20年から3位に立っている。でも、全体の出荷量では、去年は498万キロリットルにとどまり、14年連続で過去最低を更新。ビールと発泡酒に限ってみると、この20年でほぼ半分になった。

必ずしも正確には全体を反映していないデータを出して、「14年連続過去最低」となってしまうと、公表する意義も薄らぐし、各社のモチベーションも下がってしまいますね。

ビール系飲料の苦戦は、消費者の根強い節約志向で「チューハイ」や「ハイボール」など比較的低価格のアルコール飲料に押されたことや、そもそも世の中のアルコール離れという流れもある。業界では、ビールの定義変更による味の多様化や、酒税の税率見直しなどの動きもあり、「シェアの呪縛」から解き放たれて、市場の活性化につながるかどうか注目される。