NEW2018年09月04日

就活ルールが無くなるって?

大学生の新卒採用の解禁時期などを示した指針、“就活のルール”が無くなるかもしれません。経団連の中西会長は、個人の考えだと断ったうえで、2021年春に入社する今の大学2年生の就職活動から、ルールを廃止するべきだと述べました。なぜ今、廃止議論が出てきたのでしょうか。

指針を無くしてしまうなんて、驚きました!ぼくの就職の時も、ルールはありましたよ。

そうね、かつては「就職協定」と呼ばれていたけど、大学生の採用のルール自体は、昭和28年(1953年)から半世紀以上、何らかの形で示されてきた。スケジュールはたびたび変更されていて、現在の「採用選考に関する指針」では、2020年春に入社する今の大学3年生までは、3年生の3月に会社説明会を開始、4年生の6月から採用面接を開始することになっているの。

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経団連の会員企業は、この指針を守ることが求められているんだけど、罰則はなく強制力もない。そもそも経団連に加盟していない外資系やIT系などの企業は関係ないし、会員企業でも、実際には採用活動を早める「解禁破り」をしている所もあって、指針の形骸化を指摘する声もあがっていたわけ。

なるほど、実際には守られてないから廃止しようということなんですね?

それだけじゃないの。経団連の中西会長は「指針は、終身雇用や一括採用を前提にしているが、それでは人材育成が成り立たなくなってきている。個社の方針の違いがあってしかるべき」と話している。

つまり、新卒を一括採用して終身雇用を前提に育成する今の日本型の雇用システムを維持していると、必要な人材をそのつど雇用してビジネスを展開する海外企業との競争に勝ち抜けないという危機感があるというあるわけ。今の日本の雇用の在り方自体を考え直すべきだ、という問題提起と言える。

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政府や大学は、どう考えているんですか。

もともと、今の指針は、学生が学業に専念できるように、海外留学から帰国した学生が困らないようにと、就職活動の開始時期を遅らせてほしいという、政府からの要請に応える形で作られたんだって。

全国の私立大学が加盟する日本私立大学団体連合会は、学生の教育のためにも、今後も、今のスケジュールを堅持すべきだという意見をすでに公表している。学生にとっても、また一部の企業にとっても、目安があったほうがいいという声も根強いわね。

戸惑っている企業もありそうですね。

そうね。経済団体で言うと、経済同友会は中西会長の発言を「非常に前向きに評価したい」としているんだけど、中小企業が多く加盟する日本商工会議所は「一定のルールは必要だ」という立場なの。

経団連が、去年、会員企業を対象に行ったアンケートでは「指針自体は残すが、解禁時期の規定は削除すべき」と答えた企業が全体の42.1%。

これに対し、「解禁時期を含めた現在の指針を維持すべき」が26.9%。

一方、「指針を廃止し、自由な採用活動を認めるべき」は9%となっている。

そんなに意見が割れているんですね。今後、議論はどうなっていくのでしょう?

経団連は、今後、廃止を含め指針の抜本的な見直しを検討する方針なんだけど、見直しは学生に大きな影響を与えるので、なるべく早く方向性を示す必要があると思う。企業側の準備のことも考えると、ことしの年末までには結論を出さなければならないのではないか、という指摘もあるの。

就活ルールをどうするかだけでなく、一括採用や年功序列などの日本企業の雇用慣行、大学教育の在り方も含めて、しっかりと議論することが必要だと思う。