ついに業界も越えた! 物流連携の狙い

ビールメーカーや機械メーカーなど大手7社が、原料や製品を運ぶコンテナ輸送の効率化に取り組む計画を進めている。いまや、企業の共通の課題となっている物流コストの上昇。ついに業界をも越えた連携の狙いは。

コンテナ輸送の効率化って、なんだか難しそうだけど、どんなことをやろうとしているんですか。

効率化に取り組むのは、サントリーやアサヒ、キリン、サッポロのビール4社と、機械メーカーのコマツやクボタ、そして、トラックメーカーの日野自動車の大手7社。

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これらの企業は、原料を輸入したり、製品を輸送したりする際に、コンテナを使っているんだけど、共通の中継地点を設けることで、空のまま運ぶコンテナを減らそうとしているの。

詳しく言うと、ビール4社が輸入した麦芽が入ったコンテナを東京港で受け取って、各社の製造工場に運び入れたあと、空のコンテナを中継地点に届ける。一方のコマツなど3社は、中継地点から空のコンテナを生産拠点に持ち帰り、輸出用の製品などを積んで、東京港に運ぶ計画。

8月上旬にも、サントリーがコマツなど3社と取り組みをはじめ、年内までに、ほかのビールメーカーも順次、加わるそうよ。

ドライバー不足なのに、中身が空のコンテナを運ぶために人手を割いてる場合じゃないですもんね。

そうね。特に東京港は年々、コンテナの取扱量が増加していて、周辺の道路は、慢性的な渋滞が起きている。ひどいときには、空のコンテナを船会社に返しに行くために、渋滞で7時間も待たされることもあるそうよ。企業として、このむだは、何とかしたいところだった。

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連携を呼びかけたサントリーの場合、今回のやり方に切り替えることで、2020年には、物流コストを今と比べ1割程度抑えられると見込んでいる。

たった1割と思うかも知れないけども、物流コストは今後も上昇する見込み。サントリーは、このまま何も手を打たなければ、2年後には今の1.3倍にまで物流コストが膨らむと計算している。

それだけに、今回の取り組みの効果は大きいと判断しているんだって。

メーカーもいろいろ知恵を絞っているんですね。

そうね。今回のビールメーカー4社も、業界内では去年9月以降、北海道や西日本で、商品を共同配送する取り組みを始めている。

食品メーカーでも、味の素やハウス食品グループ本社、カゴメなど大手5社が、来年4月に物流の子会社などを統合し、全国で商品の共同配送を始める計画。

これまでは、商品の形や配送先が似ている、同じ業界どうしの企業が連携するケースが多かったけど、今回は、いよいよ業界の枠まで越えた連携に広がった形ね。

確かに、ビールや機械、トラックをつくるメーカーって接点も少なそうですものね。

さらに今回の連携の背景には、実は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの存在もある。夏に開催される世界的なビッグイベントだけあって、ビールメーカーは、特に販売に力を入れたいところ。

ただ、東京湾のエリアは、カヌーやトライアスロンに加え、テニスやバレー、アーチェリーなど、競技会場が集中している。
すでに慢性的に渋滞している東京港の周辺は、期間中ともなれば、選手や観客の移動、セキュリティーの強化で、物流が停滞してしまうのではないかと、メーカーの担当者は心配しているの。

物流の停滞で生産を止めるわけにもいかないし、今の段階から、東京港周辺の混雑を避ける対策を急いでいるというわけ。

トラックドライバーの不足に加えて、オリンピック。これから企業や業界を越えた連携がさらに進みそうね。