NEW2018年10月11日

世界同時株安 なぜ起きた

10日のニューヨーク市場で、ダウ平均株価は800ドル余りの急落に。これを受けた11日の東京市場では、日経平均株価が、一時、1000円を超える大幅な値下がりになりました。株安は、中国・上海市場をはじめアジア各地、そして、ヨーロッパにも飛び火。「世界同時株安」に発展しました。その背景には何があるのでしょうか。(11日19時現在)

日米ともに株価は堅調なんだと思っていましたが、突然の急落ですね。何があったのでしょう。

10日のニューヨーク市場では、「アメリカの長期金利の動向」と、「米中貿易摩擦」という2つの要因が大きな背景となって株価が急落したようね。

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前者の長期金利について言うと、アメリカでは好調な経済を背景に中央銀行のFRB=連邦準備制度理事会が利上げを進めている。

利上げ路線が続くと見られているからこそ、長期金利が上昇傾向にあるわけだけど、今は“節目”とされる3%を上回るところまで金利が上がってきたこともあって、「急ピッチな金利上昇は、企業の資金調達などの面でマイナスになるのでは?」「利上げ路線が景気の冷や水になるのでは?」といった見方が出やすくなっている。

10日はアメリカの物価関連の指標の発表をきっかけに、そうした警戒が広がったようね。

株価急落について問われたトランプ大統領が、「FRBは間違っている。金融を引き締めすぎている。FRBは異常だ」などと強い口調で批判したことは、金利をめぐる神経質な状況を象徴的に示しているとも言える。

「米中貿易摩擦」のほうはどうなのでしょう?

アメリカの財務長官が「中国が意図的に通貨・人民元を安くしている」という趣旨の発言をしたと報じられたこと。中国の税関当局が高級ブランド品の持ち込み審査を厳しくしていると、高級ブランド側が認めたこと。こういった話が複合的に貿易摩擦の問題への警戒を改めて強めたという声が市場関係者からは聞かれた。

貿易摩擦の問題はずっと世界経済のリスクとして底流にある話だけど、このところの株式市場は、不都合な側面にあまり目を向けて来なかったのかもしれない。

くしくもIMFは、日本時間の9日、米中の貿易摩擦がエスカレートしていることを理由に、アメリカの来年の経済成長率の見通しをプラス2.5%、中国をプラス6.2%と、いずれも3か月前の見通しと比べて0.2ポイント下方修正した。

合わせて世界全体の来年の成長率の見通しも、プラス3.7%と、0.2ポイント下方修正。この問題が収束に向かうメドが全く立たない中で、株式市場も、どこかでリスクとして再認識するタイミングが来ることは避けられなかったのだと思う。

では「世界同時株安」はどこまで進むのでしょうか?

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過度に悲観的な見方をする専門家は少ないけど、今の時点で軽々に断定することは難しいわね。少なくとも、先進国と新興国が足並みをそろえる形で続いてきた堅調な経済成長に対して、貿易摩擦の問題はもちろん、新興国からの資金の流出の問題なども含めて、リスクがじわじわと顕在化してきていることにはきちんと目を向ける必要はありそうよ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフストラテジストは、「アメリカの長期金利が今後も上がっていったり、米中の貿易摩擦が過熱したりすれば、単なる利益を確定させるための『調整』ではなく、今後一段と株価が下がっていく可能性もある」と話している。

株価は半年ほど先の経済をうらなって値動きすると言われる一方、短期的には投機的な要素も大きく影響するから、落ち着いて見ていきたいところね。