NEW2018年09月18日

“異次元”制裁 米中の応酬どこまで?

世界1位と2位の経済大国が激しく対立する貿易摩擦が新たな段階に入りました。アメリカのトランプ政権が、中国からの2000億ドルの輸入品に関税を上乗せする、第3弾の制裁措置を今月24日に発動すると発表。中国からの輸入品のほぼ半分が対象となる“異次元”の制裁です。これに対し、中国側も近く報復措置に踏み切る方針を表明。終わりの見えない制裁と報復の応酬はどこまで続くのか。日本への影響は?

アメリカの制裁措置は第3弾ということですが、今回はこれまでで最大規模なんですね。

そうね。最初の制裁措置は7月、中国製の航空、鉄道関連の製品など340億ドルの輸入品に25%の関税を上乗せ。

8月の第2弾は、半導体など160億ドルの輸入品を対象にした。

そして今回は、食品や飲料、家電製品といった生活に身近な品目を追加。2000億ドルの輸入品に10%の関税を上乗せすると発表。

これで、中国からの輸入品のほぼ半分に、関税が上乗せされることになるんだって。

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今回は、より幅広い製品が対象になっているので、日本への影響も大きそうですね。

日本の企業は、自動車や電機など幅広い業種で世界でもっとも多い3万2000社ほどが中国に進出している。この中には、中国で製品を生産し、アメリカに輸出している企業も多くあるの。

3度にわたる制裁措置の影響について、大和総研の小林俊介エコノミストは「日本から中国に輸出する部品や機械のうち、アメリカに製品となって輸出されるものは3兆円規模に及ぶ。中でも懸念されるのが半導体関連で、日本経済への影響もかなり出てくると見られる」と話している。

中国の工場で生産してアメリカに輸出している企業にとっては、コスト増になりますよね。

そうなの。これまでの制裁措置を受けて、日本企業の間では、すでに生産の一部を中国からほかの国に移す動きが相次いでいる。

例えば、コマツは、中国で生産していたショベルカーなどの建設機械の部品の一部を8月から日本とメキシコに移したし、三菱電機も8月、レーザー加工機などの工作機械を中国の大連から名古屋の工場に生産を移したんだって。

今回の制裁が発動されれば、影響を受ける日本企業が増えて、東南アジアの国々やアメリカ国内に、生産地をシフトさせる動きが活発化していく可能性がある。

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コマツの工場(石川県小松市)

なるほど。日本企業の生産拠点への影響は大きそうですが、米中の経済が冷え込むことになれば、それこそ、世界経済全体がおかしくなりますよね?

トランプ政権は「アメリカ経済は絶好調だ。関税によって多少、ものの値段が上がっても大丈夫だ」と強気。

でも、今回の制裁の対象は生活に身近な日用品も含め5700品目にも及んでいるので、値上げによってアメリカの消費者の財布にも響くことになりそう。

好調なアメリカの消費が冷え込んでしまえば世界経済にもブレーキになるわね。

中国は、アメリカの制裁に対抗して600億ドル規模の輸入品に関税をかけることをすでに公表していて、近く詳しい報復の内容を決めるものとみられている。

中国が報復措置をとるならば、トランプ大統領は、次は、中国からのほぼすべての輸入品を制裁の対象にする方針を示しているでしょ。

そうなれば、米中間の貿易摩擦は泥沼化していって、米中の景気や世界経済にさらに悪影響が広がることが予想される。

日本経済への影響も大きくなりそうで心配ね。